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第8話 嵐のような砲撃

 ブラックジェルを倒したアナトは、ペンシルバニアへと向かう。既に根城にしていた妖魔を倒したわけだが、被害状況を見に行こうと云う事になったのだった。


「やはり所々森林が禿山のようになっていますね」

『ええ、あの妖魔はどれほどの物を喰らい尽くしたのか…』


 しかし、他の4州に比べれば被害は軽微と云えた。疎らながら人影も見えている。そしてネットによる情報配信がされているのであろう、虹色の軌跡を残して飛翔するアナトに、手を振る人々が居た。


「アナトさん…今までの戦闘記録をネットで流しておきましょう。そうすれば該当地域の方々は、安心して過ごせるようになるでしょう?」


『良い考えです。ではすぐに編集にかかりますね』


「え?何故編集を?」


 それは…ウテナのゲロゲロな音声やら、ノリノリの叫び声を消す為に他ならない。故に、敢えてアナトはウテナの問いかけをスルーしたのだった。


『出来ました。スマホを接続してください』


「早っ!30秒で!?スタジオやら機材いらずですね!」


 USBでスマホを接続すると、『機械天使アナト』の名で様々な動画配信サイトに接続し、同時にアップロードを開始した。


 アナトの能力によって同時に配信された動画は、瞬く間に世界を駆け巡った…のであるが、ウテナのスマホが負荷に耐え切れず、物凄い熱を発してリセット状態に陥ったようで、ウテナがアウアウと呻きながら半ベソをかいていた事は内緒だ。





 暫くして、手を振る人々の前にゆっくりと降下したアナトは、静かに着地をし跪く。そしてゆっくりとウテナを降ろした。


「おお!機械天使アナト様とその従者の方よ!!御来訪歓迎いたします!」


 すっかりウテナは『アナトの従者』として知れ渡ってしまっているようだ。本人は心の中で『相棒なんですけど…』と呟いているようである。


 その後、ブラックジェルの退治報告をウテナが済ませると、更に住民達は沸き立った。そんな沸き立つ住民に、ウテナは布巾を何枚か貰えないかとお願いしている。…ゲロに塗れたコックピットの掃除の為である。


 住民達は喜んで何十枚もの布巾を持って来てくれた。そんなにいらないのに何十枚も。天使様への貢物と云った感覚なのだろう。






 そうして一生懸命アナトのコックピットを掃除している姿は、確かに『アナトの従者』にしか見えなかった。





 気付けば住民達も加わって、いつしか『機械天使アナト様の沐浴』とでも言うような光景となっていった。皆が一生懸命その装甲やらを磨いている。アナトも『ちょっとした王侯貴族の気分です』と喜んでいるようだった。


 住民の男性陣は機械油を持ち寄って、アナトの関節部にそれを塗っていた。こちらはオイルマッサージとでも言うべきか?アナトのツインアイが細かく点滅している。恍惚とした表情…なのであろう。


 そうしてアナトが寛いでいる間に、一部の男性陣が二人(?)の話しを聞いて急ごしらえではあるが、Nimja400を格納できる箱を用意してくれた。そしてそれをアナトの腰に据え付けてくれている。


 小型のコンテナを改造した物なので、他にも色々仕舞えそうだ。ウテナは住民達がくれた食料などを、早速そこへ詰め込んでいる。


「しかし、天使様が空を飛んだりしてる最中にバイクが壊れたりしないのかね?」


『大丈夫ですよ。重力制御で内部の慣性とか無視できますから』


「おお、さすがは天使様じゃ」


 ワイワイとアナトを中心にお祭りのような賑わいとなっていた。ウテナは住民達に誘われて、一緒にBBQの準備を始めている。


『皆での食事…懐かしい…主も戦場でよくやっていました』


 自身の居た世界を思い出し、アナトは星空を見上げる。幾つもの街が破壊され、灯りの少なくなった星空は、皮肉にもとても美しく光って見えていた。







 朝になり、アナトとウテナは住民達に礼を言うと、オハイオ州を目指す。次なる妖魔は武装したゴーレムのような出で立ちであると云う。


『厚い装甲を持つ相手となると…また魔導ランチャーが主力になりそうですね』


「大丈夫大丈夫!まだドリンクも28本も残ってるんだし!」


『いえ、あの…節約しませんか?』


「臨機応変、臨機応変♪」


 ウテナ嬢はアナトの注意を、理解していないようである。軽やかにフットペダルを踏み込んでいる。その飛行速度は既に軽く音速を越え、周囲にソニック・ブームから来る衝撃音を撒き散らしていたのだった。








 ピピピピピ


 突然アラートが鳴り響く。それは下方からの砲撃であった。


『!?武装とは火器だったのですか?』

「みたいですね!」


 急制動をしてやり過ごすと、アナトはジグザグに飛びながら発射地点を目指す。その脇を幾つもの砲弾が掠めていく。照準精度は相当高そうだ。


「あんな距離から撃っていたの!?」


『ええ、私もセンサーで感知してはいたのですが、驚いています』


 現在、妖魔との距離は20kmほどである。センサーで感知して15kmほど進んだ辺りからこの砲撃は始まっているのだ。つまり、有効射程距離35km…しかも精度は抜群。脅威でしかない。


 妖魔との距離が3kmほどになると、今度はバルカン砲のような射撃が始まった。アナトも必死である。


 そしてようやく視認したそれは、両肩に大型の砲塔、両手の指がバルカン砲、胸部の穴は…ミサイル発射口であろうか?そんなヘビーアー○ズさんも真っ青な、茶色のゴーレムさんが立ち塞がっていたのだった。


「なんですあれ!?今までのファンタジー色はどこへ行ったんです!?」


『まさか…人類の兵器を取り込んだのでしょうか?』


「え!?そんな事できちゃうんですか!」


『相手は邪神軍です。可能と謂わざるを得ません!』


 二人が会話する間にも、間断なくバルカンの砲撃が掠めていく。どうやら弾切れと云う言葉は、彼の辞書にはないらしい。


『くう!これ以上は近づけません!』


「激しすぎて魔導ランチャーも構えられないですよねこれ~!!」


 アナトは向きはそのままに、森林の中を後方へと飛翔する。接近戦も中距離戦もままならない相手に、打つ手がないように思われた。

ようやくバイクをなんとかできました。

いやでもこれ、邪魔じゃない?


byあくまで合理性を考えてしまうスーパー派のはずのミツクラ

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