こんな町でも事件は起こるのですけどなにか。
平和な街のみなさん、ごきげんよう。こちらの町ではちょうどサラセニア火山隊長がレモンの妖精を自称する「しとろんろん」へ蜜柑の数珠が三つほどつけられた世にも珍しいことこの上ない真鍮製のマフラーをプレゼントして家へ帰ってから四十八時間と二十分が経過した頃でございますが、みなさんはたしていかがお過ごしでしょうか。
さて、サラセニア火山隊長はレモンの妖精さんのご機嫌とりに疲れてしまって準満身創痍の一歩手前の状態なので、今日は一日、元気いっぱいの不死身のシジミ三姉妹に主人公の座を貸し出す手続きをしても構わなくってよと寝言でほざいてしまうような体たらくです。
シジミ三姉妹というのは、最近どこかから引っ越してきたという謎めいた姉妹で、シズカ・ジュリナ・みーたんの三人で構成されています。
この町に来てからというもの、彼女らの容姿はすぐに町中に広まりました。なぜかといいますと、彼女らが狩猟に着手したとたん、雷をあやつる緑色のカピバラを飼っていると噂される警官たちが、これはけしからんと言いまして、たまたま町を訪れていたロートレックに依頼して彼女らの容姿を描いてもらって、「うぉんてっど」と書き添えて町中のハムストリングスの低木へ貼りつけたってわけなのです。
さてしかし、困ったもんです。というのも、ムササビの多襄丸くんがこの貼り紙の文字を見て、「間違ってるぞ」と言って万年筆を買ってきて「見返り三美神」と書き換えて回ったので、町のあちこちでハムストリングスの前に渋滞が勃発して大きな社会問題になったのです。やがて「見返り三美神」がさらに「見返り求めし三美神」に書き換えられるというたちの悪いイタズラ事件も起こって、その犯人が特定されて高校生男女数人に囲まれてタピオカ責めにされるといった悪質な私刑事件も起こってしまいました。
さて、そんなお騒がせ三姉妹ですが、彼女らはそんな町のようすなど気にもとめずに今日も狩猟にくりだします。かわいそうに、今日のターゲットにされてしまったのは、ハンマーヘッドシャークのギンちゃんです。サルスベリの木の上で泣いていれば良かったものを、彼女らの出没区域である雨水管へお散歩に出かけてしまったのが運の尽きでした。
そんなわけで、次回は華麗なるシジミ三姉妹の狩猟をお話ししてまいります。こうご期待。




