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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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第2話 師匠との再会

酒場で出される料理を変更しています。

「バルザの酒場に明日もいかねえとな。久々の牛肉か、楽しみだぜ。あいつも気を使いやがって。さて、明日は何処から探しに行こうか」


王都東に広がる森の中、星明かりを頼りにカレルは歩く。黒のローブにマント、右手に杖を持つ人間。本来なら襲いかかるはずの野生の魔物や森に住む獣人達。そんな彼らも、カレルには一切近づかない。仕掛けたら、確実に死ぬ事が分かっているからだ。


以前、カレルに絡んだ虎人数名が風の魔法で肉体を細切れにされた。彼らの断末魔の悲鳴と苦悶は、森に住む生物の耳に届いている。結果、彼が森を通るだけで魔物も獣人も道を譲る程に恐れられていた。故に誰も彼の前に立ちふさがる者はいない。


しかし、今日は違った。森の中にあるカレルの家、その扉の前に誰かが座っている。カレルは、杖に魔力を込めると何者かに問い質す。


「おい、俺はカレル=バーネット。そこは俺の家だ。誰なのか分からないが、用が無いなら去れ」


カレルの声が聞こえたのか、人影は立ち上がる。木々の間から漏れる星明かりに照らし出されたのは、彼にとって驚くべき相手だった。


長い黒髪と切れ長の目が印象的な女性は、セリス=ヴァイツァー。カレルと同じ12聖騎士の1人であり、師匠でもある。大戦時にヴァンパイア王と部下を打倒し、アンデッド軍団を半壊させた強者である。


「相変わらずだな、カレル。10年振りに会ったのに、最初に言う言葉がそれか? まあ、記憶を失っていた私が言えた義理ではないがな。ったく、あの教皇。いつか殺してやる」


「し、師匠なのか? でも、人形魔剣士にされて記憶を消されたんじゃ」


類いまれな実績を残したセリス。だが、教会や各国の王は、その並外れた実力に恐怖を覚えたらしい。教会に伝わる傀儡魔法を使い、彼女を洗脳。自分達に都合の良い人形魔剣士として、前線に駆り出す。人形魔剣士は、術者に命じられるまま敵を殺す存在。教会の最凶兵器と人魔両陣営からの悪名が高い。


カレルは彼女を救うべく、行動を起こすも12聖騎士の半数が敵に回った事。そして、無理に魔法を解除すればセリスが死ぬ事が分かり、救出の機会を窺っていた。


ところが、1年前にセリスが亡くなったと各国に通達があった。カレルは情報を収集し、真偽を確かめたが詳細は不明。それから、彼はセリスを探す旅を始める。しかし、何の手がかりも無く、半ば諦めていた所に彼女の方からやって来たのだ。驚きもする。


「魔剣ヴィルトが、私の記憶を保護してくれたらしい。教皇や教会の連中に捨てられた私に、こいつは記憶を返してくれたよ。だからこそ、会いに来たんだ。弟子であり、最愛の男であるカレル。君に‥‥ゴホッ、ゴホッ」


急に咳き込み始めたセリスを見て、近寄って抱き寄せるカレル。


「師匠! しっかりしろ。何がどうなってる? とりあえず、解析の魔法をかけ‥‥。いや、先にベッドに寝かせるか。って、うわっ!」


突然、弱っていたはずのセリスがカレルを地面に押し倒す。それと同時に彼女の体に変化が起きた。長い黒髪は白銀に染まり、唇からは鋭い牙が伸びる。30近い容姿だったのが、20代前半の姿に若返っていく。


「強くなっても、昔から女に甘い所は変わらないな。実は人形魔剣士になった振りをしていたのさ。この力、ヴァンパイア王の力を使いこなす為にな。10歳近く若返ったのは、女として嬉しい誤算だったよ」


赤い魔眼から圧倒的な魔力が放たれ、カレルを威圧する。稀代の魔術師ですら、何の手出しも出来ない状況に焦りの色は濃くなる。今の自分ではとても勝てない事が分かったからだ。


「なんで師匠がヴァンパイアになってんだよ。ヴァンパイア王は、倒したんじゃなかったのか?」


「倒したんだが、呪いを受けてな。『余の呪いによって、貴様は真祖のヴァンパイアとなる。最強の僕を魔王様に捧げ‥‥』とか最期に言い残した。しばらくは何とも無かったんだが、血が欲しくなるし、昼は動くと疲れが溜まるのが分かる。かといって、人間の血を吸う訳にはいかないだろう? だから、邪竜退治に参加したのさ」


「邪竜を退治したのは、血の供給源の為か? 邪竜の力にヴァンパイアの魔力って、滅茶苦茶強くなるんじゃないか!?」


高位のヴァンパイアは、吸血した相手の強さをも吸収してしまう。邪竜はドラゴンの中でも上位に位置する存在で、人間だと12聖騎士クラスの実力が無いと瞬殺されかねない。そんな邪竜を4匹も倒してるのだ。吸血した竜の血は、莫大な量となっているだろう。それに比例して強くなっているのは、当然の成り行きだ。


「そうだ。魔王は無理でも、7大魔将位なら軽く倒せると思うぞ。という訳で、カレル。君にも私の力をくれてやる。人間に吸血するのは、お前が始めてだからな。大丈夫、痛くはしないから」


「‥‥ち、ちょっと待て、師匠。おい、俺に拒否権は無いのか! 痛い、痛い、痛い!!」


セリスに首筋を噛まれ、カレルもまたヴァンパイアとなった。だが、彼の受難は終わらない。初めての吸血で興奮した彼女は、自分の服を脱ぎ出してしまう。張りのある肌と豊かな胸が、カレルの目の前に露になった。自分の体をさらしたセリスは、かつて愛しあった男のある部分を見て舌舐めずりをする。


「10年ぶりだからな。最後まで付き合ってもらうぞ。カレル、嫌とは言わないだろうな?」


「俺、前世で何かしたのか? 10年振りに会った師匠で恋人だった女が、ヴァンパイアになって襲いかかって来る。って、痛っ! 分かった、分かりましたよ! 脱げば良いんでしょ、脱げば!!」


久々の逢瀬を楽しむセリスと流されるカレル。そんな彼らを森の中から見ている者がいるとは気づかなかった。


「2人ともヴァンパイアになりましたか。あの強さなら、姫様の実戦相手に相応しいようですね。早く、戻らねば」








最強師弟誕生。次回、セリスをヴァンパイアにした張本人の娘がやって来ます。

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