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機鋼甲冑アナト A.D 2030  作者: 三ツ蔵 祥
遊撃部隊”MSX”始動編
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第27話 異世界皇女の実力

 ドタバタとした経緯はあったが、異世界の王女オトメディア…地球での名を早乙女ティアラと合流したMSX隊は、遂に行動を開始した。


 ウテナとエクステリナ、そしてティアラを乗せたアナトが横穴へと突入すると、海洋の空母からはジード率いる戦闘機隊が飛び立ち、草薙が指揮する艦隊が砲撃位置の確認の為に衛星とリンクを開始していた。


 横穴前ではラドクリフ率いる陸戦隊が、横穴に照準を合わせて待機。その後方では太田とメルティの補給隊が忙しく弾薬の整理や各人員の再確認をしていた。







「アナト、数が多いです。誘導乱舞でいきます」


『了解しました』


 アナトから幾つもの苦無が射出され、アナトの周囲を旋回する。この時ウテナは大量にESP波を消費するのだが、いつもと違いとても軽く感じられていた。


「ウテナっち、魔力供給は任せてよ」


 3人目の搭乗者であるティアラが、純粋な魔力を供給している為に、今までよりもアナトの全ての動作が軽くなっているようだった。そのおかげで魔導炉の調子も普段より良くなっており、管制をしているエクステリナは各ゲージの高さに目を見張っていた。


『これなら魔導炉本来の力を発揮できそうです。ツインドライブさせます』


 アナトが軽く魔導炉の脈動を速めると、すぐに次元エンジンとの同調が始まった。ツインドライブするまでの時間の短さに、エクステリナは思わず「え!?」と声をあげる。


『これが本来の私の心臓…魔導エンジンの力です』


 驚いているエクステリナに、アナトは優しい声音で語りかけた。そのアナトの周辺からは、虹色の泡沫が溢れだしていた。ウテナとエクステリナのESP消費はさほどでもないにも関わらずである。


 その虹色の光に、兵隊蟻達は過剰に反応しているようだった。次々と穴の奥から現れ、アナトの進路を塞ごうとしている。


 しかし、今のアナトの敵ではないようだった。


 幾つものヒートダガーが乱舞し、次々と兵隊蟻をバラバラにしていく。その挙動は今までよりも遥かに速く、そして軽かった。右往左往する蟻達が、まるで追いつけるものではなかったのだ。


 アナトはまるで無人の荒野を行くかのように、悠々と奥へ奥へと進んで行く。その後ろには無残にも、幾つもの蟻達の残骸が転がっていった。


「これが魔力の力…」


 ヒートダガーを操るウテナも、驚きを隠せずにいた。ヒートダガーの1本1本に念を送る感覚が、いつもよりも簡易なもので済んでいる事に驚いているようであった。そう、念を送ると云うよりも、思えばいいだけ。そんな感じであるようだ。




「取り敢えず兵隊さん達が多く密集してる方向に進みます。気付いた事があれば逐一お願いします」




 面白いように舞うヒートダガーの動きに、ウテナは魅了されるかのように戦闘に没頭し始めていた。まるで子供のように目を輝かせている。一方でエクステリナもまた、魔導力炉のエネルギーの余裕の多さに歓喜している。今までギリギリのところまで絞り、負担が少なくなるように調整していた事が嘘のようだと思い、やはり目を輝かせていた。


「チームの中で最も魔力の高い者が、エネルギー増幅装置の位置に近いこの第3搭乗席に座すと、このようにアナトの力は増大するんですよ。今の能力なら魔神さえも滅ぼせるかもね~」


 ティアラの鼻歌が、スピーカーを通して二人の耳に届く。今の二人には、何処かその鼻歌も心地よく聞こえるようだった。


「さて、ウテナっち。そんなみみっちいやり方では時間が掛かってしまうので、シフトチェンジです。アナト、少し本気を出させてもらいますよ」


 第3搭乗席、その座は『第3』とは言いながら、他の二つの席よりも権限が高いようで、強制的にウテナからティアラへと操縦権限が移行する。そしてそれを合図に、ヒートダガーは猛烈な勢いで敵を串刺しにしながらアナトの周辺へと帰還し、周囲を守るかのようにアナトの周りを旋回する。


「今私が座るこの席は、元々は我が父の子の中でも最大の権威を持つ我らが姉、アルテイシア姉様の為のもの。それ故にアナトへの絶対的命令権が発生します」


 モーションアームの装着もせずに、ティアラが右手を挙げると、アナトも同じように右手を掲げる。そしてその右手の平の中に黒い光の球体を発生させる。


「これはグラビティー・ウォールを応用した攻撃技です。重力を超圧縮した光球です。名を超圧縮操弾(グラビティーバースト)とでも言っておきましょう」


 おもむろにアナトが右手を通路の方向に向けると、黒い光球は初めはフワリと舞ったかと思うと、更に禍々しい色を帯び、周囲の物全てを吸い込みながら通路の奥を目指して弾丸のような速度で突き進んで行った。


 その光球の姿が通路の奥で見えなくなり数秒後、バチっと云う火花が飛ぶような音が聞こえ、その後にズズーンと云う衝撃音が響いた。ゴゴゴと云う地鳴りさえも聞こえる。


「ふむ。どうやら親玉の元にまで届いたようですね。さあ行きますか。少し魔力を使い過ぎたようなのでお返ししますね」


 ティアラの言葉と共に、ウテナへと操縦権が返される。ウテナがキョトンとしながらモニターを見ると、そのままティアラは瞑想をするように目を閉じていたのだった。


「これが魔王勇者の力…凄い…」


 通路の奥へと進みながらウテナが呟く。進む先には何の気配も感じられない。ただ地下迷宮の闇だけが広がっているようだった。


 そうして暫く進むと、巨大な何かが蠢く気配を感じとり、ヒートダガー達が警戒するように激しく旋回を始めた。それに気付いたティアラも目を見開き、マナドリンクの封を開ける。


「どうやら瞑想などでゆっくり回復している余裕はないようですわね。ウテナっち、太刀を抜きなさいな。少しでもリーチのある得物に慣れておくべきです」


「りょ、了解」


 今までになく厳しい表情をするティアラを見て、ウテナはこの先に居る敵の強大さを察した。自然に今や主導権はティアラにある。素直にウテナはその指揮に従っていた。


 そしてウテナとエクステリナもまた、マナドリンクの封を開ける。二人のここまでのESP消費は微々たるものであったが、恐らくこの先に待ち構える女王蟻との1戦では、二人も多くのESP波を消費せねばならない事を察して、予め封を開けたのだった。


「二人とも、まだ飲んじゃダメよん。私の魔力が追いつかなくなってからにしてねん」


 逸る二人にティアラがウインクをしながらセーブをかける。まだその時ではないと。


『オトメディア様、次元ドライブと魔導力エンジンの出力を上げます』


「アナト、流石ね。いい判断よ。さあ、魔力全開で行くから、二人もしっかり戦ってよ!」


「「了解!!」」


 魔導力炉と次元エンジンの出力上昇と共に、アナト自体が虹色に輝きだす。ギアナ高地の迷宮が、光に包まれるかのような輝きであった。


「さあ、行きますよ!アナト、大太刀のモーションに補助修正をお願いします」


『ウテナ、任せてください。久能流の動きを、この1戦でモノにしてくださいね』


「ええ。では、ファイっ!レディーゴー!!!」


 ウテナの掛け声に連動するかのように、アナトは一気に加速する。その速度ゲージとエネルギーゲージを見つめるエクステリナは、あまりの上昇の仕方に言葉を失っているようだった。

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