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それから五日後、霧ノ宮兄弟の身は戦場にあった
散々街を遊びまわった二人はすっかり街の住人に知れ渡ってしまって、出禁になった店も数知れず
二人にはそんなことはどうでもいい事だったのだが、苦情が紅姫の所にいってしまい、二人はこっ酷く 怒られた。
「貴方たち分かっているでしょうね」
岬は後始末を終えてからすぐに二人のお目付け役として戦場に送られた
「何をそんなに怒ってるんだよ」
「当り前です、貴方達に与えらた兵士は紀平様のものなのですよ。それを無下に扱おうなんてことは許されません」
「いや、俺達は俺達で勝手にやるからよ。そっちはあんたがやってくれよ。」
「なりません。貴方達が幾分腕に覚えがあるのは知っております。ですが、ここは戦場。そんな個人の力でどうにかなるような
ものではないのです。ですから紀平様がわざわざ兵をお貸しくださった。本当にもう、どうして私がこんな役目に」
「えー、この部隊の隊長を任せられた霧ノ宮藤次です。えー、戦は初めての為みんなには迷惑をかけるかもしれないが
よろしく頼む。」
「副隊長の霧ノ宮誠之助です。よろしくお願いします」
そんな挨拶を経ていざ戦場に参る
とはいえ実際戦場に来るのが初めての二人は後方に配置された
『思っていたのと違う』
それが後ろから戦場をみていた二人の感想だった
実に地味な作業というか、ほとんど人が死なない。
たまにあるのは小競り合い程度のものがほとんどだった
「俺がここに必要なのか兄ちゃん? 」
そう問われても困ってしまう誠之助。
もっとどろどろとしたものを想像していたのだ
そろそろ藤次も限界かな、そんなことを考えだしたときに手紙が届く
「藤次。母上が来るらしい」
「母上が。どういうことだ」
「どうやら母上がここを仕切るようだぞ」
「そうか、それはありがたい。ということは里の奴らも来るんだよな」
「母上が動くのに里に居る意味はあるまい」
これでしばらくは大丈夫そうだな。さすが母上だ。藤次のことをよくわかっている。
それにしても母上が出てくるとはどういう事なんだ。
てっきり今回の戦は里でゆっくりされているものだと思っていたのだが、やはり俺達だけじゃ役不足なのか
母上が来る。それを聞いただけで藤次は安堵した
正直自分がやって来たことに満足できることがなかったからだ。
里を出てからというもの、兄の言う通りにやってきたが上手くいかない。
やはり母上でなければ駄目なのだ。