13
「おい、どうした? なんだこれは? 」
「分かりません、ただ前線で喜三郎が」
「あの爺か」
いやこれは、まさか、こんな所で開くのか?
場所など関係無いのか、しかしこれはまずいな。相当もっていかれる。
押され気味だった所にこれとはまったくついていない。
あの爺、疫病神だったか。
「メルケ、全軍引かせろ」
「しかし今引くのは、サジュタレヌ様に何と言われるか」
「かまわん、少しでも多くの兵を残さないと、それこそ何と言われるか」
「わかりました」
そういうとメルケは後退のドラを鳴らさせる。
しかし早々と大群が引けるわけもない
「仕方ない私が出る」
そう言うや否やヴィアラオは最前線へと向かう。
「間に合えばいいが、こればかりは相性があるからな」
「おお、久しぶりじゃなこの世は。相も変わらず禍々しく腐っている。ほんに素晴らしきよの
お前様が儂を呼んだのは。ほう、いい具合に壊れておるの、儂を望むのなら抜くがいい
さすればこの世の春が訪れようぞ。お前様の望む世界が見えるじゃろう? 」
「あぅあああああ」
誠之助はその声に抗う事ができない。
そうして門は開かれた。
誠之助の手の中には見知らぬ刀が一本
その刀をただ抜いた。
目の前が白に包まれ、音が消えた
やがて爆音が響き渡る
誠之助は崩れ落ちた
ヴィアラオは目の前の光景にただ立ち尽くしていた
「おいおい嘘だろ。三枚だぞ。私の土壁を越えて来たのか」
ヴィアラオは自分の剣に自信をもっていた。
だがそれを打ち砕かれた
「メルケ、我が軍はどれだけ残っておる」
「四割ほどかと」
「そうか、わかった。後始末は私がする、お前は撤退の指揮をとれ」
「はっ」
「さてと、こちらもやっておきますか。巨列大土障! 」
ヴィオラオが剣を刺すと、そこには巨大な土壁がそびえたっていた。
「おいおいおい。まさかこんなところで見れるとは。資料でしか見たことなかったが
ありゃ裏門だな。あの禍々しさは間違いない。まったく、なんて奴だ、霧ノ宮誠之助」
目が覚めると冷たい部屋に居た
長い間夢をみていたような気がするが、内容はまったく覚えていなかった
それにしても身体が痛い。起き上がろうにも起き上がれずにいた。
今の状況をどうにか認識しようと目を動かすが何も情報はえられなかった
やがて睡魔が襲って来て、また眠った。
「おや、戻って来たのかえ。そんなに儂に会いたかったのかの。ふふふ。
お主が望めばいつでも会えるでな、そんなに焦らなくてもよいよ」
次に目が覚めると、母上がいた。
「誠之助! 誠之助! 大丈夫か? 」
「は は う え 」
「そうよ誠之助、母はここよ。よかった、やっと目を覚ました」
母上の声を聞いてようやく自分ここにいることが分かった。
そうして思い出してしまった藤次のことを
「母上、藤次は 」
「ああ。藤次は駄目だった」
母上の言葉を聞いてようやく、自分の家族を失ってしまった事を実感した。
まさかこんなにも早く家族を失ってしまうとは思ってもみなかった。
むしろ自分の方が先に死んでしまうと思っていたくらいだったのに。
「すまぬ母上、俺の所為で藤次が死んでしまった」
「違う。これは私の所為だ。母の読みが間違ってた。二人に負担をかけてしまったね」
「負担なんて、母上。これぽっちも感じておりません」
そういうと母上は俺の頭を撫でた。
「誠之助、刀を見せてくれるかのう」
「かまわんよ。まだ使えるか? 」
「うむ。これはまた。なんという禍々しさか。
もうこれは儂がどうこう出来るものではないようじゃ、誠之助。
そうさの、紀平公にでも訊くがよい。
なるほど、これがそうなのか。」
まじまじと刀を見たじじいはそっと置いた
「誠之助、霧ノ宮は当主を失った。これにて霧ノ宮は終わりを迎える」
「はい、母上」
「うむ、達者でな」
そうして母上とじじいは居なくなった。