変化と思い
翌日、真望と千李は早起きして岸雄を叩き起こし、3人で朝風呂をしたら着替えて岸雄を椅子に座らせる
「え、な、なに?」
「ふっふっふ、俺の手で君を完璧にしよう岸雄君」
「これでもコテ使い美味いんだよ!まかせてよ!」
「え、いや僕は・・・・」
「「レッツヘアセット!!」」
そうして3人の朝は慌ただしくすぎて行った。
1年1組に美羽、癒澄、影姫は早めに着いていた
「えいちゃ大丈夫?」
「えぇ大丈夫よ、気にしないで」
元気のない影姫を見て2人は困ったように見る
影姫は深く何かを考えているようでそれを邪魔しないように見守ることしかできないのだ
「やぁ諸君すがすがしい朝だねぇ!!!」
そこに空気を壊すような真望の声が聞こえる
「ほら岸雄壁から出ようよ」
千李が壁から出ている制服の裾をつかんでるきっと岸雄だろう
「だだだだってこんな頭恥ずかしいよ」
岸雄は一生懸命でないように、引っ張ってくる千李に抵抗する
「大丈夫だって、出ておいでよ」
全然出てこようとしない岸雄
癒澄と美羽が何事かと駆け寄ってくる
「がーがーどうしたの?」
「千李、岸雄になにしたの?」
二人に向かって真望と千李は自慢げに胸を張る
「岸雄の髪を思いきっりきって僕らでヘアセットしたんだ!」
「岸雄君は素晴らしい宝石さ! 僕らのスタイリングで僕と並ぶイケメンになったよ!」
真望と千李は早く作品を自慢したいアーティストの様、本当にいい出来になったようだ
「すっごく自信があるんだね真もりん!」
「千李も真望君のかっこよく仕上げたならなんで岸雄君出てこないの?」
そう言われて壁から出てる服の裾の先をみんなで見る
「だだだ、だってこんなに切ったの初めてだし、し、ま、ま、前が見えすぎて恥ずかしくて」
岸雄はどうしても出たくないようだ
「でもそのままじゃ授業が受けれないわ」
美羽の言葉に服の裾がピクッと動いた。確かにそうなのだが
どうも勇気が出ないどんなに真望や千李がカッコイイと言ってくれても
不安なものは不安なのだ
「うじうじしてみっともない!髪切ったくらいで恥ずかしがるなんて弱虫は大変ね」
そこに影姫が自分の席から大きな声で悪態をつく
それに純血派の生徒達はくすくすと笑う
「うるさいな、」
そう言って岸雄が壁から出てきた。
その姿に女子生徒は息を飲む精悍な顔立ちにもともと背が高く体格もいいそんな岸雄が
短い髪で顔も見やすく怒っているからか、前を見て影姫を見据える姿はオオカミを連想させるようなかっこよさがある、もとより岸雄を好きだった子達はキャーキャー言ってはしゃいでいる
「ぼ、僕が嫌いならむ、無視すればいいって言ったじゃないか、いちいちわ、悪口いうなよ」
影姫は顏を真っ赤にさせてふんと黒板の方を向く
「まぁ!半端者のくせに影姫様になんて口を!」
「とりあってくださるだけでもありがたいと思いなさいよできそこない」
「少し見目良く刀ができるからって調子に乗ってるんじゃない?」
純血派の女子達が騒ぎ出した。
それに乗じて豹炎が影姫に近づく
「影姫さん、あんなできそこないのこと気にしなくていい、どうかな今日蛇頭に・・・・」
「貴方としゃべるくらいならできそこないの方がいいわ」
影姫の言葉に豹炎は舌打ちをして席に戻る
「えいちゃ・・・・」
癒澄が声を掛けようとしたら教室の扉が開いて逭先生が入って来た。
「はい、皆さん席に着いて―、おや?そこの青年は?」
「先生!岸雄ですよ!」
見たことない生徒を見る目で岸雄を見る逭先生に千李がそう言うとびっくりした
「なんと!岸雄君ですか!見違えましたねぇ!いいイメチェンです!カッコいいですよ!」
先生に褒められ恐縮した岸雄はいつものように背が丸まってしまう
「あ、ありがとうございます」
「うん、あとは自信がついたらさらにカッコいいですね!頑張ってください!
では席に着いて、HRの後は私の呪文学です4階に遅刻しないように一緒に行きましょうね♥ では出席を・・・・」
担任の逭先生に言われた通り全員が席に着くと出席をとられる千李達はちらりと影姫を見る、下を向いていて表情はわからないHRも終わり、いつも通り6人で教室移動しようとしたら、影姫は一人で先に行ってしまった。
「影姫ちゃん待って!」
美羽と癒澄は慌てて後を追う
「な、なんだよあれ、み美羽ちゃんと癒澄ちゃ、ちゃんまで無視するなんて」
怒ったように岸雄が言う
「まぁまぁ岸雄君彼女もいろいろ考えてるんだ」
真望がなだめるように岸雄に言う
「まぁそのうち落ち着くさ、行こうよ」
そう言って千李も教室を出る
内心、千李も真望もこれからどななるのやらと頭を悩ませているが、この喧嘩は本人達の問題、下手に割って入ることはできないのだ。
3人が呪文学の教室に行くと、扉の前に美羽と癒澄がいた。
「あれ?影姫ちゃんは?」
千李の答えに教室の端を見ると窓の外を眺める影姫、その周りには純血派の女子が集まって楽しそうに影姫に話しかけている
「なんだい?あれは、影姫殿が嫌いなグループじゃないか?」
真望の質問に癒澄が答える
「それがえいちゃが一人にしてっていうから」
「私と癒澄ちゃんがはなれたんだけど、影姫ちゃんが一人で居るからあの子達が自分のグループに誘おうとしてて」
そう言って2人も影姫を見る、退屈そうに外を眺め無視を続けているが純血派の女子達は関係なく話す、特に錫乃万里が率先して話しているようだ。
きゃっきゃと話していた万里が、千李達に気づく
「あら?紛い物と半端者に誇り無い者のグループじゃない美羽様も影姫さんみたいにそこから抜けたほうがいいですよ?血が汚染されちゃうわ、きゃははは」
楽しそうに笑う純血派女子達だが一瞬でその口は閉じられる
「耳障りな笑い声ね、少しは静かにできないの?雨の日のガマガエルなのかしら?げこげこうるさいわ、どっか行って」
影姫がそう言って手を動かすと影に引っ張られるように女子達は純血派の男の子達がいるところに行った。
「うっとおしいハエのようね」
影姫がそう言うと彼女達は椅子に座る
影姫の言葉と操られる感覚が怖かったのか彼女達は泣きだしてしまった。
そして最後の生徒が入ると逭先生が教室に入って来た。
「はいはーいでは僕の授業をはじ・・・・おや?なんで彼女たちは泣いてるのかな?」
逭先生は泣いて男の子達に慰められている女子達を見る
「沢さんが彼女たちをハエだとかガマカエルだとか言って泣かせたんです」
それを聞いて逭先生はびっくりした。
「おやおや、学年一の秀才がそんなことを言ったのかい?何か嫌なことがあったんだね沢さん、でもそんなことを言って人を傷付けちゃいけない、君は淡金銀候補なんだ、どういうことかわかるね?」
「はい、逭先生、申し訳ありませんでした」
「NONO!僕じゃないでしょう?」
「ごめんなさい、錫乃さん達、虫の居所が悪くてねアマガエルだったわ」
クスクスと純血派以外の生徒が笑う確かに万里は両生類顏で似ていると思ったのだ。
「沢さん?」
逭先生は影姫を見て首を振る
「ごめんなさい万里さん」
そう言って影姫は逭先生を見返す
「はぁまぁいいでしょう、では、今日は水の出し方を教えます、最初の授業で教えた通り、潜在系神華はだすだけ、ずらすだけなど、簡単な動作ならばその神華持ちじゃなくてもできます、まず水の出し方は・・・・・・」
先生が授業に入ると千李、真望は眼鏡をかける、それを見て
岸雄、美羽、癒澄も眼鏡をかける
『ねぇ、えいちゃ大丈夫かな』
念話で話しかける癒澄
それに千李も念話で答える
『どうかな、もともと純血派が嫌いだったから当たってる感じだよね』
『影姫ちゃんこのままじゃ一人になっちゃうよ』
『影姫殿は気が強い方だからなぁ』
『いいじゃん一人になりたいんでしょ、一人にしてあげれば』
みんなが心配する中岸雄だけは冷たく返す
『岸雄君、そんなひどいこと言わないで、一人で居たいわけないじゃない』
『そうだよがーがー、えいちゃだって今までを悪いと思ってるんだよ?』
『へーそれにしては朝はずいぶんな言い方だったね』
『だがそれで岸雄君は出てきたじゃないか』
真望の言葉に岸雄は苦い顏をする
『もういいよ僕は興味ない』
そう言うと岸雄は眼鏡を外してしまった。
『岸雄君って意外と頑固よね』
ちょっと怒ったように美羽が言いながら岸雄を睨む
岸雄は恐縮して縮こまるがすぐに、逭先生の話を聞きだした。
『まぁ、影姫って特別岸雄に厳しかったしね、確かに岸雄って馬鹿にされやすいけど、出会ったころからずっと一緒にいてあんなに嫌ってるみたいな言い方してたらね、僕も心が折れるよ』
『そうだけど・・・』
美羽が不満げな顏をしているのが見える
「おや?須館さん何かありましたか?」
「あ、い、いえなんでもありません」
美羽は慌てて机に向き直る
「そうですか、まぁちょっと難しいですからね皆さんも何かありましたらすぐ言ってくださいね」
そう言いながら逭先生が皆にウインクする割と顏のいい逭先生のウインクに女子達が色めき立つが美羽は引きつった顏でハイと返事をした。
『まぁ影姫殿の整理がつくまでそっとしておこう一人で考えたいのかもしれないし、俺と千李君はなんとか岸雄君を説得してみるよ』
『うん、まもりんお願いね』
『そうだね、私達も極力協力するよ』
『美羽、怒っちゃだめだからね』
『解ってるわよ千李』
そうして4人の脳内会議は終了した。
昼休みやはり影姫はさっさと教室を出て食堂でいつもの席より離れたところに座った。
岸雄は岸雄で深瑠がまた迎えに来た。
「まぁ岸雄その恰好どおしたの??」
「髪切っれって言われて・・・・変ですか?」
「そんなことないわ!すっごくカッコイイ!私って贅沢ものね!こんなにカッコイイ彼氏がいるなんて!さ!みんなに自慢しなきゃ!岸雄を借りるわねみんな」
「じゃぁね、また後で」
そんなことを言って2人は2階の妖怪の席に行ってしまった。
「ねぇなんか女子がみんな岸雄見てない?気のせいかな」
「いや、千李君、気のせいではないな」
食堂のほとんどの生徒が深瑠の隣にいる岸雄をびっくりして見て、黄色い声を上げている
確かに岸雄は11歳にしては背が高く程よく鍛えられイケメンだ、おかげで昨日まで殺気にも近い視線で岸雄を見ていた男たちは悔し涙を浮かべ負けたような顏をしている者が何人かいる
「岸雄君かっこよくなったもんね、深瑠先輩といる時なんて背筋伸ばしてるから余計に」
美羽は感心したように言った。
「ちょっと話題の6人組!!あのガーガーはどういうこと!?」
そこに卵のサンドウィッチを持ったライラックが現れた。
「あ、ライラック先輩、昨日圓唎さんに岸雄の髪を切れって言われて、今朝僕達がセットしたんです」
千李は誇らしげに言う、自分のアイロンさばきは中々の物だと岸雄を見て思うのだ
「あーなるほどねあの箱か」
ライラックは納得する
「まぁ確かにガーガーちゃんはスタイル抜群のイケメンだからね」
「おどおどしてなかったら、女子がほっとかないわなぁ我が弟ながらうらやましいですな」
その瑙虹、瑙銀の発言を聞いてライラックがニヤニヤする
「お前らだってモテてんじゃーん?、イケメンの銀帯なんてほっとかれねぇよ、イタズラばっかするから付き合うのはちょっとって言われんだから仕方ないべ、嫌ならイタズラやめるか?」
そのライラックの言葉に2人は
「「イタズラやめるなんて玩具ショップ、リュウォンの息子の名が泣くから無理だよ姫!」」
「なら諦めろ、お前らの相手は私だけだ」
「「おおぉ、神は我らを見放された!!!」」
「失礼な奴らだな!こんな美女捕まえて!!」
ライラックはキッと二人を睨む
「いやー姫は美人だけどねぇ」
「がさつだからなぁ」
じっとライラックを見て二人は首を振る
「こっちだってお前らなんて願い下げだっつの」
ふんとライラックはそっぽを向く
瑙虹瑙銀はやれやれとライラックの左右に行く
「あぁ姫、そんなに腹を立てないで」
「姫はがさつさを抜けば魅力的さ」
「才色兼備で明るい姫」
「この前も告られていたではありませんか」
そう言うとライラックはジト目で瑙虹、瑙銀を見る
「まぁそれくらいで許してやろう」
3人が落ち着いたのを見て千李が話しかける
「そっか瑙虹先輩も瑙銀先輩も銀帯なんだ」
初めて千李達は瑙虹、瑙銀の帯を意識する
白に近い銀が美羽、真望と同じように瑙虹瑙銀の腰で光っている
「当り前だろ少年!」
「あの鬼教官ライラックの元で」
「日夜勉強と鍛錬に追われる日々!」
「「ライラーズとしてライラックの金に次ぐ銀帯を持たないとは何たる恥か‼」」
天を仰ぐポーズをとる二人にライラックはイラッとする
「だれが鬼教官だよ、課題増やすぞこら」
それに二人は大慌て
「殿下!それだけは!どうか課題増加だけはご勘弁を!」
「殿下は素晴らしいお方です!鬼教官なんて言って申し訳ございません!」
「もう遅い、残念だったな、レポート10枚に光線刀術の原理を書いて来い」
「「で、殿下ああああああああああああああああ!!!!!」」
瑙虹、瑙銀は、その場に崩れ落ちる
「まったく、で?がーがーがいないのはわかるけど6人組はなんで4人組なのかな?沢家の姫様なんかボッチでご飯食べてるけど?」
それを聞いて4人は困った顔をして、美羽が話した。
「実は岸雄君が影姫ちゃんの言動に我慢できなくなったみたいで」
「それでガーガーが怒っちゃってえいちゃも謝れなくて喧嘩になっちゃって」
「今朝も岸雄に冷たく当たってて、岸雄が反論してまた距離ができちゃって」
「それで影姫殿も引っ込みがつかないのか一人でいたいのか朝から俺たちのことも避けてて」
それを聞いて3人はびっくりした。
「ガーガーが切れたって?」
「ガーガーが反論したって!?」
「あのガーガーがそんなことできるなんて成長したなぁ」
ライラックが感慨深いように言う
「僕らも岸雄があんなにはっきり言えるなんてびっくりしました。」
千李がそう言うとライラックが考えながら言った。
「まぁ沢家の姫様はなぜか岸雄に冷たかったからな、ツンデレでもあんなツンツンされたら
普通に嫌だわな、しかも出会ってからずっとだろ?そりゃ切れるわな」
「そりゃ俺らもからかいはするが」
「辛く当たったりはしないからな、」
瑙虹、瑙銀も岸雄と影姫を見比べて言う
「あ、」
ライラックは何かに気づいたようで考え込む
「なんだいライラ、」
「どうかしたのか?ライラ」
みんな疑問の顏をしていてそれを眺めて影姫を見るライラック
「ちょっと沢家に思いあたる事があるから姫様と話してくるわ」
そう言ってライラックは影姫のところに向かう
「沢家?あ、」
「え、いや、まさかな」
それを聞いて瑙虹瑙銀も何かに気づく
「どうかしたんですか?」
千李が二人に聞く
「いや、ちょっとな」
「俺達用事ができたわじゃぁな!」
そう言って瑙虹瑙銀は走ってどこかに行った。
4人は疑問を残しながら昼休みを終えたのだった。