1
昔昔あるところに、それはそれは仲のいい兄弟が居りました。
「兄ちゃん、あそこに何かでかいもんが落ちてねえか? 」
「ん? ああそうだな何かあるな。ここから見てあの大きさなら結構ありそうだな」
「どうする? 」
「歩いてりゃそのうち着くだろう、その時考えよう」
「まぁ、それもそうか。香芝までは結構かかるみたいだし、ゆっくり行きますか」
「ああ、そんなに急ぐものでもないしな」
そう言って兄弟はのらりくらりと歩き出しました。
二人が見ていたのは山二つ先の道にあるもので、大きな何かが道を塞いでおりました。
そんなものが道の上にあっては旅に支障をきたすかもしれない、藤次はそう思ったのである。
数時間後、二人は先ほど見えていた者にたどり着く。
「なんだこれ、偉くでかい剣だな」
「確かにでかいな。よっと」
自分の背丈の倍はありそうな大剣を持ち上げて振り回す。
「あぶねえよ」
「ごめん、兄ちゃん。どうやらまだ使えそうだ」
「そうか、じゃあ持って行くか」
「そうだね。それなりの値で売れそうだ」
そう言って二人は大剣と一緒に倒れていた大男には気にもとめず、大剣を運ぶ準備を始めた。
「それじゃ行くか兄ちゃん」
「ちょっと待て、一応確認だけしておこう」
そこでやっと倒れていた大男のもとへ行く。
どうやら息はしているようだ。
水を口に含ませてやったら意識を取り戻した。
「おい、あんた大丈夫か? 水と飯をここに置いといてやるからな。もう倒れんじゃねえぞ」
まだ意識がはっきりとはしていない大男に、誠之助はそれだけを伝えると弟と一緒に大剣を担いで歩き出した
「大丈夫だったか兄ちゃん? 」
「大丈夫だ。水と飯を置いてきたからな」
「こんな所に倒れている奴に飯までやることはなかったよ」
「そうか? これの駄賃替わりにと思ったんだがな」
「兄ちゃんがいいていうならいいんだけどよ。それにしてもいつになったら香芝につくのかね。もう8日は歩いてるのに」
「方角はあっているし、そのうち着くだろう。急ぐもんでもないんだから」
「それもそうだな。あと2、3日もすれば着くよな」
そう言ってまた二人はのらりくらりと歩き出す。今度は大剣を担いで。
大男はやっとはっきり意識を取り戻す。
あれは夢だったのか何だったのか分からないが、辺りを見渡せば水と飯が置いてあった。
男はすぐに飛びついて夢中になって食べた。
もう終わりか、でも助かった。きっと日ごろの行いのおかげだな。
さすがに死んだと思ったからな。
やっぱりよくわからんもんは食わない方がいいな。
大男は常人なら3日悶えて死ぬキノコを食べて尚も生きていた。
偶然二人が通りかかって救助してくれたおかげもあるが、その生命力は凄まじい。
落ち着いたところで大男はやっと冷静になって辺りを見渡し気が付いた。
「俺の剣がねぇ! 」