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機鋼甲冑アナト A.D 2030  作者: 三ツ蔵 祥
遊撃部隊”MSX”始動編
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第40話 デスイーター

 オーストラリアのシドニーにある海軍基地に到着した集結艦隊は、オーストラリア王立軍本隊との合流を果たした。しかし既に王立軍は過半数の戦力を失い、シドニーを始めアデレード、ブリスベン、メルボルン、キャンベラと云った南東主要都市を守るのに精いっぱいと云う有り様のようであった。


「クイーンズランドとサウスオーストラリアの2州にてなんとか踏み止まっているのが現状です。しかし既にクイーンズランドは半分を攻め滅ぼされています…」


 王立軍司令はまだどう見ても20代から30代と云った雰囲気だった。環太平洋集結軍の到着までに、古参の将校も大半を失ったのであろう。緊張からか、微妙に彼の手は震えていた。


「ふむ将軍、確かに現状はわかった。しかし緊張のし過ぎではないかね?」


 山本十四郎が優しい眼差しで王立軍将校に声をかけると、彼は敬礼をして本音を吐露した。


「申し訳ありません。前任の将軍が戦地でお亡くなりになり、私が抜擢されたのがつい先日であります。多分に若輩である為、ご迷惑をおかけいたします」


「そうか…つい先日か…ならば致し方あるまいな。で、敵主力の詳細をお願いしたい」


「はい。敵の主力はコードネーム『ユルルングル』。これはアポリジニーの神話より貰いました」


「ふむ。ユルルングルとは銅の身体を持つ蛇だったかな?」


「はい。ですがこの妖魔の身体は銅と云うよりは、各種鉱物を身に纏った化け物と云った所で、その全長は1キロメートル近くとなっており、その口からは酸を含んだガスや、時には炎をも吐いてきます」


 若い将軍は集結艦隊の各将校に自身の端末から実際の動画を送信した。その動く山とも言える映像に、将官達は目を見開いている。


「なるほど、よくぞこれまで持ち堪えたものだ」


「お褒めの言葉と受け取ります。しかし、問題はこやつだけではありません」


 更に送信されて来た動画を端末で開くと、そこには蛾の群れのようなものが映し出された。人との対比で見た大きさは、1メートル以上はありそうだった。


「こいつらは、ユルルングルの身体に寄生するようにへばり付いており、ユルルングルが攻撃を受けると、この画像のように大挙して押し寄せ、毒のある鱗粉や、やはり酸のような物を吐きかけて来ます」


 動画の中には、蛾の群れに向けて機銃を掃射する映像が含まれていた。確かに機銃は貫通して蛾を撃ち落としているのだが、その後から際限なく現れる群れに、悲鳴を挙げながら食い散らかされていく兵士の姿がそこにはあったのだった。


「…こいつには口があるのか?」


「ええ、まるでピラニアのような歯も持っています。我々はこの蛾を『デスイーター』と呼んでおります」


「デスイーター…死を喰らう者…か」


 十四郎は無意識にパイプに火を点けていた。巨大な妖魔よりも、この蛾の群れの方が脅威であると認識し、目を鋭く光らせながら…。










 ネールリンドバウム号に戻った草薙は、ウテナ達に資料を配ると例の動画を上映した。ウテナとティアラはマジマジとその映像を見つめ、エクステリナは目をそむけた。


「まるでスプラッター映画ですね」


「ああ、B級のね。さすがに僕も最初に見た時は吐き気をもよおしたよ。ウテナはよく平気で見れるね?」


「あくまで記録映像として眺めている分には…ただ、現場で見たら…ちょっと…」


「そう?ソラスの辺境ではよく見る光景よ?」


 ティアラの言葉に、ブリーフィングに集まった皆が「うえっ」と言った表情をしている。世界線が違うとこうまで違うのかと云う事を、皆が思い知ったようだった。


「まあ兎に角だ。大型の妖魔を攻撃すると一斉にこいつが襲い掛かってくる。これに対処する方法はないものかと思ってね」


 ヘラヘラとした様子で草薙が皆を見回すと、ティアラ以外の全員が下を向いた。映像を見る限り、有効な手段がないように思えたからであった。


「このデスイーターって、鉄や鋼も噛み砕くのですか?」


 小首を傾げながらティアラが問うと、草薙は資料を広げて熟読した。そして眼鏡をクイっと上げる仕草を見せると、ティアラに答える。


「鉄や銅程度なら食い破るようだね。さすがにそれ以上の硬度の物が食い破られた記録はないな」


「そうですの?白銀の盾(ミスリルシールド)でもあれば対処できそうですが…この世界には現存しませんものね」


 下を向きながらう~う~唸っていたウテナが、ふと顔を上げて疑問を呈する。


「蛾の姿と云う事は、何か決まった周波の音とかに対しての反応とかはなかったんですか?」


「…うーん…データにはないなあ…。王立軍司令に問い合わせてみよう」


 草薙がそう言って月島に指示を出すと、無言で月島は頷いてスマホの電源を入れながら退室した。


「まあ、もしもなければ、実証実験でもすればいいだけの事です」


 皆がうんうんと呻きながら思案する中、あっけらかんとした表情でティアラが告げると、ウテナは「なるほど!」と席を立ちあがり、エクステリナは頭痛を堪えるかのように頭を抱えたのであった。


「ティアラさん、実証実験と言ってもどのようにしてやるおつもりなんですか?」


 嫌な予感を抱えながら、エクステリナがティアラに質問を投げると、ティアラはニコニコとしながら人差し指をピンと立てた。


「勿論、アナトでです」

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