第3話 聖なる夜
ウテナを操縦席に乗せたまま、アナトはNinja400を手の平に乗せてウテナの居住地へと向かう。ウテナの所有するスマホをUSBで接続し、そこからアナトは地図情報などを取得している。
「ニューヨークを中心に、先程の妖魔によって幾つかの州が壊滅状態になっています。取り敢えずはユニオンシティのベースボール・フィールド・アンド・ウォークウェイに降りていただけますか?そこなら天使様も休めるかと思います」
『わかりました。それよりもこの国の軍はどうなっているのでしょう?動きが見られないようですが?』
ウテナは悲しい表情をしながらモニターを見つめている。
「世界最強と言われたアメリカ軍ですが…恐らく…妖魔によって…」
『壊滅状態ですか…わかりました。今、このスマホを介してこの世界のネットワークの情報を集めてみますね』
「はい。その方が確かかと思います」
二人が会話をしている間にも、ウテナの示した目的地へとアナトは降り立っていた。街は焦土と化しており、ウテナの気遣いでグランドに降りてはみたものの、実際はどこにでもアナトが立てる場所はあったようだった。
ただ、元は家々があった場所にアナトが立つ事は、確かに気持ちのいいものではなかった為、アナトも同意してグランドに佇む。
「天使様、私はこれから無事な人々に声をかけに行きたいと思いますので、降ろしていただけますか?」
『分かりました。皆どちらに避難を?』
アナトの手に乗りながら、ウテナは寂しそうな表情をした。
「墓地です…」
辺りはすっかり薄暗い時間であったが、近隣の墓地の林から人々がグランドに次々と現れ、妖魔ザンダーを倒した機械の天使アナトを見上げている。誰もが歓喜に咽び泣いているようだった。
『…何故墓地に?』
機械天使の問いにウテナが答える。
「妖魔の目的は、我々の文明を破壊する事のようで、森や林などには手を伸ばして来なかったのです。それに気付いた我々は、こうして墓地の林の中に逃げ延びて生きていたのです」
アナトの周辺には5~600人ほどの人が集まって来ていた。
『この地域で生き残られた方々は、これだけですか…』
「はい…恐らく都市部ではセントラルパークや、地下鉄などに避難しているとは思います。」
―と、言う事は…どこも都市部は壊滅していると考えるべきですか…。
辺りはすっかり暗くなり、赤十字や教会員達による炊き出しが始まると、皆それに列を成していた。ウテナもその列に並び、僅かなパンとスープを受け取っている。
「救いの天使様、僅かばかりではありますがこれを…」
教会員がアナトにもパンとスープを捧げ物としてであろう、手に持ち掲げる。しかし、機械である彼女には不要な物である為、アナトは首をゆっくり横に振った。
『私には必要ありません。私の分は、必要とする方々に分配して差し上げてください。』
「おお…神の使徒よ…なんと慈悲深い…」
教会員は涙を流しながらアナトに向かって手を合わせる。それに続いてまた一人、また一人と皆が手を合わせる。
それはアナトへの礼と共に、神への感謝でもあった。アナトは照れ臭く感じているのだが、機械である彼女には表情がない為、気付いてはもらえないようだ。
気付けばアナトを中心に皆が輪になり、祈りを捧げていた。
―…マスターもこれに近い羞恥心を感じながら、生きていらっしゃったのだろうか?
内心でアナトはそんな事を思いながら、静かに座していた。勇者王と呼ばれ、崇められていた主を想いながら。
アナトを取り巻く人々の口から発せられる言葉は、やがて祈りから聖歌に変わっていた。そしてそれらの想いを、精霊であるアナトは吸収していく。祈りや想いこそが、彼女にとって最高の食事であるのかもしれない。
吸収しきれずに溢れた想いは、アナトの背にある翼から虹色の泡沫となって天へと昇っていった。それを目にした人々は挙って「奇跡だ…」と呟いている。
人々はこの日の光景を、心に刻み付けようと虹色の泡沫を目を見開いて眺め、そして更に祈った。後に彼等はこの夜を『聖なる夜』として語り継ぐのである。
朝日が昇る頃、コックピットにウテナを、手の平にはNinja400を乗せてアナトは立ち上がった。それを祈るように人々が見つめる。
『皆さま、私とウテナ様はこれから他の邪神の尖兵との戦いに赴きます。皆さまの力に慣れぬ事を心苦しく思いますが、皆さまの祈りや想いが天に届くように、必ず我が主にお伝えいたします』
そう告げると、光の精霊アナトは背中の翼を大きく広げ、虹色の燐光を放って飛び立った。次に目指すワシントンの方角へ…。
人々は美しき虹色の燐光に祈りを捧げる。
「どうかこの世界に救いを…大天使アナト様と、その従者ウテナ様に祝福を…」
『ところでウテナさん…そのう…』
「なんでしょうか天使様?」
『それです。天使様と呼ぶのをやめていただけませんか?』
「では、なんと?」
『アナトで充分です。正直に申しますと、恥ずかしいのです』
意外そうな表情をしたウテナであったが、少しの間のあとクスクスと笑いながらアナトに答えた。
「はい、わかりました。アナト様」
『あの、その様付けも出来たら…』
「では…アナトさん?」
ウテナにさん付けで呼ばれた時に、アナトは主の第2正室とウテナの顔が被って見えていた。そして喜びに包まれる。
『はい!ウテナ様!!』
そんなアナトにキョトンとしながら、ウテナは「アナトさんも時折される様付けはやめて下さいね」と笑う。
彼女達の旅は、こうして笑顔と共に始まったのであった。
この世界のウテナは
リンドバウムのウテナのように強くはありません。
ただ、逞しさは負けないように描きたいと思っております。
ところで今悩んでるのが
Ninja400をどこに収納しようか?
と云う事です。
手の平に乗っけたままだと、急な戦闘の際に困りますし
壊し兼ねないんですよね。
お腹の中には2つの動力炉と増幅装置が入ってるし…
頭パッカーンは嫌ですし
…肩アーマーに収納する?動きが制約されそう…
バックパックしかないかなぁ…
でもそんなとこ手が届かないよ。
byスーパー派だけど、リアル思考なミツクラ
※昨日は初ブクマと初評価をありがとうございました。
励みにさせていただきます。




