ノルマはクリアしたが、おまんじゅうは終わらないっ!
サラセニア火山隊長が呟きますと、そこへなにかが舞い込んできました。天窓から舞い込んできたのは、楽しそうに跳ねるボルボックスの群。
「美味しそうなおまんじゅうだやっ」
「えっ、どこどこっ?」
サラセニア火山隊長はタピオカドリンクのウツワをほうり投げて手をあげました。
「……と思ったら、おまんじゅう、火山隊長の想像のなかだったや」
ボルボックスの酋長が言いますと、赤裸々なボルボックスの子分たちは、
「なあんだ、つまんねえ」
と愚痴をこぼします。
「あらあら、真っ赤な他人さまの家で」
と、酋長の四番目の奥さん候補のボルボックスが黄色い三角巾を揺らしながら、こぼれた愚痴を広い集めて、酋長の三角筋へと押し込みます。……こんなことは日常茶飯で、酋長はいつも、「儂の三角筋は樹齢に換算すると九百年だがやぁ」と、わけのわからない戯言を自慢げに言うのです。すると毎回、二十万近い側近のボルボックスたちが、わけもなく、「ええっ、初耳ですう」とお追従の儀を執り行うってわけです。
サラセニア火山隊長は、常のこととはいえ、カンカンです。今日はカンカン帽をピクルスでいっぱいにして、トッピングにコンスタンティノープルを二、三ぶっさしたものを用意して、
「キサマら、期待させやがって、コンレデモくらえいっ!」
そういって、まず、すべてのボルボックスにクチバシをセットして、丸めたカンカン帽を食わせてまわりました。
「やあ、ごめんなさいいっ!」
そうすると、ボルボックスの一団はたちまち満腹になって眠ってしまうので、その隙に、サラセニア火山隊長は不逞のヤカラをヤシガニで編んだゴミブクロへ突っ込んで、「暴れるゴミ」の日に出してしまうのです。
で、第一話に出てきたカモノハシの長兄の次男坊、ネギノハシくんがやってきて、「暴れるゴミ」の日のおやつどきに回収していくのです。
じつは、サラセニア火山隊長は彼にほのかな恋心を抱いているもんですから、彼が彼女に伝票の欄へサインを求めて、それからはにかんで、「ハブ・ア・グッド・アグレシブ・ジヤンク・デイ」と言うと、彼女は頬を染めて、「ジヤンク・テヤンデイ・トゥー」と一言、かたこと英語で返してから、にんまりしてしまうのです。
しかし彼女は、「暴れるゴミ」係のネギノハシくんに会えるのが、懲りずになんども訪れるボルボックスたちのおかげだとは気づきません。
なぜなら、彼女はボルボックスの単位を取っておらず、その言語は「おまんじゅう」や「オレンジジュース」、「ちょうざめのたまご」などの初歩的なことばしか理解できないので、彼らの会話が聞き取れず、やって来るのは毎回別の群で、青髭の酋長も毎回別個体なんだと思い込んでいるのです。なんてこったい。
というわけで、思い込みは人を破滅させるかもしれないから極力やめましょうっていう小話でした。