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第11話 エクステリナ

 長い茶色髪のアメリカ軍女性士官、エクステリナ・アンダーソン中尉は、部隊全滅後、住民達と共に妖魔からの逃避行を続けていた。オクラホマからテキサスまで逃げ延びた彼女達にも、その死の影は容赦なく近付く。


 ぐぉるるるるらぁああ


 人肉を喰らう、コヨーテのような姿をした妖魔デスイーター。全高20m前後、全長で云えば100mを越える巨大なコヨーテが、血肉を求めて咆哮する。


「皆さん、決して焦ってはいけません。今はこの教会で奴が行き過ぎるのを待ちましょう」


 笑顔で住民達を諭すエクステリナであったが、彼女自身も震えそうになる自身の体を、押さえつけるようにしていた。


 アーミーショップから拝借した火器が手元にはある。…しかしそのどれもが通じる相手ではない事は、連日の逃避行で痛いほど思い知っていた。ただ救いとなったのは、鼻の利きそうなコヨーテの妖魔が、何故か教会に隠れると自分達の行方がわからなくなり、遠ざかってくれると云う事であった。


 そして今もこうして彼女達は、教会の中で息を殺して潜んでいたのだった。


 あと数分も潜んでいれば、諦めてどこかへ行ってくれよう…そんな風にエクステリナが気を緩めた時に、それは起こった。




「ラズベリー!待って!まだお外には妖魔が!!」


 小さな女の子の手を離れ、子犬が外へと駆け出すと、その飼い主である少女も駆け出してしまったのである。その臭いを嗅ぎつけた妖魔がニイっと笑う。


『これはこれは美味しそうな匂いだ。人間の幼生であるな?』


 闇の底から響くような声に、少女は身動きができなくなったようで、両の目に涙を溜めて『あうあう』と呻いている。エクステリナは一瞬の躊躇をするが、銃を両手に持って走り出していた。


 右手にM4カービン、左手にはM19コンバット・マグナムを携えた彼女はカービンを連射した後にコンバット・マグナムに持ち替え、弾の続く限り撃ち続けた。その間に少女の父親が、少女を抱き上げ、教会に向かって駆け抜ける。


『小賢しい。貴様らの武器なぞ、目くらましにしかならぬぞ』


「目くらましで充分です!貴方から一人でも多くの人が逃げ仰せられるのなら!」


 エクステリナは覚悟を決めてデスイーターを睨み付ける。そんな彼女の睨みを、コヨーテは鼻で笑う。


『ふふん。幼生は食い損ねたが、女、お前は逃がさんぞ』


 牙を剥き、立ち上がるような恰好になったデスイーターがエクステリナに狙いを定めた。「ここまでか!」唇を噛みながらエクステリナが天を見上げると…





『妖魔よ、これ以上この大地にお前をのさばらせはしません!!』





 虹色の光を瞬かせた紅の機械天使が、白い翼を広げて天から舞い降りて来たのであった。


「機械天使…?…アナ…ト…様?」


 ネットの影響ですっかりアナトは有名であるらしい。そのエクステリナの呟きに、アナトは顔を向けると、思わず異世界の某騎士団長に接する時のような対応をとってしまった。


『エクステリナ殿ご無事ですか!すぐに収容いたします』


 エクステリナは「え?」と固まっているようだったが、差し出されたアナトの右手に、エクステリナは流れに任せるかのように飛び乗っていた。


「お知り合いなのですか?アナト?」


 ウテナがあまりに自然なアナトの対応に首を傾げている。


『え…あ、いえ。知り合いに似ていたものでつい…』


「そういえば…私との対面の時も、何処か驚いておいででしたね?」


 二人が会話している間に、エクステリナは促されるままに第二操縦席に滑り込んでいた。


『わけは…この戦いを終えてからとしましょう』


 そう告げると、アナトはコヨーテ…デスイーターを睨み付けるかのように身構える。そして腰の大太刀に手をかけると、スラリと鞘から引き抜いた。


『エクステリナ殿からも魔力…いえ、ESP波が感知されました。これならウテナ、貴女の負担を減らせます。』


「え!?この中尉さんもエスパーなんですか?」


 ウテナはエクステリナの襟章を指差しながら驚いている。そんなウテナの態度にエクステリナが不機嫌な表情を見せていた。そしてウテナの襟の階級章を一瞥しながらエクステリナはウテナに抗議する。


「貴様こそSDF海軍特別少尉であろう?私がESPを所持している事に、何か不満か!?」


 SDF海軍特別少尉…自衛隊3等特別海尉の事を、米軍の階級に当て嵌めて彼女は言ったようである。ウテナの階級は『特別』が付いているので、二人の階級は同等のようであるのか、少尉に中尉様が指を差された事に怒っているいるわけではなく、人として、指を差されて物を言われた事に腹を立てているようだった。


『お二人共、いがみ合わずにお願いします。兎に角エクステリナ殿、貴女の力をお借りします。構いませんね?』


「勿論だ!奴に一泡吹かせられるのなら望むところです!!」


 その言葉を聞くと、アナトはすぐに魔力分配値を均等にして二人からの魔力…ESP波を吸収し同調させる。


『ウテナは各種武器のトリガーを、エクステリナ殿は管制をお願いします』


「「了解!!」」





『さて、お待たせいたしましたね。わざわざ準備が出来るのを待って頂けて恐縮です。』


 アナトがデスイーターに語りかけるとデスイーターは鼻で笑うように答える。


『ふん。ナイトであるこの私が、対等に戦える相手を前に不意打ちなぞ出来るものか。その力、存分に見せるがいい。正面から打ち砕いてやるわ!』


 そうデスイーターは叫ぶと、人のように2足で立ち上がり、自身の毛を数本毟り、それを剣のような形状へと変えた。その立ち上がった全高は60mはあろうか?3~40mもある尻尾をブンブンと唸るように振っている。


「お、大きい!?」

「こやつ!人型にもなれるのか!?」


 ウテナとエクステリナが動揺しているようだったが、アナトは冷静であるようだった。


『お二人共、大きさで判断せぬように。私は嘗て全長200m級の魔物達とも戦っています。呑まれれば負けですよ』


『さすが使徒であるな。よく(いくさ)と云うものを判っている。いざ尋常に勝負だ!!』


 体高4倍差の相手を前にして、怖じ気る事もなくアナトは太刀を構えて、ゆっくりと前に進み出る。ポーン、ルークと云った相手を倒して来たアナトは、新たにまみえたナイト級を相手に、虹色のオーラを発動させるのであった。

ようやく段取り女王の登場です。

サクヤの方が先だと思ってた人…残念!

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