タイトル巻き上げにまいりました、サインをお願いします。
ごきげんよろしゅう。わが町では、サルスベリの木から降りられなくなったハンマーヘッドシャークが嘆きのワルツを歌っておりますが、みなさんごきげんうるわしゅう。
ところでみなさん、お気づきでしょうか。この小説、サラセニア火山隊長の日常を淡々と語っていくもんだってことはすでに示してはいますが、じつはひとつ、重苦しいノルマを背負っておるのでございます。
ノルマって、 もともとロシア語なんですってね。ロシア語といえば、いまやフランス語として有名な「ビストロ」も、もとはロシアの人が使ってたことばだとかなんとか。
さて、今日は早くも閑話休題。今日は遊んでいる暇はないのです。なんたって、さっさとこの小説のノルマをお片付けしなくてはならないんですから。やんなっちゃう。
さて、もうおわかりでしょう。この小説のノルマ、それは、タイトルを実行せねばならんということ。つまり、絶世の美女、サラセニア火山隊長がおまんじゅうを渇望して悶え苦しむさまを、あたかも巧い絵仏師の描く屏風絵のごとくにリアルに描写せねばならん……という、過酷なノルマなのです。
だってほら、ちまたでいわれてるあれになっちゃ困るじゃないですか。あれ、なんてったかな。「タイトル詐欺」だか、「タイトルかつあげ」だか、「タイトルリンチ」だか、「過失タイトル致死傷」だか……、なんかほら、そんな感じの、なんちゃってっ! って感じの名前のやつ。
まあなんだ、とにもかくにも角煮にも、タイトルってすごく重要でしてね……たとえば、『ヒトデ』という小説にヒトデが出ないんなら、なんかのシンボルなんだなってんで済みますけど、『鬼の頭はヒトデを飼いたくてしょうがないっ』という小説にヒトデへの言及がなかったならば、「なんじゃこの、タイトル横領致傷罪めが。こんなんなら、『鬼の頭1世の幸福だった日々』とかでええやん」とかさ、言いたくもなるでしょ。そんな感じさね。
というわけで、お話ししますけどね、今日、サラセニア火山隊長は呟いたんです。真っ白なユーグレナの沈む夕日へと向かって、「おまんじゅうが恋しゅうございます」ってね……カモノハシのクチバシで涙をぬぐいつつ、タピオカドリンクを頬張りながら。