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第13話 ウテナ覚醒

 次にアナト達一行が目指したのは、カリフォルニア州及びメキシコ周辺で暴れ回る海洋の妖魔である。ネットの噂では蛸か烏賊の形をした妖魔で、船舶のみならず、海辺の街や基地も破壊の限りを尽くされたようであった。


「ワシントンなどの北部は、散発的にカナダを根城にする妖魔に襲われているようですね」


『ええ。彼等に国境なぞ関係ありませんからね』


 冷静に分析するエクステリナとアナトを脇目に、ウテナは少しむくれているようだった。何しろ数日とは言え先にアナトと知り合ったのは自分であるのに、後から来たエクステリナと仲良く談義しているのが気に食わないようであった。


「どうしたのです少尉?」


 エクステリナがウテナの様子に気付いて声をかけると、ウテナはわざとらしく頬を膨らませる。


「それですよそれ!エクステリナは、何故私を階級で呼ぶのです?」


「え?私はこの中では若輩なのでそのように…」


「若輩って!貴方は軍属だったのですよね?私なんかよりスペシャリストじゃないですか!私はSDF所属になってはいても一般市民だった身です。何を引け目に思うのかがわかりません!」


 ウテナの論点が、今一つエクステリナにはわからないらしく困った顔をしていると、優しい声音でアナトが告げた。


『エクステリナ、ウテナが言いたいのは我々は仲間なのだから、もっと砕けた態度で良い、と言いたいのだと思いますよ』


 微妙に違う気がする…しかしウテナは嫉妬心を隠して、うんうんと頷いている。


「なるほど…しかしこれは私のスタイルです。今しばらくは勘弁願いたい」

「スタイルはその巨乳だけで勘弁してほしいです…」


「なにか?」


「いえいえ」


 そう、ウテナの嫉妬心は、別の方向にも向いているらしかった。









「2時方向、妖魔らしき反応あり」

「『了解』」


 アナトはエクステリナの言葉に従い方向を変え、ウテナはレバーに力を籠める。何だかんだと言いながら、それぞれが役割を認識しチームとして一つの形に成りつつあるようだった。


「見えましたよ!あれが噂のイカデビル!!」

「少尉!勝手な名前を付けないでください!奴の俗称はデビルテンタクルスです!」

「似たようなネーミングじゃないですか」


 確かに。


 その姿はイカ…タコ?な外見の50mクラスの化け物が、海岸の街を襲っていた。触手の長さまでも加えると、どれほどの全長かは計り知れない。大きさから階級はポーンではなく、ルークかナイトクラスと推測出来る。





『邪神の尖兵よ!我こそは機鋼甲冑アナト!それ以上の狼藉は許しません!!』


 声高々に名乗るアナト。しかしイカデビ…デビルテンタクルスからの返事はない。


「喋れないタイプみたいですね。エクステリナ」

「と云う事は、ルーククラスでしょうか?」

『そんな感じがしますね』


 そんな会話をしながら、アナトは二つのエンジンの出力を上げていく。多少の不協和音を感じてエクステリナが耳を欹てる。


「アナト殿、この不協和音はなんでしょうか?」

『それは恐らくシンクロの乱れによるものです。えーと…ウテナ?集中してもらえませんか?』

「う…」


 どうやら未だにウテナは蟠っていたようだった。





 私の方が先輩なのになんでアナトとの仲があんなにいいのよ!とか

 私より大きいとかなんなのよ!とか

 てかあの乳、本当は作り物なんじゃないの!?等々…半分以上は体の事なので、そっとしておこう。





「わかりました!戦闘に集中しますー!」


 そうは言っても、隣りでプルンプルンする物体が恨めしいのか、シンクロ率は大幅に乱れている。集中しようとすればするほどにムカムカが治まらない様子であった。


『…仕方ありませんね。安全を考慮して、ハーフドライブで仕掛けます』


「了解」

「ら、らじゃ…」


 シンクロ率の低下した状態でのツインドライブは、エンジンの暴走を引き起こしかねない為に、アナトは各エンジンをハーフ状態で稼働させて戦う。


 長い触手を伸ばしてくるイカ…デビルテンタクルスの猛攻を大太刀で凌ぎつつ、飛行速度を上げる。音速にも満たない速度ではあるが、デビルテンタクルスの攻撃を避けるのには充分のようであった。


「裂光斬で一気にいきましょう!」

『現状のシンクロ率では無理です』

「少尉!集中してください!!」


 ブオオオオオ


 3人の会話が乱れ飛ぶ中、デビルテンタクルスはその隙を突いて、アナトの大太刀を触手で掴み取ってしまった。慌ててアナトは高空へと退避する。


「ご、ごめん!アナト!エクステリナ!」


「気にする必要はないですよ少尉。奴の動き自体は大したことありません」


 今にも泣きそうなウテナの横で、エクステリナが微笑む。


「しかし!」




『大丈夫です。武器ならまだあります。私の腿にあたる付近にヒートダガーが何本かあります。向こうの世界の貴女が好んだ武器です』


「ヒートダガー!?」


『ええ。向こうの世界の貴女は「苦無(くない)」と呼んでいました』


 異世界の自身の同位体が好んだ武器…ウテナがそれをタッチパネルからセレクトすると、アナトは両手にヒートダガー…苦無を握った。


『本来この戦闘スタイルは私の妹…イザナミのものなのですが、ウテナ、貴女となら…やれます!』


 そう告げると、アナトは左手の苦無を逆手に持ち替え、右手の苦無を天に向かって突き出した。




『ふふふ…ウテナ。ようやく集中出来たようですね』


「ええ。何故だかこの武器に持ち替えたら、何だかやる気が出てきましたよ」


「ふふ…少尉、それでは本領発揮といきましょう」


「言われるまでもないです!雷遁の術!!」





 苦無にアナトが持ち替えた途端に、異世界の自身が乗り移ったかのようにウテナは操作を始めていた。そして雷遁によって生じた雷が苦無に接すると、苦無は雷撃を帯びて光りだす。


 更には、次々と雷撃がデビルテンタクルスへと降り注いだのであった。




「イカ焼きがいいですか?それともイカ天?…でも貴方には…黒焦げがお似合いですね!!」




 ウテナの叫び声と共に、アナトがデビルテンタクルスに向かって雷撃を帯びたまま、一気に急降下をする。それは一筋の(いかずち)のようであった。




 グシャ




 辺り一面にデビルテンタクルスの臓腑と血…そして黒い墨が飛び散った。


 大太刀を握りしめていた触手は握る力を失い、カランカランと音を立てて大太刀が地面を転がる。




 気付けば紅の機械天使が、墨によって真っ黒く染まっていた。


 やがて、完全に動作を停止したデビルテンタクルスは港風に吹かれると、塵となって霧散したのであった。






 異世界の同位体とのシンクロ…ウテナはその力によって勝利したのであった。


ウテナの覚醒である。

覚醒はしましたが

まだニンジャスキル止まりです。

ニンジャマスターは更に先の展開をお待ちください。

m(_ _)m

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