プロローグ
『女王様、お離れ下さい』
「何を言う!お前は我が王家が秘宝であり、我が王家を見守って来た守り神だ!見離すわけにはいかん!!」
フィイイイイイイ
漆黒の中、魔導エンジンと次元エンジンの発する音が響く。そしてその闇の中、その音に掻き消されそうになりながらも叫ぶ声が聞こえる。
『私の役目は、この大戦の終結と共に終わったのです。既に次元エンジンの暴走は制御出来ない状態にあります。女王様にはまだこの星の為に成さねばならない事がおありのはずです。ですから…』
15m程の人型の機械から発せられる音声は、女王と呼ばれる人物よりも遥かに静かな言葉を紡いでいた。
「待て!待ってくれ!アナト!光の精霊よ!!」
精霊宿りし人型の機械…機鋼甲冑アナトは、女王を射出すると静かに次元の深淵へと沈んで行ったのであった。
「アナトーーーーーーーー!!!」
ラウズ歴22020年
大戦の終結の際に行われた式典の最中、突然の次元エンジンの暴走によって、アナトは次元の彼方に消え去った。その後の彼女の足跡を知る者は、ラウズ大陸に於いてはいない。
『アナト…聞こえるか?アナト…』
アナトにとっては、嘗て聞きなれていた懐かしい声が聞こえる。
『アナト…すまんな…』
―マスター…何故謝るのですか?謝らないでください…。貴方の悲しい顔を見ると、私も苦しくなります…。
アナトの前には光り輝く物体が、人の形を成して瞬いていた。その光の塊に、アナトは悲しげな表情を見ているようであった。
『我が9女と引き離してしまった事、本当にすまん…だが…次元力エンジンを持つお前にしか、恐らく出来ぬ頼みごとがあるのだ…』
―マスター…私は貴方によって形作られた機械神です。貴方様の望みであれば、どのような事も喜んで…。
『…ありがとう。では、用件を伝えよう』
嘗てその光の物体が人であった頃、彼は生まれた世界から転生して、アナトの生まれた世界の王となった。そしてその世界に平和をもたらしたのである。
しかし―
『本来我は転移する筈であったのだが…お前も知るとおり魔神によって体を失った。それ故に我と同質の存在であった王の体を借りたのだが…その後、死した後に昇神した事によって、双方の世界のバランスが崩れてしまったのだ』
本来戻るべきであった魂が抜け落ちた世界…それによって時空、次元に負荷が掛かってしまったようであった。その為、彼の元の世界は僅かながら崩壊を始め、異形の者達…邪神が攻め寄せたとの事である。
『この役目は我が9女でも良かったのだが、あれには惑星ソラスを平定してもらわねばならぬ…そこで我らが最高神とその世界の最高神とが選んだのが…アナトよ、君だ』
―マスター、わかりました。貴方様の故郷の事、確かに承りました。
『…すまぬな。あちらにはお前の知る者達が居る。向こうはお前の事を知らぬのだが…その懐かしき者達と共に、我が故郷を頼んだぞ…』
―はい。必ず…。
『タイムシフトは…我があの世界から消えてから10年後…2030年だ。その頃に邪神の尖兵達が暴れている。尖兵程度なら次元力エンジンのみで充分に戦えるはずだ。ただ…あの世界はマナが少ない故に魔導力エンジンが動くかどうかが判らぬ。なるべく早めにパートナーを見つけ出すんだ。そうすれば魔導力エンジンも使えよう』
―はい。仰せのままに。
次元の境界が近づいた時、光の塊は制止し手を振る。
『我が見送れるのはここまでだ。我が娘にして我が妻よ。時の狭間にてまた会おう』
―またの邂逅の時まで…愛しの、マイ・マスター…
リンドバウム王国記で描いた機鋼甲冑なる
戦闘用巨大ロボットを主役に
新たに物語を創造してみようと
おっぱじめました。
ユーヤのいなくなった世界を救うと云う使命を帯びて
彼女は立ち上がります。
…てか、ロボットが主役って…私の力量で描けるのだろうか?(汗)
ものすごーく不安。
続かなかったらごめんなさい。m(_ _)m