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機鋼甲冑アナト A.D 2030  作者: 三ツ蔵 祥
遊撃部隊”MSX”始動編
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第20話 コロンビア上陸

 SDFが壊滅した米軍から接収した全長350mのジェラルド・R・フォード級大型空母『さざなみ』と、巡洋艦はあさぎり型とあきづき型の2隻、そして戦車隊輸送艦としてサン・アントニオ級ドック型輸送揚陸艦1隻がパナマ運河を渡り、コロンビアのカルタヘナの港に着岸すると、巨大蟻「ヒュージアント」から逃げ延びた人々がそこには溢れかえっていた。


 どうやらアナト達MSXの噂を聞いて、ここに集まって来ていたようだった。MSX艦隊に対して皆が手を振っている。


『これだけ沢山の人が生き延びれていたのですね』


 空母の上の機械神…アナトは、体育座りに近い姿勢で港を見渡す。ウテナとエクステリナも、その手の平の上から港の様子を眺めていた。


「ええ、アマゾン本流の様子から南米も絶望的と思っていました」


 エクステリナが安堵の溜息を漏らす。


「しかし、噂によればブラジルは都市部を中心に深刻なダメージを受けているようですよ。安心していられる状況ではないですね」


 ウテナが真剣な面持ちで、港に溢れる民衆を見る。皆歓迎の声をあげているようだが、その目の下には隈が見えるし、衣服も粗末な風体になっていた。


『連中の巣を見つけ出せれば、大元の発生源を潰せるのですが…』






 カルタヘナに到着するまでの間に、何度もミーティングを計り、衛星写真などを見ながら検討していたのであるが、その衛星写真には都市部を食い散らかす蟻や、森林を行軍する蟻などの映像は撮られているが、巣らしき物は見当たらなかったのであった。





「あれが我々の知る蟻と同じような習性を持つとするなら、必ず女王蟻と兵達蟻がどこかに居るはずなのですがね…」


 エクステリナは浮かない顔で、空を見上げた。


 今まで集められたデータには、働き蟻の姿しか撮られていない。釣られるようにウテナも憂鬱な表情で空を見上げる。








 そんな3人を脇目にラドクリフの指揮の許、戦車隊の上陸が始まっていた。


 ラドクリフの乗る82式指揮通信車を先頭に、現在の最新技術を投入したM50自走無反動砲改が1両、M113装甲兵員輸送車が2両、M1A1が1両、M1A2が2両、そして10式戦車が3両。合計9両の戦車が列を成した。これらには魔導砲の技術を一部転用した試作装備が成されている。


 アナトの前では骨董品とも云える戦車ではあるが、運用次第では充分助力となろう。


 空母の上には、アナト以外にも戦闘ヘリはAH-64Dアパッチ・ロングボウが2機、AH-1Zヴァイパーが1機、戦闘機に於いてはF15と16が1機ずつと、F-2を改造したF-2AX…アナト遊撃隊仕様機が3機搭載されていたのだった。これらにも最新技術が試験的に盛り込まれている。




 MSXは謂わばSDF特殊部隊であり、試作機運用試験部隊とも云えるのかもしれない。




 おまけで月詠財閥の社員が数十名引率してきており、メカニックの大半は彼等月詠財閥社員であった。


 これにはウテナが当初、酷く辟易した表情をしていた。あの姉(サクヤ)の事である、試作だけで済ませる気がないのだろうと…。




「噂では、試作中の機械兵もそのうち送られて来るらしいわよ」


「はあ…きっと姉の仕業です…。間違いなく送りつけられてきますよ」


 ウテナの深い溜息を聞いたエクステリナが笑い出すと、釣られてアナトも笑い出していた。恐らく国をあげた試験運用であるのだろうが、ウテナからすれば、姉から大きなオモチャを試しに預けられた、と云ったところなのであろう。


「しかも現状だけでもM50改とか…趣味全開ですよ。サクヤ姉様」


 青空の向こう…遥か彼方の日本に居るサクヤに向かって、ウテナは呟いていたのであった。






 戦車隊の上陸が済んだ後、ハワイにカルタヘナの現状を連絡して難民救援物資の依頼を済ませると、ウテナとエクステリナはMSXに支給された制服を着て陸地に揚がった。


 MSXの制服は、青地に白と赤のラインが入ったもので、某連邦軍の制服に似ているかもしれない。色の意味合いとしては、日米合同軍と云った意味があるらしい。肩口にはMSXと書かれた、星型のワッペンが付いている。


「うーん…私は緑地に黒と赤みたいな制服が良かったです」


「ウテナ、贅沢は言わないの。これも貴女のお姉さんのとこが開発した戦闘服なのでしょ?有り難く思いなさいよ」


「有り難くですか…嫌ですよ。。。」


 ウテナの辟易した表情に、エクステリナはクスクスと笑っている。








 瓦礫と化した町中にも、既に商売を始めている者達が居た。空地では子供達の笑い声が聞こえる。どんなに踏み荒らされようと、逞しく生きる人々の姿がそこにはあった。




「取り敢えずは、支援や復興作業に従事する部隊の到着までは、ここを死守しながら、アナト様には蟻たちの駆除をお願いするようでしょうかね」


 ジードが二人に同伴しながら、今後の事をエクステリナに提案する。エクステリナとウテナもそれに対して静かに頷いていた。


 3人は倒壊しかけた家の1室で、空を見つめている。天井は落ち、食器類やら衣服やらが散乱するその部屋の住人は、今は何処にいるのだろうか。


 遅れてラドクリフと、メルティ、そして梶が入室する。


「酷いものね。屋根もなく、いつ倒れるかわからないこの家は、この国…いえ、妖魔共に荒らされた各国を見ているような気分だわ」


 梶が爪を噛む。


「私達はその方々を助ける為に来たんですよ。太田大尉」


 メルティが梶を元気づける。


「ふん。俺は連中を木端微塵に出来ればそれでいい。早い所、作戦行動に移らないか?」


 ラドクリフはぶっきら棒に言うが、拳は強く握られ、震えていた。怒りをどこかにぶつけたくて仕方がないようだった。


 気付けば6人は、皆が天井から見える空を見上げていた。遣り切れない思いを胸に宿しながら…。

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