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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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第7話 泥棒の正体

ライラ達による亡命騒動から3日後。カレル達はファーブルの依頼で、とある調査に赴いていた。様々な果実や香辛料等を育てている果樹園。そこで盗難被害が起きているらしい。


4人による初仕事という事もあり、ライラは意気込んでいた。そんな彼女の緊張をほぐすべく、話を聞いて落ち着かせるカレル。だが、この状況を面白く無いと感じている者がいる。


「ううっ、私の恋人なのに。ライラに負けてはおれん。カレルに私も甘え‥‥、うわっ!」


カレルに突撃するセリスの足を植物の蔦が払う。転倒しかけた彼女だったが、素早く受け身をとって起き上がった。魔法の出所を見れば、メディアが呆れた様子でセリスを見ている。


「やれやれ、意外に嫉妬深いんですね。カレル様の恋人でいらっしゃるのに、自信が無いのですか? ライラ様は、まだ夜を共にしておりません。アドバンテージは、明らかにセリス様の方がお持ちでしょうに」


「う、うるさい。メディアには関係ないだろう。カレル、作物泥棒を捕まえるんだろう? 私とライラが前に出るから、このダークエルフと後方から援護を頼む。‥‥くれぐれも獲物を奪われるなよ?」


この3日間、カレル達は4人で訓練と模擬戦を行っている。ある程度実力を知らなければ、戦闘時における連携が上手く取れないからだ。もっとも、メディアの化物ぶりを再認識する結果となり、カレルとセリスは実力の違いを痛感していたが。


「師匠、分かっている。俺も仕事で遅れは取りたくないからな。今回の依頼は、果樹園を荒らす泥棒の捕縛だ。犯行時刻は、深夜から明け方にかけて。胡椒やメロン等の高価な物だけ盗んで、安い果物とかは、全く手をつけていないな」


「明らかに人か魔族の仕業ですね。高価な物ばかり狙うのは、転売目的。しかし、人がこんな熱帯雨林の奥深くにたどり着くのは不可能でしょう。盗品を輸送する時点で、獣人達にばれますし。メディア。魔族だとしたら、どの部族だと思いますか?」


ライラの問いかけに、メディアは果実を奪われた木々を調べる。魔法で泥棒達の痕跡を調べた彼女は、深いため息をつくとライラに報告する。


「姫様。心苦しいのですが、敢えて申し上げます。私の考えでは、ヴァンパイアの仕業だと考えます。まず、獣人達が全く気付いていない。彼らは感覚が鋭敏ですから、並の侵入者だと気付くはずです。幻惑の術や霧に姿を変えれるヴァンパイアは、警備の目を欺くのは簡単ですから」


「メディアの分析は的を射てるな。他の魔族だと、派手に暴れて森が焼けるか、破壊されてるだろうし」


「師匠、俺達は有利な状況にある。同族であるライラとヴァンパイアに仕えていたメディアがいるからな。犯人の名と姿が確認出来る」


体が大きいオーガやドラゴンは森の様子から除外、アンデッドやゴブリン、オーク等の知能が低い種族は採集作業は無理だ。となれば、魔族かヴァンパイアが残るが、誇り高い魔族はこんな盗人のような振る舞いはしない。消去法でヴァンパイアの仕業と分かり、目に見えて落ち込むライラ。


「ヴァンパイアは気高い種族であり、常に高貴な振る舞いを心がけよ。それが、初代様の教えだったんですが」


「しかし、ヴァンパイアって格式だ何だとうるさいだろ。盗人の真似事してたら、まずいんじゃないか?」


「はあ、何も分かってらっしゃらない。ヴァンパイア一族が窮乏したのは、カレル様とセリス様が原因ですよ。かたやヴァンパイアの僕を3万近く滅ぼし、かたやヴァンパイア王を討ち取ったのです。人材も物資も失い、領地は召し上げられて砂漠に追いやられました。ここまで追い込まれたら、生きる為に何でもすると思いますが?」


「‥‥あの戦いかよ。俺が殲滅の魔術師の異名を得た。後始末が大変だったのを覚えてるぜ」


かつて、ヴァンパイアの僕と化した人々が軍勢となり、ある国に押し寄せて来た。その際、2人が矢面に立って戦っている。セリスとヴァンパイア王の戦いが長引き、僕達により城門がこじ開けられそうになった。


カレルはすぐに腹をくくると、最大殲滅魔法を彼らに向けて放つ。僕達が消し飛び、地面に大穴を開けた魔法を見て、ヴァンパイア王の動きが止まってしまう。そこを見逃さずに、セリスは彼の心臓を聖剣で貫き、ゴッドブレイカーで消滅させている。


「しかし、あれは戦争だ。我々にではなく、罪はヴァンパイア側にある。あの人数で吸血されて、僕を増やされては敵わんからな。うん? どうやらお客のお出ましだな」


森の奥から、10人以上の気配が近づいてくるのが分かった。4人は武器を構え、魔力を溜めつつ敵が来るのを待ち構える。しばらくして、ヴァンパイアの集団が目の前に現れた。


彼らは驚いている。全く気配を感じさせず、迎撃態勢を整えていたカレル達に。だが、集団のリーダーたるヴァンパイアが彼らの動揺を素早く抑える。


「ふん、仕事を邪魔しおって。大方、警備に雇われた傭兵であろう。おい、まずは奴等を倒すぞ。それから、胡椒や果物を奪えばよい」


リーダーの命令に、ヴァンパイア達は慌てて4人に襲いかかるべく動いた。しかし、時既に遅い。


「‥‥隙があり過ぎだな。とりあえず、グラビティフィールド!」






次回より、ヴァンパイア達の受難が始まります。7話で出せなかったライラのお姉さん登場。

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