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神華牡丹学園物語  作者: 瑞目叶夢
1章華人の不安と仇の顔
11/62

刀激戦の部活はどれに入る?

入学式の次の日の7限の能力別クラスは酷いものだった。

千李にとってでは無く、豹炎にとって


蛇頭(じゃがみ)に入りたい?混ざり者の半純血と紛い物に無様に負けておいてふざけたことを言うな、いくら純血の王者清家と言えど、その技量がないのならば入れるわけにはいかない

悔しければあの紛い物から銀帯をとってくるんだな」


それが鴼脈羅(さぎみゃくら)純血主義が所属する刀激戦の主将の言葉だった。

入学式の神華披露で、華無生まれに銀帯をとられた上に

親戚のハーフで半純血の千李に劣る結果は

純血の王と言われる清家の跡取りとしては凄惨なもので、

1年以外の純血主義からのあたりも強く

純血を良く思っていない生徒からも冷笑を浴びていた。

その結果はここ3日間、いくら嫌味な奴でいけ好かない相手だと言っても

3人にとっても、いいものではなかった。

他の1年生も調子に乗って純血主義を小馬鹿にする発言が目立った。

特に千李は、あからさまに豹炎と比べて素晴らしい事を誇張し純血主義を馬鹿にするネタにされるのだからたまったものではなかった。

そんなこんなで、豹炎達純血主義の1年生からの恨みの目は強くなるばかりなのだ。


今日は1、2、3組の合同授業、初めての黒術者悪鬼防衛術(くろじゅつしゃあっきぼうえいじゅつ)の授業だ、その次も1、2、3合同授業の武刀術(ぶとうじゅつ)、その後は昼休みなのだが千李達は気持ちが重い、純血アンチの生徒たちが千李達の取り巻きのようになっているからだ、1組と3組の合同授業ではよく見る光景になってしまっているのだから気が重くても仕方ない、2組はいいのだ、ここはそんな幼稚なことになど興味なく楽しめればいいようだからだ、ただ、その態度はそう言う生徒には面白くないようだし、純血主義からしたら誇り無き存在にしか見えないようだ


そして全員が席に着き騒いでいると防衛術の教室の奥から一人の先生が出てくる

黒いタートルネックの中華服のような服装で一本の三つ編みの黒い長い髪、春の室内なのに黒手袋をしている20代ほどの見た目だが、気難しそうな印象の顏には丸眼鏡が乗っていてそれ以上にも見える、そして背筋を伸ばし姿勢のいい歩き方でカツカツと靴音をさせながら教壇に近づく


「私は黒術者悪鬼防衛術の担当教師、南千珠(なんせんじゅ)という、この授業では悪しき心を持つ者や妖怪達から身を守る方法を教える、どんなに力が強く伝説的だろうと一瞬の油断や無意味な自信で足元をすくわれるだろう、悪しき者はいつもお前たち未熟な者を狙っていると心するがいい、その時の為によく授業を聞くように、まず・・・」


南先生が黒板を見て授業を開始すると後ろの席に座っていた千李の取り巻きが話しかけてくる


「千李君ならそんな相手怖くないよね」


「そうそう、千李君なら一発で倒せるよ」


そう言ってくすくすと笑う、本当にうんざりする、この生徒達は千李を英雄の息子だからって神か超人のような扱いをするのだ



「やめてくれよ」


千李がそう言った途端、南先生から黒い塊が飛んできた千李は慌てて炎の盾を作って防ぐが黒い塊は火を通りこして千李の前にその醜悪で恐ろしい顏を近づけ、聞くだけで気分の悪くなるような叫び声をあげる


「なにやらお話しをして余裕そうにしていたが、その程度の悪霊も消せぬようでは

死んだ父上も浮かばれないな、英雄の息子どの?」


南先生がそう言うと悪霊は南先生の中に戻って行った。


「ぼ、僕はやめてくれっていっただけで」


「言い訳はご立派なようだな、だが話していたことに変わりはないだろう、罰則として全員に幽霊の種類と危険度、それに対する対処法を和紙5枚を次回までの宿題として出す、必ず提出するように、遅れれば宿題が増えるだけだ、では授業を続ける」


そう言って黒板に向き直る南先生

千李は理不尽だと思いながらも、それ以上食って掛るのはやめてイライラしながらも授業を聞くのだが、ほとんど頭に入らなかった。


次は待ちに待った武刀術、千李の一番得意な授業だ


作務衣(さむい)に着替えて校庭に出て、木刀を選び、クラスごとに2列になって並ぶ


チャイムが鳴ってしばらくすると厳めしい初老だが油断なく鍛えられた体の男性が出てきた。


「よーし全員そろっているな、わしは尾佐那仙吾(おざなせんご)、貧弱なお前らを鍛えるために、この授業を担当している、今日は太刀の素振りをした後、見どころのある者4名に代表として模擬戦をしてもらう、わかったら隣の同じクラスのやつと向き合って素振りをしろ!」


そう言われてみんな思い思いに構えて素振りを始める、家によって流派も違えば構えも変わるものだ

上段下段の違えはあれど太刀筋に関しては、それまで学んできた技量によって切れが違う


刀を持ちなれない生徒は隣の生徒のマネをしていたが尾佐那先生はそれをすぐに察して

基本的な(かま)えに直させている

どうやら各家の構や武器の種類を把握しているらしく、普段扱う武器と太刀との違いを説明している、そして千李と真望の前に先生がきた。


「む、お前は武器を持ったことがないな、確か銀帯の日本人か、剣道もしたことないのか?」


真望は一生懸命テレビで見た剣道のマネをしていて割と形になっているように見えるがやはり達人の目はごまかせないのだった。


「すいません、そう言うものに接することなく育ちましたので」


一生懸命素振りをしながら真望は答える


「まぁ、侍の国と言われていてもその刃はアメリカに抜かれてるような国だからな

平和なのもいいが身を守るすべくらいは学ばせるべきだと俺は思うがな、

まぁいい、筋は良いようだからな、俺がきっちり鍛えてやる、覚悟しろ」


「はい」


真望は木刀を振りながら返事をする


「よし、まずは背筋を伸ばせ、そして脇が開きすぎだ、振り回すんじゃない、切ることを意識しろ」


「はい!」


真望がそれを聞いて姿勢を正し、ふり方を変えると風を切る音が少し静かになる

それを見て尾佐那先生はうなずいて、千李を見る、しばらく見てから笑う


「ふ、お前の太刀筋は敍樹そのものだな、清家の形を崩しながらも完成された構えだ

完璧な敍樹オリジナルのようだが基本を押さえている、お前は後で代表で出ろ、戦闘も見てみたい」


「はい!」


尾佐那先生はそう言って他の生徒を見に行った。


しばらく素振りをして尾佐那先生がやめ‼と号令をかけた。


「では今から呼ぶ生徒は前に出ろ、清豹炎、清千李、劉岸雄、風紗南香(ふう さなか)


呼ばれた4人は尾佐那先生の前に並ぶ、風紗南香は3組の女子だった。


「まずは劉岸雄、風紗南香、お前たちからだ、兜と魂心玉(かいしんだま)をつけてここに向き合って合図で始めろ、他の生徒は全員座れ、そして太刀の扱いを良く見ること、お前達はこっちに来い」


千李と豹炎は、尾佐那に呼ばれて地面に書かれた枠の外側に尾佐那と移動する

岸雄と紗南香は尾佐那から剣道の面よりは小ぶりな黄土色の兜の上には術式が刻印されている物と心臓あたりに術式の刻印があるプレートと首に術式の書かれたベルトを受け取る、厳つい兜は紗南香には似合わない気がする、

挿絵(By みてみん)

そして二人は向き合う、紗南香は毅然(きぜん)としていてかっこよく、

岸雄は少しおどおどしていてどことなく頼りない、

なぜ尾佐那は岸雄を出したのか、なんだか可哀想に感じる


「では、始め!」


声と共に紗南香が動く、岸雄のおどおどぐあいから、早く終わらせてあげようとでも思ったのだろう、


「岸雄!!負けたら許さねぇぞ!!!」


「フェントン!授業中だ!」


どこかからライラックと南の声が聞こえた。

防衛術の教室だろう、ライラックは授業そっちのけでグラウンドを見ていたようだ


岸雄はライラックの声を聞いて更に緊張するだが軽く紗南香の木刀を避けて、切りかかる

けど紗南香もすぐにそれに対応して木刀のぶつかり合う音がする

紗南香はさっと距離をとるが岸雄はそのおどおどさからは想像できないほど素早い動きですぐついて行く、付いてこられるとは思わなかったのか、紗南香は体制を崩してしまう、そこを岸雄は見逃さず、木刀を首のベルトを切ると紗南香が倒れた。


「やめ!」


驚くことに、岸雄はその性格からは想像できないほどに強かった。


「ご、ごめん、大丈夫?」


倒れる紗南香に岸雄は手を差し伸べる

紗南香は悔しそうにその手を払いのけて立ち上がる


「うむ、流石劉家の坊主だ、だが得物の扱い方は参考にならんな、それは直刀の使い方だろうが、まぁいいお前はこっちに来いもう一回試合をしてもらう」


「え、も、もう一回ですか!?」


岸雄は青い顏をして千李と豹炎を見る、次の相手を予想してプルプルと震える


「当たり前だ、勝者同士の戦闘は最も参考になる、紗南香、お前は元の場所に戻っていい」


紗南香は思いっきり岸雄を睨んでから先生に頭を下げて元の列に戻る

岸雄はとぼとぼと、千李の隣に並んだ


「よし、ダブル清家、お前らさっさと並べ時間が惜しいからな、」


「先生その言い方はやめてください、俺はこいつを清家なんて認めません」


尾佐那先生の言葉に豹炎は不機嫌にそう言う


「あーわぁったわい、豹炎、千李、位置に着け」


そう言って千李に紗南香が付けていた装備を

豹炎に岸雄が付けていた装備を渡す

そして二人ともしっかりと着込む豹炎の鎧は豹炎に合わせて縮んでいて、豹炎は舌打ちをして岸雄を睨むのだった。


そして二人は向き合う


「今のうちにお得意の言い訳をしとかなくていいのかい?英雄の息子様?」


豹炎がニヤニヤと挑発してくる、よほど自信があるようだ


「必要ないよ、君こそ上手い言い訳を考えとくべきだね」


そこで一瞬、千李はここで負けたほうが取り巻きも減るし豹炎の威厳も少しは戻るのでは?と思ったのだがわざと負けるのは相手の戦いへの冒涜だし調子に乗られたらそれもそれでウザいなぁと思い、そんな甘い考えを振り切るのだった。


「それでは、始め!」


互いに見合って隙を探す

流石清家の跡取り候補と言うべきか、隙なんてものは見せない完璧な構えだ

だがそれは人間を相手にしてきた者にとって、剣術の達人、烏天狗を相手に鍛える千李にとって一瞬の迷いを見逃すわけがない千李が動く、それに気づき、遅れて豹炎も動くが


遅い


一瞬で千李は胸を切ったと思った。

千李は木刀が空を切る音を聞いてその音に合わせて木刀で防ぐ


「へぇ、よけたんだ、やるじゃん」


「ふん、あんな遅いの、よけられない方がおかしいね」


豹炎は軽く言うが、実は偶然だった。よけられず気迫に押され、たたらを踏んだからわずか1ミリの差で当たることがなかっただけだ、だが勝負は運も含めて勝敗が変わる

尾佐那先生は飽きれながらも何も言わず試合を見続ける

初手が外れたならここからは激しい打ち合いだ、かんかんと木刀の打ち合う音が響く

だが押されているのは豹炎だ、刀速も力も圧倒的に千李の方が早く強い

それでも豹炎は必死に食らいつく、千李の刀に追いつけるのは日々の厳しい鍛錬の賜物だろう、豹炎も一応鬼の訓練士の元で訓練しているので早さは及ばなくても力に関しては互角だと思っているそう、思わなくては追いつけないのだ

刀の先生に及ばなくてもこんなに力の強いやつ同年代で会ったことないぞと思いながら豹炎は必死に弱点を探す、純血の誇りとして負けるわけにはいかないのだ

千李は烏天狗の騨五作(だごさく)よりは遅いな、と思った。

あまり長引かせて体力消耗すると岸雄との試合がきついかもしれないと思う、ぎりぎりで避ける豹炎を見て、もう終わらせようと思った


だが普通に負かせると問題があると考えた千李は隙を作る、それを目ざとく豹炎は見つけ、

切りかかってくる、それに合わせて千李は頭にぎりぎりに木刀が当たるところで防ぎ、豹炎はそれをみて力を入れた。だが千李はそれを利用して後ろに引き

力を入れていた豹炎は前に倒れそうになる、そこを千李は頭を叩く

豹炎は倒れて一瞬動けなくなって立てない。


「そこでやめ!」


勝負は千李の勝ちで終わった。

盛り上がる千李の取り巻きや他の生徒達

激しい打ち合いで緊迫した空気も、千李の勝利と言う願ってもない結果になり

流石、や、千李様ーなんて声も聞こえて、

やっぱり負ければよかったと千李は思うのだった、一方、負けた豹炎はたまったものではない

大っぴらに言わないだけで陰湿な陰口も聞こえてくるのだ、プライドはズタズタだ


「豹炎、千李!いい試合だった!さすが清家の血筋だ!どちらが勝ってもおかしくなかっただろう、豹炎を笑うやつは軟弱な素振りをしていたやつらのように見えるな、お前らならば5対1で千李と豹炎に挑んでも今のように試合などできず一瞬で終わるわ!まずその軟弱な精神と剣技を磨いてから出直してこいバカ者どもが!!」


尾佐那先生の指摘に陰口を言っていた生徒は顏を赤くしてうつむく、その様子を他の生徒に笑われて悔しそうにしていた。


「ふん、まったくわしは陰口が一番嫌いなんだ、さて、豹炎、もとの場所に戻れ、岸雄、千李は前に!」


そして、岸雄はおどおどと豹炎から受け取った装備を着用して木刀を構えて千李の前に立つ、

確かに早かったが自分の敵じゃないなぁと思うのは過信だろうかと思う千李


「あぁ、まて岸雄、お前は獲物がそれじゃ分が悪かろう、

本気を出して欲しいからな、これ使え」


そう言って尾佐那先生は岸雄の太刀の木刀を受け取って

打ち刀と直刀を模した木刀を渡した。

それを持った瞬間、岸雄の雰囲気が変わった。

それを見て千李は即座に油断なく構える

明らかに違うのだ、おどおどしていた様子は消え去り静かに佇む

隙のない、まるで岸雄自体が刀のような集中力、


「では、始め!」


瞬間、目で追えぬほどの速さで岸雄が動く

千李はさっと木刀を構え、岸雄の打ち刀をはじき直刀を受け止める、

そしてさっと後ろに飛びのき、打ち刀の追撃をさける二刀流の戦い方は

飛鳥お抱えの忍者、(ごく)との訓練で学んでいる、

岸雄の動きは忍者そのものだ、忍者の戦い方は基本室内戦をなどの狭いところで戦うことを想定する、壁や天井、暗器を使うのが基本だ、そして岸雄は自分の能力を屈指して

空気を壁や天井のようにして足場として利用し立体的に攻撃を仕掛けてくる

華人同士の戦い方の基本は自分の能力や妖術などを使うことだ、岸雄はそれを十分理解し

適切な術を使い、千李を追い詰めようとするが

千李が教わるのは剣術だけじゃない、烏天狗を師匠に、他にも妖怪と暮らしているのだ、生活呪文はまだまだでも、戦闘呪文に関してはよく知っている

岸雄が空中に飛びのけば爆炎で飛躍し追いつく、目の前から消えても目を閉じ気配を感じ取り攻撃を防ぐ、真っ暗の中、目隠しをされて訓練していたのだ、視覚にいないことに不安などない

岸雄が降り立とうとするところに炎を出し、体制を崩させようとするがそんなことでは岸雄の体制は崩れず、炎の前で足場を作られ、その勢いのまま切かかってくる、

体の大きな岸雄の一撃は重く強い、だが千李はその勢いを刀を滑らせることで殺し、

防がれた岸雄はすぐに距離をとる、

一瞬の停止・・・・・・これで最後と互いに目で語る、

見つめあう時間は長くない、

意を決して同時に走る、ガっという、鎧と木刀がぶつかる音で決着はついた。

岸雄が倒れてしまう。

ちょうどチャイムが鳴った。まるで試合の終わりを告げるブザービートのように


木刀での試合なのに真剣で戦っているような緊迫感それから解放されるように盛り上がる生徒達、


「よーーーし!!やめだ!素晴らしい試合だった!」


尾佐那先生のやめを聞いて岸雄が得物から手を離す

そして、ハッとしたように周りを見て千李の後ろに行き、千李よりも小さくなるように

体を地面に沈める、先ほどの刃物のような岸雄と同じ人物とは思えない様子に

千李は少し安心したのだった。


「はっはっは!ライラーズに聞いた通りだなぁ!直刀と打ち刀を持つと

戦闘人間になるってのは面白い体質じゃないか!」


尾佐那先生がバシバシと岸雄を叩くから岸雄は沈んでいくし千李にも衝撃が来る

そして先生は楽しそうに言う


「まぁ、いま代表だった生徒はこの後大変だろうが頑張れよ、では授業は終わりだ!解散!」


生徒達は疑問を残しながら校庭から出て食堂に向かった、

そこで千李と岸雄が食堂に入ったとたん凱臥とライラックが走ってきた。


「確保おおおお」


「ああああくっそ凱臥てめぇ!!いいーよ私は真望君もらうからな!」


凱臥が千李と岸雄を抱きとめて勝利を確信た。

そしてライラックは悔しそうにしながら真望を捕まえる


「はっはっは!その子は選抜にいなかったじゃないか、また原石探しならそろそろやめるべきだねライラックよ!そして俺は先輩だから先輩って呼びなさいこの問題児!」


その凱臥の反応にライラックはせせら笑う


「わかってないなぁ凱臥先輩、こいつの水操作、そしてまだまだ未熟だがその太刀筋は鍛えがいのある物だ、確かにその二人はすごいが、こいつだって十分強者の可能性を秘めている、こいつの師匠になれるだけでも刀士冥利(とうしにょうり)に尽きるというもの、本当は3人共狙っていたが才能と技量を誇る天才の猿武(えんぶ)に強者がいるのも面白いしね諦めてやる

けどあんたその二人を導けるのかい?あんたより強いけど?」


ぐっと凱臥は押し黙る、確かに2人は凱臥よりも強いのだと凱臥自身もわかっていたからだ。


「ふ、教え導くだけが武の道ではない切磋琢磨し共に精進するのもまた武の道、刀士として、

彼らの力の糧になるそれだけでも違うというものよ」


バチバチと視線で火花を散らすのかごとく睨み合う2人

そんな二人に抱きこまれている真望、そして千李、岸雄は混乱する

今、何が起き、なぜ争われてるのか、それが分からないからだ、いや、岸雄はわかっていた。入学前からそれとなく幾度となくライラーズの3人に聞かされていたからだ


「ら、ライラ、先に説明し、した方が、い、いい、よ」


岸雄はあわよくば自分はこの争奪戦から抜けたいと思うのだった。


「あの、これはどういう?」


混乱しながらも真望がライラックに問う


「ん?なんだ尾佐那先生から聞いてないのか?毎年1年の授業は4人選抜して

模擬戦をさせる、それを私ら上級生は窓側の席で観察して自分のチームに欲しい人材を見るのが暗黙のルールなんだよ、まぁ先生方も刀激戦の勝敗は気になるところだし黙認してもらってるんだよね、で、毎年恒例、1年の武刀術の授業の時は各主将の居るクラスは

校庭を見れる教室の授業になってるから私は我が虎裁(こだち)に相応しいメンバーを獲得しようと君達の授業を最初から最後までがっちり見てて凱臥に後れをとってしまったんだよ、悔しいことにね、ま、それも君達の反応次第だけどね」


そう言ってライラックは3人を見る


「まてまて、なにをお前たちだけで解決しようとしている!!私達の鸞璃(らんり)だって!」

「こらこら、勝手に何を言ってるんです瑞葉さん」


その会話に青い髪の女性がなぜか紗南香を小脇に抱えて割り込んでくるが、白雅に止められる、紗南香は混乱していて見てるこっちがかわいそうだ


「ちょ、白雅君達はいいけど私は君達が卒業した後も心配なんです!鸞璃の年長者として彼等を勧誘する必要性があると思います!」


青い髪の女性、その髪が示すのは楠州(くすしゅう)の大樹の富豪、楠家の血縁者と言うこと


「あ、楠瑞葉さんって楠家の末の姫様だ、武道を嗜まれるのね」


美羽が驚いて口にする、無理もない、楠家と言えば思量深く文学に秀でて物静かなイメージが強い中、瑞葉はその小柄な体格には相反して、勇ましく、天真爛漫という言葉が合いそうな女性だからだ


「瑞葉先輩、俺が鍛えている下級生も十分強い、それに我が鸞璃の冷静に狡猾に全てを読み解く戦略と言う信条を考えるならばこの子をちゃんと勧誘して先輩の技を教えたほうが今後の為になりますよ、女の子の継承者欲しかったんですよね?」


小さな蕾を抱える産咲を連れながら永禮が瑞葉の手から紗南香を救って説得する


「う、うううむそれもそうだが、わかっているがううううう」


諦められないように瑞葉は岸雄を見る、どうやら岸雄が欲しかったようだ、それを見て紗南香はむっとする


「瑞葉先輩、そこの二重人格男と同じ組みは嫌ですよ、そんなことになるなら私は別の組みに行きます」


瑞葉はそれを聞いて慌てる


「ま、まってくれ!君は逃がせないよ!だめだめ!わかった!岸雄君はあきらめるから!」


瑞葉は慌てて紗南香に抱きつく小柄過ぎて紗南香と同い年に見えるが彼女はれっきとした成人済みの17歳だがその性格も相まって幼く見られてしまう


「じゃぁ先ほどのお話し受けさせていただきます。岸雄君」


「ひゃ、ひゃい!」


紗南香が岸雄に声を掛ける、自分に話を振られるとは思っておらず、変な声が出てしまった。


「そのおどおどした仮面に騙されましたが、次は私が勝ちます、あなたの本気の武器相手にね、だから、“絶対”にどこかの組みに入ってくださいね」


「え、えーと」


「返事は、はいか可ですよ」


「う、は、はい、」


逃げようとして、能力を使うのをライラックに防がれているのがばれてしまっていた。

こんな約束をしては逃げることのできない岸雄だった。


そこに高笑いするいけ好かない顏の男が近くの席から大声で威張り散らす


「なんて低レベルな争いだ、必死に勧誘をしなくてはならないなんて君たちは大変だねぇ」


その隣には切れ長の目の美男子、鴼脈羅(さぎみゃくら)が、ウエーブのかかった髪の女の子を世話してる

周りの純血主義の生徒達はくすくすと笑って千李達を見る


「我が蛇頭(じゃがみ)は、純血の組、下級生から自分で入ってくるんだ、

君たちのように醜く騒ぐこともないんだよ、

千李君も入りたかったらぜひ言ってくれたまえ、よろこんで」

嵩仁(すうじん)、勝手に勧誘するな、混ざり者の半純血など要らないと言っただろ、馬鹿め」


女の子に林檎の皮を剥いてあげながら脈羅は嵩仁と言われた生徒を叱る


「は、も、申し訳ございません脈羅様、そのようなつもりは決して・・・」


嵩仁は慌てたように脈羅に謝罪する、


「お前は勝手に清家の嫡男を拾ってきたんだ、あれを世話しろ」


脈羅は目だけで豹炎を見てそう言い捨てた。

豹炎は悔しそうに拳を握りしめる


「は、はい、もちろん、脈羅様に継ぐ強者になるでしょう、ですよね、豹炎様!」


明らかに年下の豹炎にも様付けをする

まぁそれも仕方ない鴼家も清家も有名で純血の中では古き伝統の中で地位ある有名人を数多く出している家なのだから


「ええ、必ず、脈羅先輩のご期待以上の結果を出して見せます」


キッと睨むように豹炎は脈羅に言う


「だといいがな」


脈羅は目も合わせず自分の食事を淡々と食べて返事をする、豹炎は悔しそうに唇をかむのだった。


「あーまぁいろいろ邪魔が入ったけど?君達はどこに入るよ、ちなみに我が虎裁は闘志に沸き上がり戦闘を喜びとする戦士が信条だ、ちなみに蛇頭は純粋な血を誇る気高き戦士だけどまぁあんなのがいるチームだからおすすめしないよ」


「な、紛い物風情が何を「その紛い物に毎回負けていっつも脈羅一人に頼ってんのはどこの組みだよバーカ」


嵩仁が言い返そうとライラックに食って掛ろうとしたら見事にライラックに言い負かされ、蛇頭のメンバーは悔しそうにライラックを見るのだった。


千李は考える、ライラック、永禮、白雅、脈羅、4強のいるチームももちろん魅力的だ。だが蛇頭は純血主義でいけ好かない、虎裁はきっと楽しいだろうけどライラックの顏はどうしても李薇を連想してしまって仲間として見れるだろうかと思ってしまう、永禮は強いらしいからぜひとも戦ってみたい、そう考えれば答えは一つだった。


「僕は、猿武に入ります、4強の組に勝ってみたいですから」


「ぼ、ぼくは「じゃぁ岸雄も猿武かぁざんねんだなぁ」え、ら、ライラ!?」


岸雄は兄やライラと敵対したくないと虎裁に入ろうとしたがなぜかライラックにさえぎられてしまった。


「岸雄、私と対立すると言うことはどう言うことかちゃんと考えとくんだぞ!」


考えとくも何もライラックが勝手に決めたのである、こうなっては岸雄は何も言うことはできない諦めてうなだれるのだった。

凱臥は感極まって泣きながら猿武のチームメイトに走って行ったのだった。


「フッ、2人と敵対するのは寂しいが、これも何かの縁だろう、俺は君らのライバルとなれるようにライラックさんに鍛えてもらおう」


「お、真望、話が早いな、じゃぁそう言うことで、真望は放課後、3の3に来い、部室に案内するわ、お前らも5の1に行って凱臥に部室聞けよ、あいつ今忘れてるっぽいからな、じゃぁな!」


そう言ってライラックは瑙銀、瑙虹他5人集まっているところに走って行くのだった。


こうしてこの学校で一番熱い行事、刀激戦団体戦メンバーが決まったのだった。


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