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波乱万丈の魔術師  作者: 流星明
第1章 世に再び現れる英雄
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第11話 人、それをマッチポンプと言う

「戦争による利益の拡大? いや、それだと長引かせた方が金になるしな。私達を出したら、1日で終わるから損になるばかりだ。理由を聞いても?」


「まず、今回の戦争はビスティ王国を滅ぼす為の物じゃないから安心して欲しい。これは、ビスティ王国と魔族の境界紛争なのだ」


バランが内容を語り始める。ビスティ王国とダークエルフ領にまたがる大河、ユール河の中州の使用権の争いが事の発端だ。元々は境界紛争の原因になるとして、双方話し合いの上で上陸禁止にしていた。しかし、魚が良く釣れる上に土壌の良さを確認した牛人族が、ダークエルフに何の断りも無く次々と居住し始めてしまう。


それに怒ったのがダークエルフ達だ。『境界の取り決めの際、中州も半分に分ける約束だったはずだ。牛人族の者達は、中州全てを占領しているので、約束通り半分寄越せ』と言い始めたらしい。


「人間との戦争が始まる時に、中立国であるビスティ王国と対立するのはまずい。下手をすれば、敵に回りかねんからな。そこで君らの出番だ。牛人族とダークエルフの戦争を煽って欲しい。ある程度ガス抜きがすんだら、調停。ごねるようなら、何人か犠牲にしても構わん。これは、ファーブル王も了承済だ」


「バラン様、マッチポンプですねえ。この時期に、面倒事を起こした族長達の首を飛ばしたい。かといって、理由も無く殺すと反発を買ってしまう。そこで、戦争を起こした事を罪として責任を負わせる。なかなか悪くないですよ」


「ファーブルも了承済かよ。確か、魔族討伐派の勢いが強くなったって聞いている。こりゃあ、牛人族以外の連中も動くな。ファーブルの奴、ここに来てそういった連中を処断する気だな」


獣人も魔族も決して一枚岩ではない。様々な考えや派閥があるのがあって当然である。しかし、国益を損ねるような輩を放置する訳にもいかないのだ。


獣人側としては、今回の大戦には関わる気はない。前回の大戦で総人口の半分近くを失うまで戦ったが、その際受けた人間達からの仕打ちは許しがたかった。戦死者の遺体は、共同墓地に入れて貰えず、野ざらし状態。街に入れば、味方であるはずの人間から石を投げられる。そんな謂われのない偏見と差別を受けて、涙を飲んだ獣人達は多い。


中には、獣人達の権利向上を訴える人間達もいたが、状況は改善されなかった。結局、大戦終結前に獣人達は帰国。以後、ファーブルとカレルによる貿易活動が始まるまで、鎖国政策を貫いていた。貿易で利益を得ていた人間友好派の獣人達は、当然反発する。だが、人間の仕打ちに怒りを覚える人々の声が大きかった為に従うしかなかった。


魔族側としては、獣人達との和解の好機と言える。ファーブル王と魔王は使者と書簡を何度もやり取りしており、ビスティ王国は魔族側に対し、今回の大戦は好意的中立を保つ事を約束していた。


人間側もその動きに気付いたのか、慌ててファーブル王に会って大戦への参戦を要請。これまでの行いに対する謝罪と補償。更に、教皇の切り札たる聖女アルティミアとビスティ王国第1王子カルマンとの婚姻を申し出ている。


カルマンは、王族内の人間友好派の筆頭だ。話を聞いた同派閥の獣人達は、人間との共闘も考えるべきだと主張。これに魔族討伐派も便乗しており、宮廷内は白熱した論戦と乱闘が展開されているらしい。


もし、ここで争いが長引けば人間側に利する事になる。それを避けるべく魔王はバランに命じ、カレル達と接触した訳だ。


「つまり、両国の上層部は双方共に争いは望んでいない。事態の早期決着を望む、これでよろしいですか?」


「そうだ、ライラ。俺としても、たかだか中州の1つで獣人達との仲をこじらせたくない。当人同士は利権の絡みで大真面目何だろうがな。セリスよ、引き受けてくれないか?」


バランの要請を聞き、セリスは目を閉じたまま、しばし考えていた。1分程経った頃、目を開けるとバランを見据えてうなずく。


「良いでしょう、お受けします。バラン様。かなりの血を見る事になっても構いませんか? お任せ下されば、双方の不満分子を根絶して御覧にいれますが」


セリスの提案を聞き、本気でやりかねないと感じたバランは戦慄する。だが、ここで退く訳にはいかない。次期魔王を狙う者として、功績を積み重ね、人材を集めるのは大事な事である。


「よかろう、責任は俺が持つ。最大限の成果を期待するぞ。御用商人としての初仕事だ。くれぐれも失望させてくれるなよ?」


腹をくくったバランの言葉を聞いて、セリスも満足気にうなずく。ここで退くようでは、魔王など夢のまた夢だ。


「バラン様こそ、及び腰にならないで下さいね? 仕事承りました。カレル、動かせる人員はどれ位いる?」


「師匠を助けた後の事も考えて、既に商会も復活させてある。1000人単位が動かせるはずだ。資金も潤沢にあるぞ。ライラ、メディアも手伝ってくれ。俺達のデビュー戦、派手にやるぞ!」


「「了解です!!」」


こうして、カレルとセリスが歴史の表舞台に帰ってきた。2人の登場により、これまでの勢力図が大きく変わる事になる。その第1歩が、今まさに始まろうとしていた。



次回、商会の仲間登場。戦争の為に暗躍し始めます。

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