5話 異世界転移 ~変わっちまったな、俺。~
(前書き)
本日2本目です。
青い海、青い空、そして白い砂浜。うーん、夏だ。目が覚めたらそこは夏だった…。
というのは冗談で、ここはおそらく異世界である。異世界のどこかの島か大陸の、よくわからん海岸だ。
俺は元居たホームセンターでレジ袋を持って突っ立ってたが、そのまんまの状態で来たらしい。普通はもっとこう、寝てる状態から起き上がるとか、そういう演出的なアレがあると思うんだが、期待外れである。
足元の砂浜には、木の棒で掻いたようなくぼみがあり、よくよく見ると自分を中心とした円に、内接する正三角形の形状をしていた。つまり、三角形と丸の魔法陣の上に俺は立っていた。魔法かなにかで俺を召喚したと推測できる。
「砂浜の上に木の棒で書いた三角と丸」とかいう随分とコスパの良さそうな魔法陣に呼び出されたのか。
なんだか自分が安物扱いされてるような気がして心が傷ついた。だがまあ、自分程度の存在に大仰な魔法陣を描かれても委縮してしまうだけなので、別にいいや。
気を取り直して、いったんレジ袋の中身を確認する。
スキルオーブ【吸水】(水色で小さい球)
スキルオーブ【貯水】(水色で大きい球)
スキルオーブ【水鉄砲】(青色の球)
スキルオーブ【給湯】(淡いピンク色の球)
スキルオーブ【パンツ召喚】(灰色の球)
トランクス
コーヒー(5本)
よし、しっかり全部そろってるな。ついでにポケットの中も確認したら、25円入っていた。まじか、日本円とか使い道なくね?
25円のことは置いといて、気になるのはスキルオーブのほうだ。どうやって使うんだろう。まさか、食べるのか?プラスチックか金属のような硬さなので、美味しくはなさそうだ。だが、試さないことには始まらない。
とりあえず【吸水】のスキルオーブが飴玉サイズで飲み込めそうなので、指でつまんで持ち上げる。
あー、と口を開き口内に入れようとしたとき、突然スキルオーブが実体のない光の球になり、手から脱出した。そしてそのまま胴体の中心、たぶん心臓のあたりに吸い込まれていった。
急にファンタジーな展開になり驚いた。なんだ、飲み込むわけじゃなかったのか。
スキルオーブを吸い込んだ数秒後、異変が起こる。心臓が一度バクンと跳ね上がり、全身の皮膚や毛穴に電流のような痺れが走った。
「うっ、なんか、かゆい!」
腕、足、胴体、顔、それから頭皮。全部かゆい!しかし、かゆいからといって搔きむしりたくても、全身を同時に掻くには腕の本数が足りないので、俺は砂浜でのたうち回ることになった。
そうしてしばらくすると、かゆみがスッと治まった。ふう、これで一安心。だが、今度はかゆみとは違った違和感を感じて、自分の手のひらを見た。なんということでしょう、皮膚がはがれていました。
びっくりしすぎて開いた口が塞がらなかったが、かゆみや痛みはないので皮膚をはがしてみた。するとそこには、全く新しい、白いすべすべの肌があった。
「もしかして、脱皮?」
人間が脱皮するなんて聞いたことないが、とりあえず脱皮だと思うことにした。べりべりとはがすたびに白い綺麗な肌が出てくるのは楽しいが、汚いっちゃ汚い現象なのでさっさとはがす。周囲を確認して誰もいなかったので服も脱いで古い皮膚をはがした。そして終わったらさっさと服を着る。ふう、誰もいなくて助かったぜ。
頭から大量のフケが出たので「ハゲたんじゃないか!?」と焦りまくったが、そんなことはなかった。周辺に髪が散乱しているわけでもないし、頭を触ればフサフサだ。むしろ毛量が増えた気がする。あれ、こんなに髪、長かったっけ。
目にかかった前髪を払ったとき、なんとなく前髪が水色に見えた気がしたが、たぶん気のせいだろう。海から光が反射した、とかのせいだろう。
「はあ、あと4つもスキルオーブを取り込まないといけないのか」
気乗りはしないが、やらないという選択肢は取れない。高橋からもらった1万円を無駄にすることになるからな。既に25円無駄にしている気がするが、それは脳内から消し去る。
気合を入れて残りのスキルオーブを取り込む。
【貯水】を取り込んだときは吐き気に襲われた。というか吐いた。しかし砂で覆い隠したから景観的にはオッケーである。身体的には、体内で何かが起こったのだろう。どこかの臓器が広くなったような気がした。
【水鉄砲】を取り込んだときは両手両足の指に激痛が走り、その後全身が硬直してしばらく動けなかった。死んだかと思った…。硬直から回復した後は、指に何かが宿ったような気がした。
【給湯】を取り込んだときは全身が熱くなった。それだけで済んだ。1番高いスキルなのでめちゃくちゃ大変なことになるかと予想していたが、そんなことはなかった。
【パンツ召喚】を取り込んだときは、一瞬体がビクッとした以外は何も起こらなかった。逆に不安である。
全てを取り込み終わると、体の感覚が明らかに変わっていた。全能感とは違い、別の生き物に生まれ変わったような感覚である。
「俺は人間をやめたぞ!」
いや、ディオが言っていたのは「俺は人間をやめるぞ!」だったか。少なくとも過去形ではなかったな。
さて、スキルオーブは全部使い切ったわけだし、とにかくこれからどうやって生きていくか考えないと。そうだ、その前にやることはまだあった。自分の姿の確認である。脱皮したり髪が伸びたりしたと思うので、自分の顔がやばいことになってないか不安だ。
ズボンのポケットにスマホが入っている。取り出してスリープを解除すると、やはり圏外だった。充電は残り60%。カメラを使うだけなら十分だ。カメラアプリを起動し、内カメラにした。
画面に現れたのは、知らない人物だった。
淡い水色のショートカットに、桜のような色のメッシュ。透き通るような白い肌。水色とグレーが混ざったような色の、大きくて可愛らしい瞳。鼻と口もバランスが取れていてキュートだ。まぎれもない美少女である。
ほーん、こんなかわいい子いるんだ。
「って、誰だ!?」
スマホから目を離して辺りをきょろきょろ見回す。しかし誰もいない。不思議に思いながらもう一度スマホを見る。うん、やっぱり美少女だ。美少女がそこにいる。俺は考えるときの癖でアゴを触った。するとその美少女もアゴを触った。
「んん!?」
俺がほっぺをつねると、美少女もほっぺをつねる。俺が鼻をつまむと、美少女も鼻をつまむ。口を開くと口を開く。舌を出すと舌を出す。ウィンクするとウィンクする。笑うと笑う。
ああ、なるほど。これ、俺だわ。ようやく理解した。よく見ると、服もおんなじだ。黄色いパーカーを着ている。
川口晴人、18歳、男子高校生。この度、めちゃくちゃ可愛くなりました。
(後書き)
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