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「近くで見るとますます高いな」
誠之助は塔を見上げてしみじみと言う。
「なんだ貴様らは」
門番らしき奴が訪ねてくる。
「ああ、ちょっと待ってくれよ、確かここに入れてあったはずなんだが」
兄が持ち物の中をかき回す。
「おお。あったあった。これを見せればいいってじじいが言ってたんだ。ほら、これ」
「なんだ、ちょっとかせ。うん?ちょっとまってろよ」
「はいはい、待ってますよ」
待つこと数分。飛び出してきたのは明らかに門番よりも位そうな奴で
「お待ちしておりました。さあさあどうぞ、こちらへ。姫さまがお待ちしております。」
そう言って出てきたやつの後ろをついていくと、さっきの門番が納得いかなそうにこちらを見ていた。
「道中なにかありましたか?予定していたよりも時間がかかったようですが」
「えっ、そうなの。歩いてきたからちょっと遅れた」
「須衣からですか? 」
「なんだよ兄ちゃん、やっぱり駆けた方がよかったんじゃないか? 」
「そうなのか。母上がのらりくらりでいいというので、急ぎではないと思ったんだが、すまん」
「母上が言ったのなら仕方がないな」
「ああそうだ。俺たちが悪い」
「着きました。ここでしばらくお待ちください」
さっきの奴が出ていくと、今度は女が入ってきた。
「姫様のおなーりー」
そう言って出てきた娘は真っ赤な着物を纏っていた。
「やっと来たか、遅いぞお主ら。我、めちゃくちゃあせったのじゃ、もう来ないんじゃないかって。
約束していた日からどれだけ立っておるとおもっておる。二十日じゃ二十日も遅れるってどういうこと?
もうパニックじゃったよ我。こんな事初めてじゃもの。何べん手紙を読み直したことか。
もしかして途中で何かあったのではないかと思ったりして。岬を出そうかとも考えたが、行き違いになってもあれだし。
出したら出したで失礼になっても困るし。
なんなのお主ら。我のこと馬鹿にしてるの? 」
会ってそうそう、まくし立ててくる姫様にさすがの二人も怯む。
「悪かったよ。道すがらいろいろあったんだよ」
「いろいろってなんじゃ、我よりも優先することがこの世にあるとでも」
「そりゃあるだろうが」
「貴様! 姫様より大切なものがこの世にあるだと! 」
さっき入って来た女が殺気まるだしで刀を抜こうとしていた
それに反応して弟が切りかかろうした瞬間、ドンと音が鳴る
「やめておけ、そこまでだ。俺たちが悪いんだ」
「わかったよ。兄ちゃん。俺たちが悪かったよ」
「すまなかったな姫さん。あんたも。」
「うむ。もうよい。そちらも疲れっておるじゃろう。今日はもう休め、また明日じゃ霧ノ宮兄弟」
そう言って姫様は部屋から出ていった