手紙
〔自分の前に未知の存在が居るだろう、彼らは敵だ、絶対に気を許してはならない存在だ〕
短い、余りに簡潔過ぎる、なぜこの内容の手紙が邪竜から出てくるのか意味が分からない、信じるに値するものかすら不明だ、未知の存在が邪竜の事なら彼らはやはり天敵なのだろう。
「…という短い文章でした」
「そうか、まるごと取り込まれていたのかもしれないな、奴らは人工物を喰うからな」
「人工物として取り込もうとした神殿か何かに召還されたか、封印されてた可能性が有るのかも」
ジークムントに続けてユリアたんも考察を述べる。
「なるほど…だから髪の毛とかは神殿と一緒に取り込まれていて、身体だけ砂漠に置き去りに…」
冒頭の説明がついた、大体やることが分かってきたかもしれない、邪竜は人工物を喰う、それは人類の敵だ、ならばそれを倒すために壊されかけた神殿が最後に異世界から迷える魂を救済したという流れか、説得力が増してきた。
少し邪竜のパーツに歩み寄った時だった
『ピカッ』
「う!?」「ん? 」「え!?」
邪竜の一部に右手が発光を始める、周囲も驚いた反応だ。
邪竜に引き寄せられるようだ、だが痛みや不安は無かった、パーツに右手を伸ばす。一歩二歩距離を詰めるたびに光は増していく、しかし何故か安心を感じていた。
ついにパーツに右手が触れるその最大の光は周囲が視認できない程だが、迷いは何故か一切無かった。
「おい、なんだこれは?」
「ちょっと、待って…」
二人が慌てるが構わず手のひらを邪竜の一部にピッタリくっつけた形になる。
「こうしなきゃいけない気がするんです」
周囲が光に包まれ真っ白になる
頭の中に声が聞こえる
(ます…ね…聞こえ…すね…聞こえているようですね…右手は欠けていたので治させて頂きました…彼らから身を守れるように特別な力を付けておきました…自動で発動するので練習は必要ありません…彼らを倒して下さい…手紙は念のために付けておきました…この声が聞こえるなら成功ですね…それでは頑張って下さい)
「可愛い声だな…」
女神の啓示はわりと親しみ易そうな口調で、思ったよりは具体的な内容だった。