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あれから1日半、のらりくらりと歩いてやっと二人は目的地に辿り着いた。
「おお、これが香芝かでかい街だな」
街にそびえる2本の大きな塔を見上げる兄。
「おお、あれがメイドさんってやつかなかなかでかいな」
メイドの胸にある2つの大きなものを愛でる弟。
「おいおい、いつまで待ってるんだよ。もう来やしねぇよ。それより俺たちのパーティに入れよ。」
メイドにせまるチンピラ
「さっさとうせな。あんたらみたいな雑魚に用はないんだよ」
追い払おうとするメイド
「雑魚とはなんだ。お前知らねえのか。うちの兄貴たちを。泣く子もだまる霧ノ宮兄弟とはうちの兄貴のことよ」
「知らないわよそんなの。いいから早く消えな」
「せっかく兄貴がかわいがってやろうって言ってるのに。馬鹿な野郎だ、兄貴お願いします」
「仕様がない。実力ってもんをみせてやるよ」
そんなやり取りを見ていた兄弟は
「兄ちゃん。霧ノ宮兄弟だってよ」
「馬鹿じゃねえの」
「なんだこのガキどもは」
その声が聞こえたのか、チンピラが凄んでくる。
「ちょっと、貴方達。その剣どうしたのよ」
今度はメイドが話しかけてきた。
「えっ、メイドさんって剣が好きなの? 」
「いや、そうじゃないけど。その文様、貴方達の剣じゃないでしょ」
「ああ、貰ったんだよ。だから俺たちの剣だぜ」
「貰ったって、そんな訳ないでしょう。そんな簡単にあげたりするものじゃないのよそれは」
「おっ、そうなの? じゃあ結構高値で売れそうだな兄ちゃん」
「そうか、さっそく売りに行こう。あんた、ここら辺でこれを買い取ってくれる所知らないか? 」
「はぁ、貴方達めちゃくちゃね。そんなの教えるわけないでしょ! それよりも、」
「知らないのか。じゃあ探しに行くか」
立ち去ろうとする二人。
「ちょっと待ちなさいよ」
当然、止めるメイド。
「おい!お前らさっきからどういうつもりだ。俺が誰だか分ってるのか? 霧ノ宮兄弟だぞ!
あんまり舐めたまねしてると殺っちまうぞ、ああん。」
ぞろぞろと手下どもが集まってきた。
3人が無駄話をしている間にどこからやってきたのか、数にしてざっと二十は居るようだった。
「どうする兄ちゃん? 」
「仕方ない、剣は諦めよう」
そう兄が言ったとたん弟は大剣を振り回して集団に投げつけた。
もちろんそんな事をするとは予想もしていなかった一同は大剣の餌食に
その間に3人はその場から逃げ出していた。
「ちょっと貴方達一体どういうつもり? 」
「なんだよ、メイドさん。いいだろう別に、面倒に巻き込まれずにすんだんだから」
「そういう事じゃなくって、もうなんなよ貴方達は! 」
メイドがイライラしている間に二人は別方向へと姿を消してしまった。
さすがのメイドも一人ではどうしようもできない。
少なくともあの大剣を振り回すだけの腕力と、ここまで逃げる脚力。それだけみても明らかに強い。
さっきの雑魚どもとはレベルが違いすぎる。
あの二人なら余裕で勝てたのではないかと今さらながらに思ってみたりして、もう考えるの止めた。
今は二人のことよりも剣をどうやって回収するかを考えないといかない。
「まったくどうなってるのよ、ブラン」
メイドはそうぼやくことぐらいしかできなかった。
「おう、兄ちゃんさっきぶり」
「おうよ」
「これからどうするよ」
「観光でもしようかと思ったが、後でもいいだろう。先に用事をすませよう」
「わかった。じゃあ目指すはあの塔だな」
そんな会話を屋根の上でしていた二人よりもさらに空高くそびえたつ塔。
そこが二人の目的地だった。
今度はのらりくらりではなく、駆けていく。
風のように。