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第9話 絆

 妖魔ロックゴーレムは、なんと…ロックオン・ゴーレムだった。


 嵐のような砲撃は正確で、アナトも後退せざるを得ない状況である。


『止まっていれば撃たれます。動き回るしかないようですが…』


「アナトさん、あれは?降臨なさった時に使った、ブラックホールのような…」


『グラビティー・ウォールですか?しかしあれは魔力を食います。今のウテナさんでは…』


 そう言い掛けて、アナトはウテナのセリフを思い出す。


『イチバチ』


「そうです。イチバチです!負ければ未来のない戦いです。やれるだけの事はやりましょう!」


 確かにこのまま避け続ける事は難しい。いつかは捉まる。そんな状況である。新たな一石を投じる必要があるのだ。




『判りました。貴女があの方の同位体であるのなら可能でしょう。私も覚悟を決めます』



 アナトはそう告げると、魔導エンジンを加速させる。そして次元エンジンを同調させる。更には背部のバックパック内では、魔力増幅装置をフルドライブさせているようだった。


『貴女の魔力…いえ、ESP波をお借りします!!』

「どんとこーい!」





 アナトが両腕をクロスさせると、黒い渦がその目の前に発生する。そして立ち止まり、ロックゴーレムの砲弾を受け止める。


『いけます!』

「さすが機械天使!」


 陽気に合いの手を入れているウテナではあるが、その額には汗が滲み出ていた。集中していないと常にグラビティー・ウォールを張り続ける事が適わない。それ故に目を閉じ、アナトがグラビティー・ウォールを発生させた時と同じように、腕をクロスして身構えている。


 アナトはグラビティー・ウォールを前面に晒しながら、一気にロックゴーレムの至近へと飛翔した。その間にロックゴーレムの攻撃も、再びバルカン砲へと移行する。


 ドルルルルルル


 凄まじい射撃音が唸っている。しかし、アナトは引かずに前へと進んで行った。


「アナトさんごめん!1本目いきまーす!」


 ウテナがマナドリンクに手を伸ばす。ただでさえ白いウテナの肌は、既に蒼白であった。そして、マナドリンクの封を開けると一気に飲み干す。


「キタコレー!まだ踏ん張れますよ!」


 アナトは勝負を急がなければ不味いと、更に前へと進む。一時的にウテナの顔色には赤みがさしてはいるが、これが続けば先程の顔色を見る限り命にも係わりそうであった。


 また、次々とロックゴーレムの砲撃を吸い込むグラビティー・ウォールにも、限界はある。内包できる許容量を越えれば、グラビティー・ウォール自体が霧散してしまうのだ。


『…ウテナさん。先にもう1本飲んでおいてください』


 アナトの意外な台詞に、ウテナが少し驚く。マナドリンクの用量に気を付けろと散々言っていたのはアナトであったのに、今は逆に飲めと言う。


「勝負に出るのですね?」


 額に幾つもの汗を流しながら、ウテナは口角を上げる。


『本来は勇者や剣聖のスキルである技を使います。この世界に勇者として招かれた私になら、搭乗者が勇者でなくとも使えるはずです。ただし―』


「相当な精神エネルギーを食う、と云うことですね?」


 アナトの言葉を待たずして、ウテナは二ヤリとしながら言葉を返す。その表情に、アナトは女神を想う。まるであの方が乗り移ったかのようだと。


「ねえ…ところでもう、『さん付け』もやめましょうよ。私達は相棒なんですよね?何も改まる事なんてない。そう思いませんか?」


 暫しの沈黙の後に、アナトは静かに答える。


『そうですね。ウテナ。』

「ええ!行きましょう!アナト!!」


 ウテナはそう言うと、一気にペダルを踏み込む。アナトもそれに応えるように虹色の泡沫を背中の翼から溢れさせ、あと500mほどに近づいていた距離を詰める。虹色の光はやがてアナトの全身を包んでいった。




 ―ツインドライブ―




 今、次元エンジンと魔導エンジンは最高潮に達し、フルドライブをしていた。そして、今まで以上の絆を二人が認識する事によって、シンクロ率が上昇しアナトの姿を、虹纏う天使と見紛う姿へと変えた。


 虹色の光に包まれたアナトは、グラビティー・ウォールを前面に展開したままロックゴーレムに対し、大太刀の間合いにまで詰め寄った。


『『さあ!光へと帰りなさい!邪悪なる者よ!!!』』


 二人の意思が一つになり、虹色の光を纏った大太刀が、光の波動を発しながらロックゴーレムを寸断する。


 それは、かの世界で勇者と剣聖のみが振るえる最強剣技の一つであった。


 名を裂光斬。光の属性を刃に籠めて打ち放つ、邪なる者達が最も恐れる剣技。その剣に、断てぬモノなし。




 しかし、裂光斬を受けたロックゴーレムは真っ二つになりながら、最期の足掻きをする。胸部からミサイルを零距離で放ったのだ。そして両者は爆風の中に包まれる。アナトはその瞬間に、虹色の波動を更に強めていた。







 そこは嘗ては森林地帯であったはずの場所であった。しかし今は地面が剥き出しとなった荒野と成り果てていた。


 荒野に風が舞う。その風は虹色の泡沫を空高く舞い上げていた。


 荒野の只中…クレーターとなった大地の真ん中に、虹色の天使が立ち尽くしていた。その天使は、空を見上げたまま動かない。


 機鋼甲冑…いや、機械天使アナトは持てる力の全てを出し切ったようで、ただ茫然と立ち尽くしているようだった。コックピットの中のウテナもガックリと伏してしまっていた。


 だが、その表情には笑みが見られた。表情のない筈のアナトもまた、笑っているようだった。

にゃんか…

リンドバウム本編の頃よりも真面目に戦闘シーンを描いているので

書き終わるとドッと疲れます。

今回の二人みたいに。

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