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平民になった聖女
聖女転生12回目のリゼの朝は早い。
寝癖だらけの淡い金髪を櫛で整えて
聖女の証である紫の瞳を光魔法で
青に変える。
いつものベージュのシャツと茶色の
ロングスカートに早着替えしたら
顔を洗う。
鏡に写る自分の顔は平民にしたら
整いすぎているが、周りからはその
ぐらいが花があっていいとかなんとか
言われる。
初めての平民生活は面白くて飽きない
し、自分でなにかをするって楽しいと
思う。
洗面が終わると朝食を作りさっさと食べる。
今日は教会に行ってお祈りをする予定
だったが、先に買い物をすることにした。
お祈りは前世でしすぎて体に身に付いてしまったから時々行っている。
支度を済ませて慌てて玄関を出ると近所のおばさんが笑顔で声を掛けてきた。
「リゼちゃん朝からあわてんぼうねー?」
「朝一の野菜狙ってんだ!」
手を振りながら走り出すと後ろから「気をつけてなー!」とおばさんが笑って言う。
前世では想像できない光景は新鮮でいい。
だが、最悪なハプニングはいつだって起こることを私は忘れていた。
当たり前が続くなんてあり得ないことなのに、すっかり忘れていたせいで、事件はすぐ起きた。