先生と作者
入学式翌日、容赦ない授業と宿題に辟易していたが、昼休み前に小褄唎の授業で、千李は、さすがに復帰してすぐに宿題はないだろうと高を括っていた。
「さて授業はここまで、皆さんにはご迷惑をおかけしましたので宿題は」
ほら、無いんだと千李は去年のおさらいだけだった授業につかれながらも胸をなでおろす
「参考集の5ページ目までの予習だけといたします」
「え」
思わず漏らした声に小褄唎がにっこりと笑う
「ちゃんとした宿題が出せなくてごめんなさい明日はちゃんと問題集を作ってきます、ではこれで授業を終了いたします」
にっこりと笑う小褄唎に顔が引きつりながらも千李は乾いた笑いを出すのだった。
ちょうどチャイムが鳴って授業が終わり
千李達は小褄唎に駆け寄る
「先生、大丈夫ですか?」
美羽に問われて寂しそうに小褄唎は笑う
「あばた方には私の家族の事で迷惑かけたわねぇ、ごめんなさい、
娘には会わない様にしていたのだけど、どこで私の孫だとばれたのか
襲われて利用されるなんて思わなかったわぁ、
馬堅君を人間の姿に戻してくれてありがとうねぇ、
夜一さんが迎えに来てくださったんでしょう?」
寂しそうに笑う小褄唎に思わず千李は聞く
「先生はなんで夜一さんと一緒に暮らさなかったの?」
「ちょっと千李!」
ぽこっと美羽に千李は殴られ、まずいことを聞いたと思った。
「いいのよ、美羽さん」
ぽんぽんと美羽の肩を叩いてなだめる小褄唎
「私はね、この仕事を続けたかったの、最初は彼と隠れ家で過ごしていたわ
けど、私が内心働きたがっていることに気が付いた夜一さんがね、隠れ家を出なさいって言ってくれたのよ、代わりに娘が学園に通うまで会うことはできないけれどと言われてね、苦渋の決断だったわぁ」
思い出す顔は辛そうで、でも今の結果を見れば何を選択したのかなんて明白で
「結局、二人を捨てたんですか?」
「千李!!!!」
美羽に怒られるが、その決断はあまりにも酷いと、孤児として育った千李は思う
「いいのよ、責められて当然だわぁ、自分の子も育てられない女が教師なんて笑える話よね、でも仕事をしていない私は夜一さんからしたら見るに堪えないくらい辛そうだったらしいの、自分の父は母の為に一人を選んだのだから僕もそのくらい選べると言ってくださった。だから私は隠れ家を出て、祝い事の時だけ娘にプレゼントを贈るだけの関係になっていたの、今も親子関係は隠していたわ、娘がそれを望んでいたからなのに馬堅君があんなことになって、どうして私たちをほっておいてくれなかったのかねぇ」
小褄唎は実の子供を失って泣き崩れる娘を思い出す、しかもその原因は自分が乗っ取られたから、なんて酷い母親だろうかと小褄唎は自分を責める
「先生のせいじゃありません!!娘さんを選べなかったのは残念だけど、
離れていても愛していらっしゃったんでしょう?それを利用した虹の女帝が悪いんです
先生は自分を責めないで、愛するためには離れないといけないこともあったってだけです」
美羽の言葉に小褄唎は目を見張って顔をくしゃっと歪める
「ありがとう、美羽さん」
その後、千李達は先生と別れて放課後、栞のもとに6人で向かった。
神華学園は左右の校舎が後ろに鳥が飛び立つ時の羽のように伸びていて運動場を囲っていることから右翼左翼という
その右翼の先にそびえ立つ塔を登って行き扉を叩く
「入ってー」
幼い子供のような声が聞こえて中に入ると
沢山の書類や水晶の山の中に3人の人と久瑠祢音弧が居るがそこに栞は見えない
「やっほー金の卵」
「栞ちゃんは上だよ」
からかう音弧を無視して、
さっき聞こえた幼女のような声はカタカタとパソコンを打ち込んでいる少女だった
少女に言われてあたりを見渡すとこっちだよーと聞こえて、そこを見るとハシゴがある
千李がそこを上ると何かを走り書きしている手紙の映像で見た栞が居る
「ちょっと待ってねぇ」
ワクワクとしながら走り書きしている栞を、待ちながら、ハシゴで上がってくる美羽を引き上げる
他のメンツも上がってきたところで栞はこっちを見る
「初めまして、私が6人の金の卵のプロット作者だ」
尊大な態度で椅子にもたれながら栞が言うのだった。
「いやぁ、君達のおかげで結構もうけが出てね、ありがたい限りだよぉ!だからお礼と言っては何だけど、印税の3割上げるからさ、みんなで使って!」
そう言って栞はバン、とトランクを出す
その中にはお札がずっしりと詰まっている
「そんな事より言うことあると思います!」
美羽はお金に目もくれず、栞に怒鳴る
「あーそれ聞いてたよ、わざと今日ずっと私の事を怒ってたでしょ、でもわかんないなぁ評判いいし、お金もあげるって言ってるのにさぁ」
「そういうことじゃないんです!!勝手に私たちを題材にしてお金儲けしてるから怒ってるんです!!
普通一言いいませんか!?」
それに栞がめんどくさそうに言った、
「6人全員が許可くれないでしょ、特に岸雄くんとか絶対嫌がったでしょ?でしょ?」
岸雄は矛先が向けられて少したじろぐ
「それは、まぁあんまり嬉しくないけど」
「ほらね、あ、それとも元から人気だからうっとおしくなった?わかんないなぁファンが増えるっていいことだと思うけど」
「問題はそこじゃありません!!」
「ん?」
栞が首をかしげて美羽を見る
「恋愛面での過剰表現です!!」
「えー過剰じゃなくない?」
「過剰ですよ!!!」
美羽は出されたトランクを叩く
「岸雄君と深瑠先輩と影姫ちゃんはそのままでしたけど、私と千李や真望君と癒澄ちゃんとかは言った覚えも聞いた覚えもない変なこと言わせて、き、キスとか!!この小説のせいで私と千李はバカップルだと思われているんですよ!!」
なるほどと、栞は手を打つ
「マジで恋する心が見えてないんだ」
「何の話ですか?」
美羽が怪訝な顔をするものだから全員から千李は見られ、初対面の栞にまで哀れな目で見られる
「あの!話はまだは、終わっていないんですけど!!」
美羽はそんな事気にせずに栞に詰め寄る
千李はこれ以上ダメージをくらわない様に、美羽をなだめる
「美羽、僕はきにしてないから」
すると美羽がむっとした顔をする
「でも私たちはあんな変な会話しないのに、私とバカップルみたいに思われて迷惑じゃない?千李は昔から私と居るせいで変な誤解されて仲良くできるのは私達どうしだけだったのに、今度は恋人だなんて!!」
美羽はとても怒っている、ずっと自分のせいで千李に友達ができなかったと思っていた美羽それを感じて千李は笑う
「美羽本当に大丈夫だから、君のせいで友達ができなかったんじゃないよ、だって僕らは入学前に岸雄達に出会えてみんなと仲良くなれたろう?君の事気にしなくて僕を対等に扱ってくれる人達、そんな人達が今までいなかっただけだよ、なら僕は小学校で友達出来なくてもよかったんだよ、だって僕は美羽と一緒にいたかったんだから」
それでも納得しない美羽
「でも恋人何なんて勘違いされたら迷惑でしょう?本当に好きな人ができた時困るじゃない」
「そ、それは!!」
美羽の心配を理解して自分の言葉の伝わらなさに悲しくなる
だが、今の関係が壊れるのが怖くてアピールできないでいるのも事実、彼女が気づかないわけである
今言うべきだ、そうだ、少しでも意識してもらうべきなんだ
「僕は」
言わなければいけない、ずっと君が好きだってそう思うと顔が熱くなる
「千李??どうしたの」
不安げな美羽を安心させなければいけない
「僕・・・・・は・・・・」
緊張が高鳴る言わなきゃ言わなきゃ
「千李?」
美羽の顔見て思わず言葉が漏れる
「噂を信じて本当の事が見えない人と付き合うより良いんじゃないかな」
それを聞いて美羽は考える
「それもそうね、ちゃんと千李をてくれる人でなきゃダメよね、でも無断でこういうことしないでください栞さん」
千李の言葉に納得して美羽は栞を軽くとがめるだけにした。
「うん、ヘタレなことはわかったよ」
「なんの話ですか??」
周りを見ればみんな何かに落胆していて、千李は体育座りで角の方に丸くなってぶつぶつ言っている
癒澄と影姫だけがクスクスと笑っていたのだった




