表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第2章 商会とヴェネルセの改革、大戦への介入
27/34

第22話 ダークエルフ領の港湾整備開始

ある日のヴェラとメディアの会話


メディア「ヴェラ。どうしてカレル様との戦い、手加減したの? 貴女なら瞬殺出来たでしょうに」


ヴェラ「えっ、えーーと。うん、長く戦った方が面白そうだったからさ! やっ‥‥」


メディア「素直に好きになったって言えば良いのに。ヴェラ、貴女も可愛いですね。戦場で敵に恋するなんて」


ヴェラ「こ、この性悪エルフ! 分かってるなら聞くなあああ!!」



書類仕事をしていたライラとメディアを引っ張りだして、ヴェラ達は転移魔法でダークエルフ領にある港へ向かう。獣人達や人間、ダークエルフの男達が力を合わせ、ミスリル鉱石を運び出す為の港町を建設していた。


牛人族の戦争で奪ったを使った水運とセリス、カレル両名の力で作られた道路を使った陸運。この2つが合流する港町には、商館や鍛冶屋等の建物が立ち並び、娼館や酒場は男達の活気で満ち溢れている。


「鉱山用の港は出来上がりつつある。ただ、他の貨物と人を運ぶ港が出来てないんだ。カレル、手を貸してくれない?」


ミスリル鉱石を運ぶ船や波止場は、最優先で作られた。ヴェネルセやビスティ王国、魔王軍に鉱石を輸送する為だ。しかし、他の貨物や人を運ぶ船、波止場がまだ作られていない。他にもすべき仕事があり、なかなかヴェラもカレルも手がつけられなかった。


「確かにな。港がこれだと、イローナの考える企画に参加出来ないか。今はミスリル鉱石を運ぶ船を使ってるが、鉱山が稼働してからは使えなくなるし。ライラ、ヴェネルセで急を要する俺の仕事はあったかな?」


「大丈夫です。しばらく、大型の仕事はありません。カレル様の魔法である程度作って、後は作業員に任せましょう。メディア、他に何か意見はありますか?」


基本的に、ライラは自分で考えて政治を行える。しかし、ここまで複雑な利権が絡んだ町を統治した事がない。そこで、人生経験と知識豊富なメディアに考えを尋ねる


「レーナに言って、最精鋭の警備隊を送ってもらいましょう。生半可な者では対応しきれません。文官は、ヴァンパイア一族の忠誠度の高い優秀な者を登用。賄賂や不正の防止策ですね。さらに統治はカレル様直轄とし、税金は‥‥」


「ちょっと、ちょっと。どうして、カレルの直轄なんだよ!! ここは、ダークエルフ領だよ?」


次々と考えを述べる幼なじみを、ヴェラは慌てて止めた。何が言いたいのか分かったメディアは、彼女の機先を制する。


「ヴェラ。この港町の利権は、全てヴェネルセに集約されます。我々が、人、物、金を全部準備しましたもの。一応、租借地扱いとなりますが期間はこれ位で」


メディアに渡された書類に、目を通すヴェラ。そこに書かれた租借期間を見て、彼女は目をむいた。


「期間は‥‥ミスリル鉱山閉鎖まで!? メディア、実質利益は渡さないって、言ってるのと変わらないじゃないか!」


「今のダークエルフ領に、この港町は荷が重すぎます。ヴェラ、この町に集う荒くれ者や豪腕商人と、貴女やダークエルフだけで渡り合えます?」


メディアの説明を聞いて、ヴェラは考え込む。7代魔将の責務がある自分は、この町に長くは滞在出来ない。領内は再建中であり、人材も足りないし、人を雇う資金も無い。無い無い尽くしの状況に、ヴェラも白旗を上げる。


「うん、無理そうだね。分かった、利権は諦める。ただし、土地は貸してるんだから、便宜をはかって欲しいんだ。ヴェネルセに払う関税を無しにしてくれる? ヴェネルセ以外に輸出するダークエルフ領の品目全て。そして、ヴェネルセの港使用権と自由通行権も」


ただでは起きないヴェラ。自分の物に出来ない港町。ならば最大限利用しようと考えての発言に、カレルは心底感心する。さすがに7大魔将の1角を担うだけの女性だと。


「ダークエルフ領の主要産物は、養蚕に金細工、ワインと小麦か。ビスティ王国は、香辛料と果物に木材等が主要産物だからイローナとは利害がぶつからないな。分かった、ヴェラ。ダークエルフ領の品目に関税をかけないと約束しよう。自由通行権と港使用権も認める」


ヴェラの要求を、カレルはあっさり認める。その態度に、イローナは怒りを覚えて抗議した。


「カレル、待ちなさい! どういう意味か分かってる? 人間や獣人達の中には、ダークエルフ領から産出される絹やワインに、金をつぎ込む輩が多いわ。なのに‥‥」


「ダークエルフによる直接取引の場合は、関税を取る。あるいはヴェネルセ商会を介して売り出し、手数料を取りたい。イローナの考えは分かるが、ヴェネルセが稼ぎすぎれば他者の反感を買う。それに、ヴェラの顔も立てる必要もある。彼女は本来我々に下手に出なくても構わないんだぞ?」


ヴェラの実力を知っているカレルは、必死にイローナを説得する。2人の勝ち負けがつかなかったのは、ヴェラが手加減していたからだ。本来の彼女の実力は、魔王軍で魔王と魔竜公についで3番目らしい。


真祖のヴァンパイアとなったセリスやカレルは、以前よりも強くなった。しかし、そんな2人をまとめて相手にしても、軽く倒せる程に強さの次元が違う。


「えっ? そ、そんなに強いの。食べ物と甘い物が大好きな大食漢エルフなのに?」


「ええ、間違いなくヴェラは強いですよ。じゃなければ、人間の国を3国も滅ぼせる訳がありません。傀儡魔剣士100名を秒殺出来るんですから。普段は、天然ですけど」


余計な事を口にするイローナとメディアに、ヴェラのこめかみに青筋が浮き上がる。男らしい性格とはいえ、女性。ヴェラも好きな男の前で、私生活を暴露されては穏やかでいられない。


「イローナ、大食漢言うな。メディア、天然言うなよ。カレル、僕の立場を考えてくれてありがとう。ところで、ミスリル鉱山に関してはどうする? ある程度の坑道を僕らの魔法で掘削。空気用の縦穴を作って、後は鉱山作業員に任せる?」


「それで構わない。バランからは、ミスリル鉱石の早期納入を頼まれているからな。ライラ、鉱山作業員の集まりはどうだ?」


「悪くはないです。でも、人間側のスパイが紛れてるでしょうね。作業員割合は人間5、獣人3、ダークエルフ2ですから。特に捕虜の方々に対する監視は、厳に行うべきかと」


「‥‥人間の作業員か。確かに、スパイが紛れてもおかしくない。まあ、人手が必要だから排除は出来ないけどな」


ダークエルフは、メディアとレーナが連れてきた犯罪エルフ。獣人は、イローナが募集したビスティ王国からの出稼ぎだ。人間だが、これには3つのルートからの参加者がいる。


1つは、フィンが集めた鉱山師やベテラン作業員達。高給で各地の鉱山から引き抜かれた精鋭で、意欲と忠誠心が高い。妙な連中を近寄らせず、監視を怠らなければ裏切る可能性は低い。


1つは、魔王軍に捕まった捕虜達。食料や実験材料に使われそうになった彼らをカレルが引き取り、鉱山作業員とした。生き残っているのは、貴族や騎士がほとんどだ。雑兵は真っ先に突撃し、戦死するのが常である。


立場の激変に悲喜こもごもの者が多く、不平不満があれば寝返りかねない者達だ。警戒が必要だろう。


最後の1つは、鉱山奴隷と呼ばれる人々。人間側から輸出された彼らは、犯罪者や貧民等で構成された者達。メディアが行った奴隷契約によって、彼らは完全に支配下に置いてある。最下層の彼らが、もっとも安全な集団とは、なんとも皮肉なものではあるが。


「よし、まずは港湾整備からだ。整地と大体の枠組みを作ったら鉱山に向かう。ヴェラ、手伝えるか? 人間との戦争が始まったみたいだが」


「大丈夫だよ。僕は、むしろ出るなって言われてるから。ゴブリンやアンデッドに堕天使なんかが、頑張って戦ってるからね。手柄を横取りする気はないし、彼らにも経験を積ませなきゃね。さあ、カレル。僕らの共同作業、始めようか!」







次回、人間の商人来訪。カレルの知り合いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ