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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第2章 商会とヴェネルセの改革、大戦への介入
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第27話 ガルディ枢機卿の敗北

片や、魔剣とつばぜり合いをしたかと思えば、次々と傀儡魔剣士を斬り捨てるライラ。片や、炎の魔法で焼き尽くしながら、彼らの攻撃を紙一重でかわすカレル。傀儡魔剣士の思わぬ苦戦に、フレーブは、苛立ちを募らせる。


「ええい! 貴様ら何をやっている? たかだか2人、さっさと殺せ。殺すのだ!」


「「「「「「‥‥了解」」」」」」


「無駄な足掻きをするものだな。このような輩に、負ける私ではない!」


「少佐殿、キャラになじんできましたね。では、私も戦うとしよう。このような生ける屍兵なぞ、浄化してくれる!」


傀儡魔剣士は、フレーブの命令に従いカレル達へと攻撃を重ねる。だが、傷1つつけられぬまま、彼らはただ返り討ちにあうだけだった。魔法をまとった両手で魔剣を破壊しながら、カレルはフレーブに迫る。


「どうした、ガルディ枢機卿。君は戦わないのか? 部下である傀儡魔剣士だけ戦わせるとは、良きご身分のようだ」


カレルの嘲りを受け、怒りをあらわにするフレーブ。魔力を高めると彼にめがけて、それを解き放つ。


「ふん、少佐とやら。少しは出来るようだな。だが、それもこれまでだ。喰らえ、フレアバースト!」


フレーブが満を持して放った業火は、カレルに着弾して爆発した。傀儡魔剣士ごと吹き飛ばすその威力は、味方ですら恐れる程だ。爆煙が晴れ、カレルがいた場所には何も無かった。自分の魔法の威力に、フレーブは満足気な笑みを浮かべる。


「はっはっは! どうだ、私の魔法は。魔族に与する人間風情など軽く一蹴してくれたわ。者共、勝どきをあげよ!」


「「「「うおおおおっ!!」」」」


フレーブの勝利の叫びを受け、ノルス王国の将兵達も勝どきをあげる。しかし、それはぬか喜びに終わってしまう。何故なら、死んだと思った者の声が戦場に響き渡ったからだ。


「‥‥どこを狙っている? いかに強力な魔法も、当たらなければどうと言う事は無いな」


いつの間にか上空へと逃がれていたカレルは、緩やかな速度で地上へ降りてくる。最上級炎魔法を歯牙にもかけない様子に、さしものフレーブも青ざめた。


「あ、あれを避けたと言うのか。魔剣士達よ、私を守るのだ。他の者は、捨て置け!」


「見下げ果てたものだな、このような愚物が枢機卿とは。教会も腐りきっているという事か。ならば、私が引導を渡すまでだ」


襲いかかる魔剣士達を倒しながら近づくカレル。そんな彼に対して、フレーブは護衛の魔剣士をけしかける。この時、フレーブは気づいていない。密かに1人、側面から迫っている事を。


「う、うるさい。このような所で私は死なん! 私は教皇となり、いずれ‥‥」


「ふっ、甘いな。保身しか考えぬ己の身を呪うが良い。姫、今だ!」


「隙有り、ガルディ枢機卿覚悟!」


目の前の戦いに気を取られたフレーブ達。その間隙を突く形で、ライラがフレーブの心臓めがけ剣を突きを放つ。完璧な奇襲に、さしもの彼も死を覚悟する。


「うわあああ! あ、あれ? ローブが破れただけだ。た、助かったのか」


「くっ、後少しで倒せたものを。誰だ、邪魔をしたのは?」


ライラの繰り出した渾身の突きは、ローブを引き裂くだけに終わった。突然現れた風の魔法壁がフレーブの周りを包み込み、剣速が減衰したからだ。すぐに、傀儡魔剣士が集まってフレーブを守る壁を作る。


「わ、私はまだ死ぬ訳には行かぬ。退くぞ、皆の者! 聖都に戻って、態勢を立て直す。テレポート!」


逃げるのは速いフレーブ。カレルが止める間も無く、聖都へと転移してしまった。戦場に残ったのは、絶望にうちひしがれるノルス王国の将兵達だけだ。カレルが彼らに目を向ければ、慌てて目を反らす者が多い。


「ガルディ枢機卿が逃げたぞ。俺達も撤退する! 隊列を乱すな」


「王都に戻り、態勢を立て直す。こ、ここは退くんだ」


「お前ら、落ち着け! 勝手に逃げ出す者がいるか!」


全軍の戦意喪失を見てとった将軍達は撤退命令を出す。だが、兵士達の隊列も何も無い無秩序な退却ぶりに、受けた恐怖心の大きさに彼らも気づく。ノルス王国の将軍達は、今後の魔族との戦いに大きな不安を覚えるのだった。


「少佐、追撃しますか? 今なら、かなりの数を討ち取れますが」


「我々の任務は終わっている。あまり、欲を出せば後が怖いぞ。それに、邪魔者もいるしな」


カレルの視線の先には、1人のエルフが立っていた。気配も感じさせず、近くまで迫っていた事にライラは驚く。


「やれやれ、様子を見に来てみれば敗北とはな。ノルス王国の王都も妖魔術師団により、陥落し滅んだ。ガルディ枢機卿は失脚確定か」


「あの老人、どうやら我々もはめたようだな。ガルディ枢機卿と争わせ、漁夫の利を得る。なかなか強かな陰謀家だ! ところで、12聖騎士のミライナ殿。研究者として名高い貴女が、何故戦場に?」


「敵ながら苦労しているようね。ガルディ枢機卿の様子観察よ。聖騎士の集まりが悪くて、研究者の私まで前線に引っ張り出される。面倒臭くて仕方ないわね」


銀縁眼鏡をかけ、緑色の魔術師のローブを着ている彼女。普段は戦場に全く出てこない。聖剣への魔力付与や魔術道具の作成等の功績で聖騎士になった変わり者である。とはいえ、その実力は本物であり、エルフの中では女王に次ぐ力を持っている。


「まさか、出撃1日目で撤退とは話にもならない。まあ、あんな最低な男どうでも良いわ。仕事も終わったし、帰って研究に戻らないと」


「えっ、私達と戦わないのか?」


「君達の実力は見させてもらった、それで十分よ。仮にここで私が勝っても、ノルス王国を失った事には変わりは無いわ。だから、研究に戻った方が人間側に益がある。それじゃ、お2人とも。またお会いしましょう」


そう言うや、ミライナは転移魔法で去っていく。あまりに早すぎる彼女の去り際に、ライラは戸惑いを覚えた。


「‥‥エルフって、自分達以外の種族に関心が無い者が多いと聞きます。彼女もそうなのですか?」


「彼女は、まだ他種族に関心がある方だ。酷いのになれば、エルフ領から全く出ずに一生を終えるエルフもいる。そろそろ、私達も戻ろう。この口調と声も疲れるからな」


「そうですね。では、戻りましょうか。テレポート!」


カレル達もヴェネルセへと帰還し、物言わぬ屍が転がる戦場には静寂が戻った。魔王軍、人間側双方の戦死者が1万人を越えたノルス平原の戦いは、こうして幕が下りた。


この敗戦により、フレーブの立場が危うくなり、彼にある決心をさせてしまう。後世に教会勢力が崩壊する序曲と言わしめた騒動へと発展し、歴史上の重大事件とされたガルディ枢機卿の乱。その実行は、もはや間近に迫っていた。












次回、マルフォンとの話し合い。人間側の動きを教えてくれます。

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