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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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第14話 戦争前の売り込み ダークエルフ側

ダークエルフの村には、イローナが言う所の巨悪コンビが到着していた。警戒したダークエルフ達に弓を構えられる中で、ダークエルフの族長セナがやって来る。


「貴様、メディアか! ダークエルフ領より追放したのに、何をしに来た?」


「族長、お久し振りです。今回は牛人達と戦争をすると聞き、商人を連れて参りました。また、私が陣地構築を手伝います。‥‥魔王様より、伝言です。『俺の命令に逆らったのだ。結果は勝利しか認めん。負ければ、分かっていような?』だそうです」


メディアが魔王の言葉を告げると、セナはたちまち青ざめる。ダークエルフ族内では強硬論が強かった為に、魔王の命令に従えなかった。だが、魔王の怒りを知り、ようやくセナも命の危機を感じたようだ。


「わ、分かっている。皆、弓を下ろせ! それで、商人よ。何を売りに来たのだ?」


弓が下ろされたのを確認したフィンは、荷物を乗せた荷馬車の幌を剥いでいく。現れたのは、きらびやかな装飾が施された弓と矢筒、大量の矢だった。普段使っている弓と違い、見目が良い武具に目を煌めかせるダークエルフ達。それを見たフィンは、ほくそ笑むと雄弁に語り出す。


「ダークエルフの皆様、初めまして。ヴァイツァー商会副会頭のフィン=ヤルセンと申します。ダークエルフは弓の名手が多いと聞き、良い弓を売りに参りました。ご覧下さい、美しい弓でしょう? 金の装飾が見事な出来映え、ダークエルフの皆様に相応しい作りと考えます。材質は鉄で出来ていますので、強度も問題ありません。本来なら代金を請求致しますが、今回はメディア様のお知り合いという事ですので無償で提供致します」


「待て。人間に借りを作ると後が怖いからな。代わりに何か欲しい物があるか? 叶えられる願いなら叶えてやろう」


魔王の手前、人間に手助けしてもらって勝てましたでは具合が悪い。セナがそう考えると思っていた2人は、ここぞとばかりに攻める。


「では、族長。南にある岩山の所有権を頂きたく思います。それと河川の優先航行権を頂きたい。フィン様、説明を」


「セナ様。現在、ヴェネルセは街や港湾の整備計画を考えております。その為には、石材が必要なのですが思うように集まらないのです。需要が多く、供給が追い付かない状況に石材の値を吊り上げ、阿漕に儲ける奴らも出る始末。例を挙げますれば、船1隻に積載された石材の価額が金貨100枚だったのが、1週間後には金貨300枚になったのです。故に‥‥」


「分かった、分かった。貴方の事情には興味は無い。岩山の権利は譲ってやる。河川の優先航行権も与えよう。さっさと弓を譲ってくれ」


「はい、喜んで! こちら、契約書になりますのでサインをお願いします。後は陣地構築の件ですが、今夜魔術師を向かわせます。陣地の詳細については、こちらに書いてますので目をお通し下さい」


フィンの渡す契約書と陣地の内容を描いたメモをセナは受け取る。契約書にサインをして、メモを読み始めたセナは喜ぶ。これなら、獣人達に勝てる。ダークエルフは遠距離戦には強いが、近距離戦には弱い。それを補う陣地構築を見て、勝算が見えたらしい。


「ありがとう、メディアにフィンよ。これなら牛人どもを返り討ちに出来よう。メディア、里追放の罰を取り消す。好きな時に帰って来い」


「はい、ありがとうございます。族長、それではお元気で。次に会うのは、そう遠くないと思います。では、失礼します」


「セナ様。岩山の所有権譲って頂き、ありがとうございます。我々が有効利用しますので、ご安心下さい。それでは失礼致します」


こうして、フィンとメディアは空の馬車と共にダークエルフの村を後にする。御者台に座る2人は、村が完全に見えなくなると大笑いし始めた。


「ここで、不良在庫の飾り弓を在庫一掃で放出するとは。まあ、使えはするし、見栄えは良いでしょうけどね。戦場じゃ目立ってしょうがないでしょうに。そんな代物を売り付ける。フィン様、貴方もなかなかの悪よのう」


フィンが持ってきた弓は、某王国にて今月行われるはずだった結婚式に使う為に発注したものであった。しかし、嫁である王女が他の男の子供を妊娠。すったもんだの末に、結婚式は中止。王女は修道院送りとなった。


そんな曰く付きの弓である、買い手など現れるはずも無く倉庫に眠ったままだった。そんな時に今回の戦が起き、フィンは大喜びで飾り弓と知らぬ相手に売り付けた訳だ。


「いえいえ、メディア様には及びません。陣地の見取り図を見ましたが、あれ大きな欠陥がありますよ。防御柵の木がバーム材ではありませんか。固くて燃えない木ですから、危急の時に壊して脱出が出来ません。丘の上に柵を3重に構え、四方を囲む。砦化するのは結構ですが、周りから火矢を投げ込まれて油を撒かれたら詰みますぞ」


下手をすれば、ダークエルフは全滅しかねない。獣人達が力攻めのみで攻めるのを祈るしか無い。陣地構築の図面を描いたメディアは、心配するフィンに冷笑を向ける。同族がどうなろうと知った事ではない。そんな感情が滲み出ており、フィンも悟らざるを得ない。今回の策には、メディアの復讐も入っている事に。


「良いじゃないですか。種族を大切にするのは構いません。しかし、時代の流れを知らず、ただ小さな争いに固執する輩は淘汰されるべきですから。そうそう、フィン様。先程の会話のくだり、あまり使わないで下さいね。『越〇屋、お主も悪よのう』『いえいえ、お代〇様には敵いません』‥‥これ言ってると、印籠持ったお爺さんか旗本の3男坊か、昼行灯の役人何かに成敗されますから」


メディアの例えに、フィンはさっぱり分からないながらも少し考える。やがて、結論を導き出して答える。


「えーーと、話は分かりませんが意味は分かりますな。しかし、それは悪事が簡単に見つかるからでしょう。可愛い者ではありませんか。真の悪党は、法も権力も国民すらも使い、自分が正義だと声高に叫ぶ者ですよ。いつの間にか、反論はおろか議論も出来なくなりますからな。マハール4世が良い例です。‥‥我々もそこまで堕ちないように、気を付けねばなりませんな。悪を自認する者として」




次回、戦争開始。ただし、主人公達は高みの見物です。

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