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エッセイ 

家畜と社畜の違い 追放からざまあの需要の要因とは?

作者: NOMAR

(* ̄∇ ̄)ノ 奇才ノマが極論を述べる。


 社畜

 社畜という言葉は、もともとは平安時代、世の中の理不尽や邪気をその身に受けるために捧げられた生け贄。神社などの柱に縛り付け、死ぬまで繋がれていた(やしろ)の家畜のことを言う単語だったという。


 1990年代からは勤めている会社に飼いならされ、個人の良識や判断を放棄し、会社の奴隷のようになった労働者を表す言葉として使われている。


■労働基準法


 労働基準法が守られていたならば、社畜という言葉もブラック企業という言葉も広まらなかったのではないだろうか。

 社畜もブラック企業もあるのが当たり前となってしまっているのは、労働基準法が如何に守られていない法律か、というのがわかってくる。


 また、技能実習制度は外国人労働者を都合よく使い捨てにする奴隷労働とも呼ばれ、アメリカの公聴会では、


『日本には人権無視の奴隷制度が存在する』


 と指摘された。

 2012年以降、国連は様々な報告書を通じて、日本は技能実習制度を廃止し、外国人労働者を適正に処遇する雇用制度に見直すように、という提言を行っている。


 これについては、


『日本人は外国人だけを奴隷労働させてはいない。日本人には外国人への差別意識は無い。だから日本人にもサービス残業、無給での早朝出勤、休日出勤などもさせている。日本人も外国人も区別なく、ちゃんと同じように奴隷労働をさせている』


 という反論もある。


 平成30年に労働基準監督署が監督指導を実施した事業場7334のうち、5160に労働基準法違反や労働安全衛生法違反が認められた。違反率は70.4%になる。


 労働基準法が守られていない法律であり、労働基準監督署には法律を守らせるだけの権力も武力も無い。

 また、労働基準法を厳密に適用すれば日本の企業の多くが倒産に追い込まれる、という意見もある。


 ブラック企業との戦いを描いたエッセイ。

 

『豆腐屋さんの社畜日記 ~愉快なブラック企業と労働基準監督署~』

 Nコード N8373FN

 著者 福沢 様


 9ヶ月に及ぶ戦いの結末には涙が出る。労働基準監督署の権力は、経営者がゴネれば先送りにされて終わるようなものらしい。


■70歳定年制


 人手不足の解決として政府は70歳まで働ける環境作りを推進している。

 2013年4月の『高年齢者雇用安定法』の改正により2025年4月から全企業に『65歳まで定年年齢の引き上げ』『希望者全員を対象にした、65歳までの継続雇用制度を導入』『定年制の廃止』のいずれかが義務付けられる。


 2021年4月から、企業は70歳までの就業機会確保が努力義務となる。


 人口減少と超高齢化社会への変化から、年金の財源確保が難しくなっていることが、定年引き上げの要因の1つ。政府は年金制度を維持するためにも年金の支給開始年齢を引き上げたい。

 高年齢者雇用安定法は定年退職後から年金の支給までの空白の期間を無くす為にも、年金の受給年齢まで働けるようにすることを目的とした政策となる。


 更に70歳までの就業が可能になれば、年金受給開始年齢を70歳にまで引き上げることも可能になる。


■家畜と社畜の違い


 だが企業側から見れば70歳定年制を導入するのはどうだろうか? 人手不足のところではスキルのある元気な高齢者がいてくれると有り難いとはなるが。


 ここはひとつ家畜を参考にしてみよう。社畜とは労働者を会社の家畜になぞらえた言葉でもある。家畜の現役年齢を見てみると社畜の定年制度の参考になるだろう。


 鶏の卵を売ろうとすれば、元気に卵を産める鶏は卵を作れる間は現役で働ける。

 しかし歳を取り卵を産まなくなった鶏は、生産価値が無い。そんな鶏を飼っていても利益は出ない。

 ならば、卵を産まなくなった鶏は潰して肉にして売る。廃鶏の屠畜場に送り処分する。


 乳牛もまた同じ。乳の出の悪くなった乳牛は肉にして売ってしまう。


 昭和25年に家畜改良増殖法が制定されて、人工授精が普及された。これで若い乳牛を次々と作れるようになった。歳を取り乳の出の悪くなった乳牛は生産価値が無いということで、早く現役を引退するようになっていく。


 かつての乳牛の現役年数は約20年であったが、今では約5年と現役時代は短くなっている。


 では現在の人手不足、社畜不足の状況はどう改善すればいいのか? 家畜を参考にするならば、社畜もまた人工受精を普及し若い社畜を生産すればいい。これで若くて元気な社畜が次々と補充できる。

 年老いて生産価値が下がった社畜は、潰して肉にして売ればいい。卵を産まなくなった家畜にエサ代をかけていては利益は上がらない。


 ところが残念なことに社畜は家畜のように肉にして売ることができない。この点が社畜と家畜の大きな違いだ。

 経済だけを見れば、社畜もまた畜産業界の真似をすれば人手不足は解消し景気は良くなり経済は活性化するだろう。

 だがこのような政策は反対が多く、実現は困難になる。今の日本で社畜を屠殺する屠畜場は作ることはできない。


■40代定年制


 政府は70歳まで働ける環境作りを推進しようとするが、企業が人件費を削るには年輩の労働者から辞めて欲しいとなる。


 東京商工リサーチは12月9日、2020年上場企業の『早期・希望退職』募集状況を公開。

 募集人数は、判明分で17,697人に達している。


 増加したのはコロナ不況による経営悪化からのリストラ目的だけでは無い。2019年では希望・早期退職を実施した上場企業の約6割は直近の最終損益が黒字だった。


 2017年以降、大企業がシニア社員の希望・早期退職を募るケースが相次いでいる。


①業績悪化に伴い、臨時に期間限定で早期退職希望者を募集するパターン。


②業績に関係無く組織の若返りを促す目的で、一定の年齢に達した従業員全員を対象に募集するパターン。


 赤字リストラと黒字リストラの二つが増加している中で、コロナウィルスによるパンデミックからの不況が加速をかけた。

 希望・早期退職者募集人数が1万人を上回ったのは6年ぶりだという。


 年功序列型の賃金体系の中では、バブル期大量入社組を中心とするシニア社員の賃金が高くなる傾向にある。この世代の人件費を削る為にも、40歳以上は早期退職を勧められることになる。


 政府は高齢化社会に対応するために、企業には70歳まで働けるようにして欲しい。


 だが、企業から見れば40歳以上はさっさと自主退職して、代わりに人件費の安い若くて元気で有能な人が来て欲しい、となる。


 市場原理に委ねれば人件費は下がる一方になる。買う側は安い方があればそちらを選ぶのだから。

 政府が努力義務を課す前に人員整理をしよう、というのも早期退職者募集に拍車をかけたようだ。


 政府は社会の雇用維持と年金システム維持の為に、高齢者も働ける社会にしたい。

 だが企業は利益を出す為にも人件費を削りたい。本人が希望すれば70歳まで働ける環境というのは、逆に言えば辞めさせるには本人が辞めたいと言い出すまで苛めればよい、ともなる。


■追い出し部屋


 追い出し部屋とは職場において、従業員を『自己都合退職』に追い込むための部署のことを言う。

 1999年に放送されたテレビドラマ『彼女たちの時代』に、この『追い出し部屋』が描かれている。

 

 2020年6月には山口県田布施町で、固定資産税の徴収ミスを内部告発した男性職員が追い出し部屋に配属されたことがニュースになった。


■退職勧奨ビジネス


 需要があれば供給がある。解雇、退職でトラブルにならない方法を知りたい、という企業は増加。

 企業がパワハラにならない、違法にならない、後で揉めない退職勧奨の手段を知りたいとなり、解雇、退職についてのセミナー、コンサルタント、教材などが退職勧奨ビジネスとして現れた。

 自分から辞めたいと言い出すようにするための『社員の心の壊しかたマニュアル』をコンサルタントするなどの新たなビジネスがある。


 また、退職前に相談をすれば失業保険や社会保険の給付金が増えるというコンサルタント業者も現れた。この中には弁護士や社会保険労務士といった資格を持たない、自称専門家による詐欺や悪徳商法も含まれる。


■増える追放


 年功序列の日系企業、その定年が55歳から60歳に伸びてからは、日系企業では若手の昇進も昇給も期待できない、と言われるようになった。


 世界で日本語を学ぶ人の数は2012年をピークに減少している。日本語を学んでもビジネスには役に立たない、という風潮が海外での日本語学習の需要の減少の要因のひとつ。

 この企業の魅力の減少も人材不足に繋がる。


 では、そんな企業で新入社員が出世しようとすればどうすればいいのか?

 能力主義型の企業では能力を示す、実績を出す、成績を上げるなど評価を上げると良いとなる。しかし、年功序列型の企業ではそうはいかない。

 年功序列型の企業で有能なところを見せた若手は、薄給で年寄りに使い潰されることになる。


 年功序列型で重要なのは、どれだけ長く職場に在籍しているか、になる。

 ちなみに、この思考の延長に職場に長くいた者が偉いとなり、職場で長時間過ごす無給でのサービス残業、無給での休日出勤を褒め称える風潮になる。

 効率化を諦め、目先の仕事をマンパワーでこなして人件費を削るようになっていく。この先に企業のブラック化がある。


 この中で昇進、昇給を狙うには上のポストに居座る老人が退職するのを待つしかない。積極的に椅子取りゲームに勝つには、椅子に座る者を追い出さなければならない。

 昇進の為には上のポストにいる者を追放する手段が必要になってくる。お堅い職業ならば、痴漢冤罪、パワハラ冤罪などが効果的だ。


 一方で定年まで今の仕事を続けたい、となればどうなるか。

 自分のポストを奪う可能性のある若手を先に追放しなければならない。追い出される前に追い出すのだ。更に職場が慢性的に人手不足となれば、スキルのある者は簡単にはクビにできなくなる。これを続ければ定年まで安泰となる。


 自分の仕事を守ろうとするなら新人に仕事のノウハウは教えないとなる。これは当然だろう。長年積み上げてきた自分のノウハウをタダで若手に教えた結果、若手に仕事を奪われ自分がクビになる心配がある。


 終身雇用が崩壊してから、この技術の継承が問題になってきている。製造業、建築業では昔は作れたものが、今では作れる職人がいなくなり作れなくなった、というものがいくつかある。


 時間と予算とやる気があれば、業者に頼まず自分でした方が安くすみ出来映えも良くなる。DIYが増えた背景には技術力の低下と技術者の減少がある。

 YouTubeといったデジタル技術の進歩が、個人のアナログ技術のサポートになったのが今の時代。


■追放する側が無能?


 かつてエッセイで、追放物の物語で追放する側が無能でバカ過ぎてリアリティが無い、というものがあった。

 ストーリー上のリアリティを大事にすれば一理ある。

 しかし、現実の追放やイジメなどを見ればもっとバカバカしいものになる。


 職場の飲み会で『昔、空手をやっていた』と言ったがために翌日から職場でイジメに遭うなど。

 これはおそらく、上司が昔、空手をやっていた子にイジメられたなどあったのだろう。上司が過去の空手経験者への恨みを今になって職場で発散し、同じ職場の者が上司に乗っかったのではなかろうか。


 私もかつて、アルバイトの女性が職場の上司のストーカーに悩み相談されたことがある。

 その女性を守る為に仕事が終われば一緒に帰るなどしたことがある。


 その結果に私は職場の上司に睨まれ、上司のミスを押し付けられたり、仕事に必要な連絡が回ってこなくなったりと、仕事がやりにくくなってしまった。

 上司のストーカー行為を邪魔した結果、職場にいづらくなり退職した。


 このエッセイを見る現在働いている方は、職場の上司の趣味に手出し口出しするときは、退職することを覚悟の上で。またはボイスレコーダーなどを用意し、裁判で有利となる証拠を集めるようにするなど、身を守るために気をつけていただきたい。


 また『浮きこぼれ』、というのもある。

 学力格差の問題が話題になるときは、生徒が授業についていけない『落ちこぼれ』の話になることが多い。

 『浮きこぼれ』とは逆に同級生より学力が高いことで授業中に目立ってしまい、イジメの対象になるケース。


 かつて地方では成績優秀で良い高校に受験しようとすれば、「田舎を捨てるつもりだ」と家族ごと村八分にされるケースもあった。

 有能であることが追放される原因となることもある。


■大人のイジメ


 現代の職場における大人のイジメは増加傾向にある。


 2019年版の国民生活基礎調査の結果から、悩みやストレスの原因についてのアンケートでは、イジメ、セクハラが悩みとストレスの原因と答えた人は50代がもっとも多い。12歳から14歳の中学生では減少傾向にある。


 40代から50代といえば若かりし頃、イジメが社会問題になった世代だ。この『いじめられ世代』が今もまだ増加するイジメに苦しんでいることになる。


 大人のイジメはパワハラ認定、セクハラ認定されないようにとより陰湿に狡猾になっている。


■追放からざまあ


 政府が企業の目的と反する『高年齢者雇用安定法』による、70歳まで働ける環境作りを企業に押しつけたなら。

 企業の中では自主退職へと誘導するためにイジメと追放が増加することだろう。

 また、高齢者を雇うことで人件費が圧迫し、そのしわ寄せは新入社員の給与に影響する。若者の貧困化に繋がる。

 昇給にも昇進にも期待できない企業に勤めようとする人は減少し、人手不足に悩むところはより深刻になるだろう。

 

 政府は高齢化社会において、高齢者も希望すれば働ける企業を作り、年金の給付開始年齢を引き上げて財源を守りたい。お年寄りも元気に働ける社会を作りたい。


 企業は経営の為に人件費の上がった年配の人から辞めて欲しい。その際には退職金を減額するべく自主退職が望ましい。また、時代に適応すべく若い従業員に来て欲しい。組織全体を若返らせ、デジタル化など新たなシステム導入に適応できる職場にしたい。


 この二つの目的を両方叶える政策も方法も未だに開発されてはいない。内政チートの如く画期的な手段の発明が望まれている。


 解決策が見つからない現状、現実に追放とイジメは増加しつつある。これが追放物の物語の増加とも関係がありそうだ。

 しかし、追放が増えても追放からのざまあはなかなか増えはしない。これが現実の悲しいところ。

 この追放地獄に荒んだ心を癒す為にも、追放からざまあの物語はこれからも需要があることだろう。


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― 新着の感想 ―
[一言] あー…うー…… 日本程憲法というものが守られてない国、無いですからねぇ。 社畜という言葉が、サミットストアを反映させた安土氏に広めさせられる以前から、 『うちの会社は始業から終業まで憲法番…
[良い点] 面白かったです! 実は私も、現在では「ざまぁ」や「もう遅い」が流行るのは仕方が無くなったな、と思い、同じテーマのエッセイを書き始めていたのですが、より詳しい考察の本作が出れば、もう書く必…
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