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第16話 補給

 アナトの肘の修理の為に、以前にアナトの整備をした整備班が到着したのは、エクステリナが目覚めて4日ほどの事だった。つまりエクステリナは、3日間ほど眠っていた事になる。


 その3日間の間にウテナはSDFからと云うよりは、国連から3等特別海尉から2等特別海尉への昇進を知らされる。それに加えてエクステリナの階級を、ウテナと同等の大尉へと昇格させたようである。


 これらは二人の功績を称える為と、機械天使の行動に抑制を加えるような組織活動を少しでも抑える為でもあった。


 二人が機械天使アナトに認められた使徒(リンドバウムでの意味合いとは違う)である事を大々的に公表し、鬱積した妖魔への恐怖感を少しでも払拭しようという試みでもある。


 またこれらはローマ法王からの強い要望でもあった。


 アナトが降臨した日、ウテナが見た正夢と同じ夢を、ローマ法王も見ていたのだ。更にはその日の礼拝の際に、主の像から涙が溢れ出している様を見て、確信を得ていたようである。




 尤も、それであるなら特佐にでもしてしまえば良いのだが、そう巧くは事は運ばなかった。ウテナは元々民間人であるし、エクステリナもそれまでそれほどの功績があった人物と云うわけでもなかったからだ。


 故に二人の昇進は、1段階に留められたようだった。




 そんな偉い人達の都合とは関係なく、ウテナとエクステリナは遊撃隊として公に認められた自分達の活動を誇らしく思った。それだけに今回の昇進を大いに喜んでいたのだった。







 アナトの修理には1週間を要するとの事で、基地内の町でウテナとエクステリナは久々のショッピングで心の疲れを癒していた。


「ウテナ、買い食いばかりしていないで、少しは有用な物を買いなさいな」


「そういうエクステリナは、ぬいぐるみなんてアナトの何処に置く気なんですか?」


 ようやくエクステリナもウテナを階級で呼ばなくなり、名前で呼ぶようになっていた。これは二人…いや三人の連帯感から自然にそうなったようであった。


「こ、これはその…私のコックピットの横に…お守りとして…」


 エクステリナは耳まで真っ赤になりながら、シドロモドロに言い訳を始めるが、それをウテナはニヤニヤとしながら眺めている。


 エクステリナの腕の中にいる、大きなクマのぬいぐるみが非常に愛らしい。


「な、なんですウテナ?そ、そんなニヤニヤして!」


「御堅いエクステリナに、そんな趣味があったなんてと思いまして。ぷぷぷ」


「な、な、なんで笑うのよ!少女趣味じゃいけませんか!?」


「いえいえ。うふふふふ」


 笑いながらスキップで次の屋台へと向かうウテナの後ろで、エクステリナはリスのように頬を膨らませる。


 そんな和やかな時間を過ごすと、二人は夕方にはもう一人の同胞の元へと足を向ける。ヒッカム空軍基地に急遽増設された、アナト専用の整備ドックだ。





「整備長さーん、アナトの具合はどうですかあ?」

「整備長殿、ご苦労様です」


 二人はその部署を預かる整備長に声を掛ける。アナトを見て頂いているお礼にと、エクステリナが差し入れの紙袋を手渡すと、整備長はにこやかに礼をしつつ現状を教えてくれた。


「まあ、地球製の製品で補っているから、以前に比べて強度が落ちるかもしれんが、それも時間の問題だ。アナト殿が齎したデータを元に、今日本では急遽それらの開発にあたっているから、次に君らがこの基地に来る頃にはアナト殿へのサポートも万全になるだろう」


「う~ん…と云う事は、今回はちょっと物が足りなくてちゃんと出来ないけど、次はバッチリだから任せてね!と、云う事ですね?」

「こらウテナ!すいません整備長殿!!」


 ウテナはエクステリナに拳骨をもらって、涙目で頭を撫でていた。だが整備長は苦笑しながら、ウテナの率直な感想に同意する。


「いやいや大尉、情けない話だがウテナ二等特別海尉の言うとおりだ。その拳を仕舞ってあげてください」


 整備長は頭を掻きながらエクステリナに微笑む。エクステリナはそれに従い、ウテナに向けていた拳骨の素振りをやめて、愛想笑いをする。


「我々としても技術力が足りないばっかりにアナト殿に苦労をかけちまってる…本当に情けない話だ。だが、それでもあの機械天使様は俺等に気遣い、休憩をとってくれと言われる。頭が下がるよ」


 整備長はそう言うと、休憩室から見えるアナトの横顔を、優しい笑顔で見つめるのであった。そして二人もアナトを見つめた。早く良くなるようにと願いつつ。







「アナトー!具合はどう?」

『はい。整備の方々のおかげで指は動くようになりました。あとは肘関節の強度の問題で頭を悩ませていらっしゃるようですね』


 アナトは現在、斜め横に寝かされるような状態でドックに入っている。アナトの各所に手が届くように、機体の周りには幾つもの橋が架かっていた。ウテナはアナトとお喋りする為に頭部周辺の橋の上におり、エクステリナは胸部…コックピット周辺から二人を見上げている。


「アナト…貴女と云う人は…整備の方々の心配もいいですが、自分の事を今は優先してください」


 屈託のないウテナと、溜息を吐きながらアナトを見上げるエクステリナに、アナトは苦笑しているようだった。










 そんな休息もそれから7日後の朝には終わりを告げ、二人はアナトへと乗り込み、久能海将補をはじめとした整備員や基地職員に見守られて、再度カナダを目指す。


「俺等はこれからはアナト殿専門になったんで、何かあったらすぐにこの基地に帰って来てくれ。次からはベストな状態で出来る筈だ」


『整備長様、腰の貨物収納庫の改良、有難うございます。これなら戦闘中に気を配る事が減りそうです』


 アナトの腰回りにはガンベルトのような物が装備されていた。以前にペンシルバニアの住民達に作ってもらった収納庫は、ワイヤーで括り付けただけの物であったが、基地資材を活用して整備員達が改良し、最悪着脱も可能なようにしてくれたようだった。


「なぁに、完璧な整備をしてやれなかった詫びだ。気にせんでください」


 そうは言っているが、元の強度はなくとも今できる限りの完璧な整備をされ、アナトの左腕は何事もなく稼働していた。


「整備長さん!さすがは日本の技術力です!これならファイヤーバードの母体も一撃ですよ!」


 ウインクしながらウテナが答えると、整備長は照れて頭を掻いている。ウテナとしては、褒めちぎる事で先日の非礼を詫びた…と云う事なのであろうか。


「海将補殿!行って参ります!ウテナの事はお任せください」


 エクステリナが敬礼をすると、久能海将補も敬礼で応え、笑顔を送る。それに倣い、その場に居た全職員もまた敬礼をして、3人を見送った。


 空港から飛び立つと、暫くの間戦闘機2機が追随し、一応の護衛をしてくれた。そして、アメリカ大陸までの中間点辺りで旋回して行ったのだった。


 3人は手を振る。


 必ずファイヤーバードを倒して帰って来る事を誓いながら。

戦いの描写ばかりで疲れるので

こういう場面転換は重要ですね。


てか軍事…

特に自衛隊に詳しい人からはツッコミが入りまくりそうですが


「こことは違う別の地球」と思ってくださると嬉しいです。


※雑記

遂に石川先生の遺作であるゲッターロボアークが

2021年夏にアニメ化されるそうですね!

歓喜です!


未完である最終部分をどう纏めるのか

不安と期待でいっぱいです。

来年の夏が待ち遠しい!!

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