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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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第15話 戦争で利益を得る者達

ヴァイツァー商会による準備が終わった翌日、牛人族の陣営に虎人族や猿人族が合流。部隊編成が終わった彼らは、ダークエルフ陣地に向かって突撃を開始。遂に戦端が開かれた。その様子をカレル達が所有権を得た岩山から見ているとバランが転移して来た。


「どうやら上手くいったようだな。それで、セリスよ。 この山に眠っている鉱物資源は何だ? 多くの物資と引き換えに得たのだ。ただの採石場ではあるまい?」


バランにも一連の商売の流れは説明していたが、今回の取引に不審を抱いたのか直接出向いたようだ。そんな彼に、セリスは笑いながら大陸全土で間違いなく大事になるであろう情報を語り出す。


「バラン様、お耳が早いですね。もちろん、ただの採石場ではありませんよ。カレルやレーナが調べた所によれば、ミスリル鉱石の鉱脈がかなり眠っているとのこと。しかも、品質も良好との事です。今回、我々は大きな利を得ました。バラン様。我々に依頼して下さり、誠にありがとうございます」


ミスリル。聖剣や魔剣の原料にして、魔族人間共に欲しがる金属の1つだ。幻の鉱物と言われるオリハルコンやクリスタル等より、希少価値と強度は劣る。


とはいえ、ここ10年近く新規の鉱山が発見されていないが為に、魔族や人間が血眼になって探していた。大戦を前に聖剣や魔剣の需要が高まっているので、ミスリルは幾らでも欲しいからだ。それをヴァイツァー商会が見つけたと言う。バランは、すぐさま探りを入れる。


「‥‥おい、貴様ら。よもや独占を企むまいな? ヴァイツァー商会のさじ加減1つで、軍事的均衡が大きく動きかねん。そのような状況となれば、人間、魔族双方が商会を危険視するぞ」


「そ、それは‥‥」


「バラン様、イローナ=フェレールと申します。既にビスティ王国より、鉱物資源の分配を提案されております。バラン様にも分配するつもりでしたので、ご心配なく」


答えに詰まったセリスに代わり、イローナが説明を始める。独占はせず、魔族と人間双方に提供する事、バランとファーブルの許可無く他国には売らない事を告げるとバランはホッと胸を撫で下ろす。


「‥‥ふう、なら良い。独占されて、聖剣や魔剣の大量生産なんぞされては敵わんからな。とりあえず、年間採掘量から15%程のミスリルを我々に分配してもらおう。イローナよ、ちなみにビスティ王国には?」


「同じく15%です。残りのうち、50%を商会が確保。20%を他国に売ろうと考えております。商会分のミスリルを原料とした製造比率は、聖剣や魔剣が20%、農機具や船舶等の工業品に30%の予定です。他に質問はございますが?」


ミスリルの使い道まで考えている事を知り、バランは頭をかかえる。彼自身が商会を調査してみれば、聖騎士が3人所属しているわ、ビスティ王国筆頭商人であったフェレール商会の元会頭がいるわ、造反したはずの策謀家は戻っているわで驚きを通り越して呆れたものだ。


「‥‥その20%の行き先が怖いんだがな。売り主は、出来れば魔族にしてくれ。後は、ビスティ王国関係のみだ。聖剣や魔剣も売り主を必ず報告してくれ。とりあえず、ミスリルの件はこれまでだ。さて、カレルよ。戦はどうなっている?」


「はい。現在、牛人とダークエルフ双方に死傷者が続出していますね。戦況はダークエルフ側が圧倒的に有利。まさか、7大魔将の1人であるヴェラが、こんな小規模な戦に出てくるとは思いませんから」


カレルが言うヴェラとは、ダークエルフの中で最強に近いと呼び声名高い女性であり、7大魔将の席次は3番目に位置している強者である。本来なら族長になってもおかしくはない。


だが、彼女の叔母である現族長が、権力に固執し譲るのを拒否。本人も面倒事は嫌だという理由で、現状維持に落ち着いた経緯がある。


そんな彼女にとって、今回の件はかなりの面倒事だ。それなのに出て来た理由が分からないカレル達を見て、バランは原因たる人物にまなざしを向ける。


「そこにいるメディアのせいだな。今、砦で戦っているダークエルフ達の村は、彼女の故郷だ。父上から聞いたのだが、メディアは故郷でいじめられていたらしい。『かなり陰湿な手口だったから、相当えげつない復讐を企んでいるかもしれぬ』と父上がヴェラに伝えたら、慌てて出陣したぞ」


「ハッハッハ、何ヲ仰イマス。ヤマシイ事ハ何モシテマセンヨ?」


「その言動からして、怪しすぎるわ! カレルよ、商会の土木担当は貴様だったな。この歩く危険エルフから、何かおかしな事を指示されなかったか?」


バランに問い質されたカレルは、すぐにある事を思い出す。陣地完成の後で、追加工事を頼まれたのだ。


「‥‥おい、メディア。ダークエルフの陣地の下に作った倉庫に、何を入れやがった? ただでさえ一晩での陣地構築で余裕が無いのに、半ば強引に作らせた理由はそれか?」


「カレル様が作った後で、確か壺や木箱を運んでましたね。メディア、あれは何ですか? 主人の命令です、答えなさい」


陣地構築を頼まれたカレルとライラの疑問に、メディアは苦虫をかみつぶす。


「ちっ、魔王様も余計な事を言ってくれますね。折角、陣地の地下に油壺と火薬をしこたま仕込んだのに。〇部〇察ばりの大爆発であの連中を吹き飛ばす計画ですが、何か?」


「この馬鹿たれえええ! するなよ、絶対にするなよ? それと西〇警〇って何だ!? 詳細は後で聞くとして、陣地の上にヴェラもいるんだ。こんな小競り合いで7大魔将を死なす訳には‥‥」


「大丈夫ですよ、バラン様。ヴェラ、存外丈夫ですから。それと残念ですが、とうに手遅れですね」


メディアの言葉と同時に爆発と轟音が辺りを揺るがした。見ればダークエルフの陣地が吹き飛び、炎が周辺一帯を包みこんでいる。獣人もダークエルフも逃げ惑い、中には火だるまになった者もいて川に飛び込む者が続出。まさに阿鼻叫喚の地獄絵図と化している。


「遠隔操作出来る発火魔法陣を作成してみました。いやあ、上手くいきましたね。どうせ、全員処刑するんですから、ド派手に花を咲かせて差し上げましょう」


メディアの言う事は事実である。今回の紛争に関わった者達は、ヴェラを除き、指導者やその側近を全員処断する予定であった。王による再三の調停を拒否し、遂に戦争を引き起こしたのだ。当然すぎる処置だが、やり方が過激すぎる。しかし、復讐鬼メディアの隠れた意図を見抜く者もいた。


「バラン様、フィン=ヤルセンと申します。私も策士を自認する者ですが、メディア様には及びません。今回のメディア様の行為は、命令に逆らった者への見せしめであると愚考致します。この惨状をみれば、魔王様とファーブル様に逆らおうとは思いますまい」


「それにしたって、限度があるわああ! はあ、どう後始末つけたものか。とりあえず、生存者を探さなければ。ヴァイツァー商会の者共、手伝え。商会に所属するメディアの仕出かした事だ、拒否は許さん」


こうして、牛人とダークエルフの戦争は半日で決着がついた。勝者ヴァイツァー商会という戦争の当事者にとっては、空しすぎる結末で。









次回、戦争の後始末。バランとヴェラが苦労します。

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