仇の顔とライラーズ
6人が食事を始めると2人の男子の声が聞こえる
「「岸雄!我らが弟よ!」」
大きな声にびっくりして周りも彼らを見る
どことなく岸雄に似た双子とその後ろの女性を見て、
美羽と千李は目を見張った。
くゆる長い漆黒の髪、妖艶な顔、ゆったりとしたしぐさ、ただ一つ違うのは虹色ではなく
赤とオレンジ、黄色のグラデーションの目
けれどその見た目は見間違えようもない仇の顏、李薇その人だった。
でも若いどう見ても自分達とそんなに変わらない年齢だ、
その女子が口を開く
「あーぁ岸雄!素晴らしかった!流石は我らが弟よ!君の真の実力を発揮させることのできる友人を君が作れるなんて!なんと幸運なことか!!
しかもそんなにたくさんの友人が!臆病たんの岸雄が沢山の友達とすごい著名人の友達を作るなんて!!」
女子がわざと大げさにおんおん泣いたふりをすると
岸雄はあわあわと慌てだす、その左右に双子が来た。
「ああうれしや!うれしや!我々はなんと幸福でしょうか!!」
「やめてよ瑙虹」
右の双子が片手を掲げて片手を胸元で握りながら言う
岸雄は止めながら顏を真っ赤にして縮こまる
「我々の弟が最高の友を見つけるとは!」
「瑙銀やめてって」
左の双子が目頭を押さえながら上を向く
瑙銀に道を塞がれながら、岸雄はぷるぷる震えて逃げだそうと床に潜ろうとするが
女子の呪文で防がれ、逃げ場を失う
「これは祝わなければいけない!そうだろう?瑙銀、瑙虹?」
女子が岸雄の後ろに立って岸雄の肩を抑える
そして、女子と瑙虹、瑙銀は岸雄を取り囲んでバラバラに歌いだした。
おおー弟よー、やら、なんという日でしょー、やら、ちぐはぐな合唱が食堂に響くのを
みんな笑いながら聞いている、はいはい、よっ、いいね!なんてチグハグな掛け声も聞こえる始末だ
そして、3人が目くばせをして思い思いの言葉で歌を終わらせると、小さな花火が上がった。
その花火にはおめでとうと書かれていた。
周りからは拍手喝采や口笛、アンコールの声まで聞こえる
3人はそれに対してありがと!ありがとう!と恭しく頭を下げる。
岸雄は恥ずかしさで机に突っ伏してしまった。
女子はそれを見て岸雄の頭をなでながら瑙虹、瑙銀に行った。
「お前たち、がーがーはお気に召さなかったらしいよ」
そう言われて瑙虹が岸雄を見る
「あれま、小さくなっちまって!」
瑙銀が岸雄をつつきながら言う
「ガーガーちゃんそんなに縮むな!
ライラックがワタッコをたっぷりとってきてくれたんだぜ?」
それを聞いて、岸雄は目を輝かせて起き上がった。
それをみて女子、ライラックが、懐から大きめの便をとりだす
「人見知りの臆病虫ちゃんが入学初日に友達作ったんだから
ご褒美くらい御茶の子さいさいよ!たーんとお食べ!」
ライラックと言われた女子の出した瓶にはもぞもぞ動く白いふわふわしたものが入っている、良く見ると小さな黒い点がキョロキョロ動いてる
「わぁ!こ、こんなにたくさん!あ、あり、ありがとうライラ!」
岸雄は嬉しそうにそれを受け取った。
そして、瓶を慎重に開けて一つとりだしてすぐ閉めた。
もぞもぞ動くそのワタッコと言われる物を岸雄は嬉しそうに食べた。
それをライラックは満足そうに見てから千李達を見る
「うんうん、いい食べっぷりだ、さて、祝うことばかりで自己紹介してないね
ライラーズ隊長、ライラック・フェントン華無生まれの鳳凰寮、人は私をライラと呼ぶ!
ライラーズレッド!」
ライラックがそう言ってポーズをとる
そしてその横に瑙銀が来る
「ライラーズ隊員、劉瑙銀、覚のクオーターの青龍寮!人は俺を双子の兄の方と呼ぶ
ライラーズイエロー!」
瑙銀がポーズをすると次は瑙虹がライラックの隣に並ぶ
「ライラーズ隊員、劉瑙虹、同じく覚のクオーターの青龍寮!人は俺を双子の弟の方と呼ぶ!ライラーズブルー!」
瑙虹がそう言うと3人共千李達の方を見て口を開く
「「「3人合わせて、イタズラ戦隊ライラーズ!!」」」
3人がポーズをとるとまた周りがはやし立てた。
3人は苦しゅうないとか言ってその声に反応する
落ち着いた時、ライラックが千李達に向かって言う
「まぁ気軽にライラってよんでよ、で?君達の名前は?我らの岸雄の友人は知っておきたいからね!」
そう言われて近くにいた影姫から自己紹介をし出した。
「私は沢影姫です、青龍寮に所属してます、よろしくお願いします」
「私は須館美羽です、青龍寮です、楽しそうな先輩がいてよかったですよろしくお願いします」
「私は綾癒澄です、玄武寮です、ライラさんとっても美人ですね!よろしくお願いします!」
「僕は清千李、同じく玄武寮ですよろしくお願いします」
「俺は文月真望です!日本人の華無生まれです!華無の星と成るよう切磋琢磨しています!よろしくお願いします!」
ライラックは真望の言葉を聞いてニヤッとする
「お、威勢がいいのがいるねぇ!いいよぉ私そう言うの好きよぉ、なぁ野郎ども」
そう言われて瑙虹と瑙銀がライラックの隣でライラックを称えるようなポーズをとる
「外人でハーフの華無生まれ」
「そして鳳凰寮の我が学年一の天才児」
「「この人こそ華無の星!金帯のライラック様と言えばこの人だ!」」
どこから出したのかライラックがモフモフの扇子で自分を仰ぎながら真望に手を向ける
「私を超えられるかね少年」
そう言われて真望はきりっとした顔で言った。
「なんと!目の前の壁は高いようだ!だが高ければ高いほど越がいがあるとういもの!
必ず越えさせていただきます!」
ライラックがニヤッと笑った。
「いいねぇ、威勢がいいねぇ、好きよ、そう言うの、待ってるぜ、金の上でな」
「はい!」
二人の間に謎の友情が生まれたようだった。
そこに美羽が切り込んだ
「すいません、ライラさんはご家族に李薇と言う女性はいませんか?」
騒がしかった周りの生徒もその名前を聞いて静かになる、
岸雄は食べようとしていたワタッコを離してしまい、ワタッコはたちまちヒュンと飛んで行った。
ライラックはあーと言いながら頭をかいた。
「そりゃ私のおばさんだ、母さんの姉だよ、
そういや叙樹さんは李薇おばさんに殺されたんだったね
それでかな、そりゃ私はあの人にそっくりよ私は、母さんそっくりだもの」
ライラックの言葉に千李は首をひねる
「なんで貴方の母親にそっくりなのにあなたは李薇にもそっくりなの?」
千李の言葉を聞いてライラックは、ふむと、何かわかったような顔をした。
「私の母さんとあの人は双子だったからね、そっくりなのは当たり前、
貴方たちは本州で華無見たいに過ごしてるって聞いたけど、周りの大人は
何にも教えてないみたいだな、いいか?あの人、虹の女帝と魔王の名前だけは
気軽にだしちゃだ、特に虹の女帝なんて今もまだどこかで息をひそめてるから
名前を聞くだけでみんな恐怖で縮み上がってるだろ?」
ライラックは厳しい口調で言った。
周りはシーンとしていて、千李と美羽は、周りを見て悪いことをしてしまったと
罰の悪い顏をした。
するとライラックが「あぁ」と言って顏を手で覆ってうつむく
「あぁ!私があんまりにもあの人に似てるから!こんな悲劇が続くのね!
どうせなら虹色の目も似てしまえばよかったのに!
そうしたら!千珠先生に河童の相撲ダンスをさせてあげられるのに!」
ライラックがまた大げさにおいおい無くふりをすると周りがくすくす笑う
「あぁライラ!泣かないで!僕らの姫!それ!」
瑙銀が手を叩く
「あぁ顔を上げてライラ!僕らの姫!いつもの笑顔を!それそれ!」
瑙虹がそう言って手を叩き手拍子すると周りもそれに合わせて手拍子しだした。
それに合わせてライラックはだんだん顔を上げていき、
厳しい顏で相撲をとるようなジェスチャーの踊りをしだして、周りはどっと笑いだした。
「ひー!ライラックなんだいその踊り!」
瑙虹は腹を抱えて笑ってる
「はー!ライラ!君は最高だ!」
瑙銀も腹を抱えながらライラックに言う
「お前たち、これが河童の相撲ダンスだ!
とっても神聖な踊りだよ!河童の前で踊ればウケること間違いなしだ!」
瑙虹は立ち上がる
「それはいい!さっそく河童に見せに行こうぜ!」
瑙銀が考えるポーズをして言う
「俺の情報が正しければ、河童たちは例年通り入学式が終わったらさっさと翠藻湖に戻ったらしい」
それに対してライラックが答える
「素晴らしい情報だ瑙銀、そうと決まれば」
3人は目くばせをする
「「「レッツ翠藻湖!」」」
そう言って3人は走って出口に向かう
「あ!お前たち!河童の近くに行って尻子玉抜かれたらどうする!まちなさい!」
凱臥がどなって3人を追いかけて行った。
パーティーが終わって寮に戻る時にも凱臥は帰ってこなくて千李達は副寮長に付いて帰って行く途中、玄関で見たのは尻子玉を抜かれてふにゃふにゃになって、担架で運ばれる凱臥だった。
ライラーズの3人はぼやーとなってへにゃへにゃの凱臥のマネをして元気に笑っていた。