第9話、スーパームーンの下で。
パーティー会場が、武闘会場に、なってしまう。そんなときに、遠藤真美と堀田健一は二人して、会場を抜け出して、何処かへランデブーである。
ズダーン‼
宴の席に地響きを轟かして、黒いタキシードが宙を舞う。
それが合図のように、パーティー会場のあちこちで、乱闘が始まった。
いったい何がどうなっているのか、さっきまで談笑していた、男達が取っ組み合いを始めたのだ。
切っ掛けとなった、佐竹一成と芦田晃一はまだ取っ組み合いの最中で、殴り合いに迄昇華していた。
元々二人とも大柄で、動き回るだけで、騒々しい。
その二人が、ドッタンバッタンやるものだから、他の者も其に釣られたのか?はたまた、普段から何か鬱憤でもあるのだろう。
ここぞとばかり、大暴れし出した。
そんな最中、遠藤真美と堀田健一は、とっとと会場を抜け出してしまった。
後を任されたのは、G-7sのサブリーダー、門脇冴子であった。
冴子は、乱闘が始まるや、会場にいた 女性達を会場から逃がすと、頃合いを見て、非常ベルのボタンを押したのだ。
ジリリリリィィン!
けたたましい非常ベルの音で、我に帰ったのか?佐竹一成と前田敏樹は、取っ組み合いを止めて、G-7sのメンバーを避難させたのだ。
取っ組み合いのせいで、着ているものがボロボロなったが、佐竹一成と前田敏樹は何故か晴れやかな気分になっていた。
私、あの人たち苦手だったのよね。
タクシーの中で、真美は苦笑しながら健一の顔を見ながらそう言った。
今日のパーティーは、大成功だったかな?
薄く笑いながら、
今夜は八年ぶりの、スーパームーンだから、上手く行くと、おもったのよね!
いたずらっ子の表情で、健一を見ていた。健一はドキマギしていた。
普通の満月でも、人は能動的に成りやすい。ましてや、スーパームーンなら、超攻撃的になりそうな、そんな夜である。
其だけではない。
さっきから、ナイトドレス姿の真美に興奮しっぱしなのである。
大きく背中の開いたドレス、そして胸元も深くカットして。
更にクラクラしそうな、甘い香り。
何時だったか、先輩の小峰 崇が言った、股間が熱くなる臭いだ。
しかし、健一の股間が熱くなることはなかった。
健一の股間は、大人しい一寸法師のままだった。
何時もならこの時間だと、一寸法師がパラディン騎士団のランスようになっていて、あらゆるエログッズの総動員で、パラディンを宥めているはずなのだ。
健一は、我が身に起こっている異変に、大変な戸惑いを覚えていた。
さっきの乱闘、変だと思っている?
遠藤真美が、健一の顔を覗き混んで、そう聞いてきた。
たしかにそうだ、佐竹一成主将は確かに乱暴な処はあるが、TPOが解らない人じゃない。
いくら好きな人に、ちょっかい出されたからと言って、意気なり投げ飛ばすなんて、暴挙に出るわけがない。
アレはね、半分は貴方のせいなのよ?アトの半分は、お月様のせい!
冗談のように、真美は話す。
この一週間、健一は真美達に汗を搾られていた。それはなんの為だったか?
貴方の体臭には、人を攻撃的にさせる臭いがあるのよ。
遠藤真美は、堀田健一に何故声を掛けたか。その真実を話し始めた。
何やら、健一には思いもよらぬ、秘密があるようだ。