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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第2章 商会とヴェネルセの改革、大戦への介入
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第21話 台風娘イローナ

「こんな所にいましたか。ヴェラ様、お話があります」


セリスを更迭した翌日、イローナは精力的に動き始めた。まず、セリスに登用された幹部の解雇とヴェネルセ追放を行った。これは不満分子として商会に残すよりも、大金を渡して外に出した方が害が少ないと考えたからだ。その後釜に、優秀な人間を幹部登用したおかげか、人間達の動揺は少ない。


「イローナ。君はよく動くし、働くよねえ。でも、あまりに性急過ぎるのも問題だよ?」


「‥‥あのヴェラ様が、マナー通りに紅茶を飲んでる。明日は槍が降るわね」


「それ、ひどくない! 僕だって、頑張ってマナー覚えてるんだよ」


屋敷の庭のコテージで、優雅に紅茶をたしなむヴェラ。彼女は昨日の今日と言うこともあり、ヴェネルセの自分の屋敷に滞在している。領主館や商会のある地区と隣接した高級住宅地に移り住んだのは、ヴェラが最初である。その理由は極めて単純であった。


『見張らしも良いし、街も発展出来そう。何より、カレ‥‥。あれ、イローナ。どうして、そんなに不機嫌なの? 一応お客様だよ、僕!」


『これ以上恋敵は増やせない、潰さなきゃ。ヴェラ様。高級住宅地の価格ですが、土地と建物を合わせますと‥‥。あら、あら金貨2000枚になりますよ』


『ねえ、キレてもいいよね? なんで、僕だけ価格が2倍近いんだよ! 分かった、イローナ。とことん話し合おうか?」


イローナとちょっとした舌戦になったが、最終的にヴェラが移住権を確保した。それ以来、ヴェラとイローナは顔を会わせる度、舌戦を繰り広げる仲に。とはいえ、仲が悪い訳では無い。互いに認めあう恋敵という位置付けだ。


「ご安心を、ヴェラ様。まず、指針を出しているだけですから。全員に、計画は焦らず丁寧に動いて下さいとお願いしてありますので。ヴェラ様。この企画に、ダークエルフも参加して欲しいのです。伏してお願い申し上げます」


ヴェラは、イローナが差し出した書類を読み始める。


「各部門における商会1位を設定。最も優れた品を出した店や工房、農園等に与える称号とする。商会1位になれば、税金免除やミスリル使用優先権。さらに、ビスティ王国と魔王軍の上層部に面談の機会を与える。って、とんでもない称号じゃないか!」


「はい、ダークエルフ領では、養蚕と金細工にワインが有名です。その生産者にも参加してもらい、商会1位を競ってもらいます。ただし、罰則規定が有りますので、気を付けて下さい」


ヴェラは、書類に書かれた罰則規定を読み始める。書かれている内容は、以下の通りだ。


1つ、審査はビスティ王国や魔王軍、ヴェネルセの領主等が行うが、関係者に賄賂やその他準ずる行為を行ってはならない。


1つ、他の参加者に対する妨害や脅迫等の犯罪行為は厳禁。


1つ、名前を変え、他者の作った品を自分が作ったと主張してはならない。


以上の罰則規定に違反した場合は、農園や工房ならば勤めし者全員。個人であれば、家族全てを総身丸刈りの刑に処す。レーナ=マルロン及びメディアより


「要は、不正はするなって事でしょ? ところで、この総身丸刈りの刑って何なの?」


罰則規定を読み終えたヴェラは、イローナに初めて聞く刑罰について尋ねる。すると、イローナは少し顔を赤らめながらも答えた。


「身体中の体毛を全部刈るそうです。髪の毛や眉毛に脚の毛、それに‥‥。だ、大事な所の毛まで全て」


「うわあ、エグいね。さぞ、恥ずかしい思いをするだろう。考えたのは、メディアっぽいけど」


昔からメディアは過激な罰を考えるのが得意で、自分をいじめたダークエルフを実験体に磨きをかけていた。おそらく、その中の1つに違いない。ため息をつくヴェラ達の前に、使用人に案内されたカレルがやって来る。


「おはよう、2人とも。昨日はすまなかった。俺の‥‥」


「はい、はい。謝らないの。カレルの責任だけじゃないんだから。ところで、セリスはどうしてるの?」


ヴェラの問いに、カレルは心底困った様子で答える。昨日の会議から、ずっと部屋から1歩も出ていないのだ。引きこもった当初は、セリスの泣き声と散発的に調度品が壊れる音がした。しかし、今朝からは部屋より物音が1つもしない。それが、かえって怖い。


「あれから、ずっと部屋に引きこもってる。食事は食べてるみたいだけどね。メディアいわく、『心にA〇フ〇ー〇ドを張ってるから、しばらく出てきませんよ?』って、言われたんだが意味が分かるか?」


「相変わらず、言ってる意味が分かりませんね。メディア様って、本当に何者でしょうか?」


「ごめん。古い付き合いの僕でも、メディアの言動が訳の分からない時があるから。そうか、セリスは重症そうだね。ところで、イローナ。君はセリスを恨んでいるけど、どうしてカレルとリーナは許したのかな? 同じガーランド出身なのに」


ヴェラの疑問に対し、イローナは呆れたように言い返す。


「ヴェラ様。その当時、カレルとリーナはまだ子供ですよ。あの女は16歳の上に、当事者の娘です。成人しているから責任を追求しているだけですが、何か?」


殺気と怒気が混ざりあった視線を送るイローナ。見れば、狐の耳と尻尾の毛が逆立ち膨らんでいる。ヴェラはカレルを見るや、諦めの表情で首を横に振る。


「‥‥カレル。よくこの状況で、ヴァイツァー商会会頭にセリスを据えたね。メディアの例えじゃないけど、たき火にガソリンをぶちまけるのと変わらないじゃないか」


「だな。イローナの怒りの深さを分からず、師匠の力量を測れなかった俺の責任だ。すまなかったな、イローナ」


頭を下げたカレルを見て、慌ててイローナは怒りを引っ込める。命と商売の恩人で、想い人たる男のそんな姿を見たくなかったからだ。


「だぁから! カレルが謝る必要なんて無いから。あの女を助ける為に必死だった貴方は、どんな忠告を聞かなかったもの。まあ、カレルが原因で、傀儡魔剣士になっちゃったから責任感じていたのでしょう? それをあの女は!」


「イローナ、堂々巡りになってるよ! 怒りを抑えないと。カレル、場所を変えようか? 僕もカレル達に相談事あるから」







次回、ライラとメディアを加え、ダークエルフ領へ。商会へのてこ入れと領政改革の始まりです。

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