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機鋼甲冑アナト A.D 2030  作者: 三ツ蔵 祥
遊撃部隊”MSX”始動編
44/49

第43話 紐付け

『あ、エクステリナ大尉。大天使(アナト)の盾はそれではなく、まだ倉庫の奥にあります』


 少しでもアナトとの親和性を上げようと、エクステリナは作戦前に一人でアナトを操縦し、搬入などの手伝いをしていた。しかも、なるべくレバー操作を避け、ESPの負担が掛かる思念操作でアナトを動かしている。


「え?え?どこ?と言うか、アナトの物は他機種のとは共用ではないの?」


『はい。月詠からはアナト用の特別仕様の物が届いています』


 ハンガーの係員も、ちょっと困った表情で答えた。その表情をズームで見たエクステリナは、またウテナの姉君が、何か魔改造した製品を送りつけてきたのであろうと溜息を吐くと、アナトもそれに準じた動作をした。そんな人間臭いアナトの動作を見ているハンガー要員からは笑いが漏れていた。


『ふはは。大尉、かなり大天使と馴染んで来たんじゃないですか?』


 手持ちぶたさになっている両手を組みながら、エクステリナは右の手の爪を噛んだ。


「そう?ありがとう。でもそれはアナトに聞いてみてくれない?」


 やはりその爪を噛む動作はアナトに反映されていたようで、クスクスとハンガーの中で笑いが起こった。


『エクステリナ、そんなに気を揉まなくても大丈夫です。こうして皆の反応を見れば、私達が見事にシンクロしている事が察せられると思いませんか?』


 アナトが爪を噛むような動作のままでエクステリナに答えると、エクステリナはまた一つ溜息を吐いた。


「そうね…少なくとも皆のこのウケようは、私の動作がそのままあなたに反映されている証拠のようね…てか…笑うなそこ!!」


 アナトの巨大な指が、馬鹿笑いをしていた作業員をビシっと指差すと、一瞬の間のあとに場内にはまた笑いが起こったのであった。








 作業が終わり、念を使い過ぎて少しよろめきながらエクステリナはコックピットから降りた。そうしてアナトの顔を見上げ見ていた。


「よくもまあ、同じような腕組み状態でティアラは普通に動かせるものよね…」


 何気なく発したエクステリナの言葉に、アナトは優しい声で答える。


『それは一時期オトメディア様が国許に帰国していた際、忙しいアルテイシア様の代わりに私と共に200年程、各種任務を遂行していたからに他ならないです』


 エクステリナは聞き慣れない名前と、200年と云う数字に口をポカーンと開き、そして人差し指を口に咥えた。


『あ…申し訳ありません。説明が色々必要そうですね?』


「え、ええ。まずそのアルテイシア様とは何者なの?以前にもティアラさんがその名を口にしていたようだけど」


『はい。アルテイシア様はオトメディア様の長姉にあたるお方で、現在は私共が居た世界の最高神と婚姻され、大女神様となられているお方です』


「神と婚姻…ね…(生贄か何かになったのかしら?)」


『エクステリナ、恐らくあなたの想像とは違います…』


「え!?なに?私の考えてる事がわかっちゃったの!?」


『はい。シンクロ率が上がった事で、貴女と私の思考に、ある種の紐付けがされていますので』


「あ~…なるほど…ウテナやティアラがほぼノーコンタクトであなたと意思疎通がとれたりしてる状態に、私も近付いたと言う事ね」


『はい、そうなります』


「でもまだ二人には追いつけていないようね。貴女が私の思考を読めても、私が貴女の思考を読めていないもの」


『焦らなくても良いと思います。オトメディア様は元々、お二人よりも私との付き合いが長いだけですし、ウテナは特殊と言って良いと思います』


 アナトのツインアイが優しい柔らかい色に灯ると、エクステリナは少し安堵したような表情でコックピットの上からその顔を撫でた。


「ありがとう。本当に貴女は優しく強い大天使だわ…」


 アナトの顔を撫でるエクステリナの表情は、微笑みに彩られ、聖母のような輝きに満ちていたのであった。










 翌日、ウテナとティアラも加わって、アナトの装備の確認とテストが行われた。


「まぁ~~~~た咲耶姉さんはーーーーーーー!!!」


 ウテナの声が基地内に轟く。どうやら昨日の新装備を見て絶叫しているようだった。


「なるほどね。シールド裏にガトリング砲を設置しているとは…さすがにこれは、まだ地球の現用兵器では扱えませんわ」


「ですよね…私も昨日これを見て、呆れてしまいました…」


 空砲状態でカラカラと回る5連装砲に、ウテナは怒りを顕わにし、エクステリナは引き笑いをしていたが、ティアラは物珍しそうにコックピットのモニターを眺めていた。そしてティアラはニッコリと微笑んだ。


「二人共、そう嘆く事ではないですよ。何しろ今度の相手は無数にいるのです。今回の作戦には最適の装備じゃないですか」


 その点に関してはエクステリナも同意見ではあるらしく、苦笑しながらも各種セッティングを開始していた。しかし、ウテナはと謂えば…。


「あのマッド姉!また国防費か国家予算だかわかりませんが、市民の血税で自分の趣味をぉおおお!!」


 そんなウテナの遠吠えを聞きながら、アナトは思った。


 ――形は違えども、この御姉妹はやはりあちらのツクヨミ御姉妹と似ていらっしゃる…。

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