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8話 異世界のこんなところに日本人

 さあここで始まりました、悪魔からもらった宝箱を開けてみようのコーナー!もう既に何が入ってるか分かってるんですけどね!


 「…はあ」


 無理やりテンションを上げることに失敗したので、普通にパカッと開ける。そこには色とりどりのパンツが入っていましたとさ。めでたしめでたし。


 悪魔はド変態だった。とはいえ、ありがたい点として、その対価は結構たくさん入れてくれていた。この先しばらくパンツには困らないだろう。【パンツ召喚】とかいう変なスキルを使わなくて済む。もしかしたら一生使わないかもしれない。


 ただ、ここで一つ困ったことがある。荷物が多い。レジ袋に入ったコーヒー5本、靴下、スニーカー。そしてこの宝箱。持てなくはないが、両手がふさがるし、重い。


 とりあえず、靴下とスニーカーは履くことにした。サイズが合わないのは気になるが、仕方ない。海沿いを歩いていたらさっきみたいにサハギンに襲われる可能性があるので、それよりかは身を隠せそうな森の中を進もうと思ったのである。


 他に荷物を減らす策を考えた。コーヒー捨てるのはもったいないからなあ。いっそ飲むのはどうだろう。1本500mlもあるコーヒーを飲み切れるかはわからないが、とにかくキャップを開ける。


 ゴクゴクゴク。水を飲むぐらいの勢いで飲んでいく。そして、気づいたら空っぽになっていた。


「あれ?もうなくなっちゃった?」


 おかしい、これだけ飲んでもまだ飲める気がする。

 考えること十数秒。そうだ、スキルだ。【貯水】のスキルの効果だ。このスキルは名前の通り、水を貯める能力なんだろう。体のどこに貯水しているのかは不明だが、たぶん腹の中央辺りな気がする。もし【吸水】で海水から得た水も貯められているのだとしたら、すでに相当な量じゃないか?

 腹の中から異空間にでもつながっているんだろうか。


 疑問はさらに浮かぶ。コーヒーのカフェインとかの成分は体に吸収されるんだろうか。カフェインって取りすぎると危ないんだっけ?


「まあ、もう一本ぐらい飲んでもいいでしょ」


 荷物が軽くなってくれるならその方がいいだろう。深く考えずにもう一本飲み干す。

 空になった容器は何かに使うかもしれないので、捨てないでおく。というか、自分の性格的にポイ捨てできない。別に真面目というわけではないが、景観とか景色とか、そういうのを気にしちゃうのである。


 さて、グダグダしてたら日が暮れてしまうので、さっさと歩こう。向かうのはさっきまでとは違い、森の中である。

 雑草があちこちに生えているが、地面は歩きやすく感じた。体が木に隠れるおかげで涼しい。


 周りを警戒し、よーく観察しながら進んで行く。そういえば、雑草とか木の種類は元居た日本とは違うんだろうか。植物に全く興味を持たずに生きてきたので、何も分からない。全部同じじゃね?


 体感で10分ほど歩くと、カフェインが回ってきたのだろうか、なんかワクワクしてきた。冒険してる感があって高ぶってくるぜ!などと思えてくる。


「なんちゃらかんちゃらふーんふん、ぼくドラ〇ーもーんー…ん?」


 うろ覚えの歌を歌っていたら、地面に変な物を発見した。これはいわゆる、足跡というやつだろうか。雑草の花が規則的に潰れて倒れている。足跡のサイズ的には、俺の靴と同じくらいだろうか。


 もしかしたら、人が通ったのかもしれない。その期待を持って、足跡と同じ方向に歩く。途中から草がなくなったりして足跡が途切れたが、大体の方向が合っていればたどり着ける気がする。


 どれくらい歩いただろうか。突然、前方から「キャー!」というような女性の悲鳴が聞こえた。これは、もしかしたら緊急事態かもしれない。木で隠れてるため視界が悪いというだけで、距離はあまり遠くないと思う。荷物を置いて、駆け足で向かった。


 数秒後、すぐに見つけた。長いスカートを着た一人の女性が、一点を向いて立ち尽くしている。


「あのー!大丈夫ですかー?」


 声を張り上げながら近づく。女性は我に返ったのか、ハッとした感じでこちらを見た。そこで初めて目が合う。

 顔の印象は若い。高校生とか、俺と同じくらいだろう。大人っぽい服装に、革のハンドバッグだったので、てっきり年上の人かと思っていた。


 「あ、危ないです!逃げて下さい!こっちに化け物がいるんです!」


 女性は切羽詰まった様子で、俺から見て左側を指さし、大声で言った。日本語である。ということは、俺と同じ転移者だろうか。


 指さされたほうを見ると、全身が緑色の小人がいた。いや、小人というにはブサイクすぎるな。あれはきっとゴブリンだろう。かなり化け物らしい化け物だ。数は1体。手には石斧を握っている。ゴブリンもこちらに気づいたようだ。


 俺はゴブリンに水鉄砲を放とうと両手を構えたが、躊躇う。力加減を間違えると指を怪我するんだよな。数ではこちらが勝っているので、逃げてくれないだろうか。

 そう思っていたら、周囲の草陰からガサゴソと音が立った。そこから姿を現したのは、2体のゴブリンである。


「ちっ、囲まれたか」


 あっという間に2対3になってしまった。やば。手を抜ける状況じゃない。

 3体のゴブリンは獲物を前に興奮した様子である。俊敏な動きで距離を詰めてきた。


 少し動揺したが、シッ、と短く息を吐いて気合を入れる。


 力を右手の中指に集中させ、最初からいたゴブリンに狙いを定める。サハギンのときより距離が開いているが、外してはいけない。反動と手振れを抑えるために左手を添える。

 空気を切り裂くような鋭い音を放ち、水弾はゴブリンの胴体に着弾した。仕留め切ったかは分からないが、後ろ向きに倒れる。中指の爪ははがれていたが、気にしている場合ではないだろう。


 すぐに振り返り、2体いるゴブリンのうち距離が近いほうに薬指で照準を合わせる。力をチャージするのに少なくとも2秒はかかるが、これだけ距離があれば十分間に合う。

 落ち着いて狙い顔面に命中させた。ゴブリンはグギャアという声を上げながら転び、倒れこむ。


 残るもう1体のゴブリンは背中を向けて逃げて行った。この距離では当たらなさそうだ。深追いしないほうがいいだろう。

 俺は女性のほうを向く。


「大丈夫ですか?」

「大丈夫ですか?」


 たまたま声が重なってしまった。気まずい空気にするつもりはないので、ゴホンと咳払いをして俺から発言する。


「怪我はしてないかい?お嬢さん」


 安心させるために、普段なら絶対言わないようなセリフを放つ。ついでに茶目っ気たっぷりなウィンクもしてみた。加えて右手はピースである。


「えっと、助けてくれてありがとうございます。その、怪我してるのはあなたのほうだと思うんですけど…」


 女性はそう言いながら、俺の右手を見ていた。そうだった、血まみれになっているんだった。血まみれの手でピースとか、まあまあ怖いな。しかも、いつの間にか包帯代わりに巻いていたトランクスがなくなっていた。人差し指の出血は止まっており、はがれていたはずの爪は、水色になって生え変わっていた。


 なんで水色になってるんだろう…。てか再生早くない?と思ったが、今考えるべきは中指と小指の止血である。


「いや、すぐ止血するから大丈夫…って意識したらめっちゃ痛くなってきたあ!?」


 気丈に答えようとしたが、痛みがそれを邪魔する。


「ええ!?今まで痛くなかったんですか!?」


 全くもってその通りである。なんで今まで痛くなかったんだろう。とういうか、止血のための布…まあ、パンツなんだけど。荷物を置いてきてしまったので、すぐに止血できない。

 というか冷静に考えて、パンツを巻いている姿を女の子に見られるのは超恥ずかしい。


「こ、このぐらいの怪我なら大丈夫だよ!全然」


「でもさっき、かなり痛そうにしてたと思うんですけど…」


 やせ我慢であったが見破られたようだ。しかしここで、女性…いや、年齢から少女と言ったほうが適切だろう。少女から意外な提案があった。

 

「あの、もしよろしければ見せていただけませんか?私、【回復魔法】というスキルを持っているので、怪我を治せるかも」


 回復魔法を使えるらしい。なるほど、俺と同じでスキルを持っていたのか。俺がいたあのホームセンターに【回復魔法】のスキルオーブがあったのかは不明だが、医療品のコーナーを探せばあったのかもしれない。


「じゃあ、お言葉に甘えて」

 

 俺は少女に向かって右手を差し出す。血でかなり汚れているのだが、少女は躊躇わずに手で触れた。そして「ヒール」と唱えると、温かい光が指先のあたりを包み込み、開いていた傷口はみるみると修復されていった。痛みもいつの間にか引いている。


「ありがとう、助かったよ」


 自分の手が治ったことを確認して、感謝を伝える。いつの間にかため口になっていたが、年下っぽいし大丈夫だろう。いや、服装的には年上か?

 

 彼女の容姿をしっかり観察してみる。ライトブラウンの髪は長く、肩の辺りで切り揃えられていた。瞳も茶色で、くりくりとしていて可愛らしい。身長は俺よりも高いが、俺の身長が短くなってしまったせいで、何㎝かは分からない。もしかしたら俺、相当縮んでる?


 指のほうへ意識を戻す。

 はがれ落ちた爪までは治っていなかったが、それは望みすぎだろう。

 そう思っていたが、爪の付け根辺りから水色の爪がにょきにょきと生えてきた。手を顔に近づけて観察してみる。へー、こんな感じで生えるんだ。

 再生が早すぎて普通であれば怖いが、早く治るなら儲けものだろう。


「すみません、爪までは治せませんでした…」


 少女は申し訳なさそう言った。わざわざ謝ることじゃないのだが、責任感が強いのだろうか。


「いや、たった今生え変わったから大丈夫」


 対して俺は、無事を伝えるべく少女に爪を見せた。


「えっ、ウソっ!?」


 若干引かれてしまった…かもしれない。




(後書き)

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