教会
教会は青と白を基調として建てられている。下町の教会にしてはだいぶ綺麗な外装をしていると思う。前世から比べるとましになった。
扉をくぐり抜けると魔法石の灯りが辺りを照らしている。進み続けると、女神の石像が視界に入った。
その石像の隣には高齢の司祭、アモンの姿がある。声が聞こえる所まで歩いていくと、アモンはリゼに声を掛けてきた。
「リゼ久しぶりじゃ、調子はどうだ?」
「いつもどうりだ、じいさんは?」
心配そうにこちらを見つめるアモンに
笑って言葉を返した。司祭をじいさん
呼ばわりするのはリゼしかいない。
「立ってて大丈夫なのか?」
「年寄り扱いするんじゃないわ」
「してないぞ?」
眉間に皺を寄せて返してくるが、足元がふらついている。さりげなく近くの椅子を用意して、アモンの後ろに設置する。
「年寄りじゃないぞ・・・ワシは」
「わかったから座ってくれ」
ぶつぶつ言いながらもアモンは渋々座った。
高齢者扱いが嫌いなアモンは今年で78歳になる。足腰が悪くなって来たアモンの代わりに若い司祭が新たに入るらしい。
「じいさん、あのさ」
「なんじゃ」
「新しい司祭ってどんなやつ?」
アモンの代わりがどんな人物なのかによって、この先教会に行くか行かないかを決めておくことにする。
もしも、聖女だとバレたらやっかいになるからだ。
「信頼できる方だぞ、間違いなくな」
「けど、そいつにバレたら私はー」
「絶対に同じ因果を与えない、彼女のように」
自分に言い聞かせるようにアモンは大きな声で言った。
彼女とはリゼの前世、11回目の聖女アンヌのことだ。アモンの父とリゼは友人で、幼い頃にアモンはアンヌによく会っていた。
憧れだったと昔、話していたのを覚えてる。
世の中って以外と狭い。リゼは彼の幼い頃を覚えてる。そして、アモンはリゼが殺されたことを、王族に殺されたことを知っているのだ。
聖女だと言った時に涙を流して守ると言ってくれた。
そんなアモンが信頼する人物なら大丈夫かもしれない。
「気にしないくていい、過ぎたことだし」
「ワシは忘れんぞ。王を許さん、絶対にだ」
「ありがとう、じいさん」
例え聖女が殺されていても彼女たちを、私を覚えてる人がいるだけで救われている。
それだけで十分だ。
「じいさん、そいつに会えるか?」
「ああ、お前さんの後ろにもういるぞ」
「なに言って・・・」
驚いて思わず後ろを振り返った。
そこに立っていた人物は美しい金髪を持つ男だった。まぎれもなく先ほど会ったクソ王族に瓜二つの男は、
口を開けて呆けているリゼに華麗に微笑んだ。