第10話、スーパームーンの下で。パート2
堀田健一が、遠藤真美が率いるG-7sの研究会に誘われた理由、そして真美がいったい何を研究しているのかが、明らかになる。
だからあの騒ぎは、半分は貴方のせいなのよ?
えっ!俺が、ですか?
タクシーの中で、遠藤真美は堀田健一にさっきの騒ぎが、何故起こったか、説明し出した。
貴方をこの研究会に誘ったのは、大正解だったわ。
遠藤真美が堀田健一に出会ったのは、全くの偶然であった。
しかし、出会った瞬間に、衝撃が走った。
正確に言えば、健一の体臭が衝撃的だったのだ。
別に、臭いって話じゃないわよ。
ちょっとおどけた感じで、健一の顔を覗き込み、ニンマリとした。
私って、人より匂いに敏感なのよ。
子どもの頃から、人一倍匂いに敏感で、しかも人が持つ体臭に興味津々であたった。
中学校の時に、憧れていた先輩(もちろん男)が、ある朝突然体臭が変わったことが有って、その後噂でその先輩が年上の女性と、恋人関係だと聞いた。それ以来、人の体臭に凄く興味が有って、そして香水にも関心を持つようになっていった。
貴方の体臭が、衝撃的だと言うのはね。あり得ない匂いだったからよ。
あり得ない匂い。年頃の男子学生の持つ、息苦しくなる特有の匂い。
其れの中に、何か甘い香りが混じっている。
それが引っ掛かって、堀田健一に声を掛けたのである。
見ためオシャレっぽく無いので、香水の類いは付けていないだろう。
だとすれば、この匂いは彼特有の匂いなのだ。
その興味だけで、堀田健一を匂い行動心理学研究会に誘ったのだ。
ヒデェ!丸っきり実験動物じゃん!
健一は憤ったが、別に辛くはなかったし、ソコソコ楽しかったから、顔を赤くして、うつ向いた。
それでも、貴方の体臭がどんな影響を与えるか、サンプル採取するのが楽しかったのは、私達もだから。
匂い行動心理学研究会に入会して、来日も来日も、汗を搾られていた。そして、その汗から作られた試薬。
その試薬を試すのが、今日の目的だったのだ。
堀田健一の汗から抽出した、独特の成分に、今まで研究してきた、イロイロな香料を掛け合わせ、あまり刺激の強い匂いにならないように、仕上げるのに苦労したけど、一応の作品には出来上がった。
パーティー会場に行く途中の、リムジンの中で、メンバー全員に試薬入りの小瓶を持たせて、適当なタイミングで、会場のあちこちで、放出するように指令してね。
其れじゃあ、テロリストですよ。
健一の意見も最もだが、
私、あの人達、苦手だったのよ。
真美はホトホト困った、と言った顔で健一をみた。
芦田晃一には、前々から良くない噂が有ったし、佐竹一成にもストーカーチックな面があって、其れよりも、思いっきり勘違い野郎だし。
さっきの騒ぎで、乱闘騒ぎにでもなれば、暫くは大人しくしてくれるんじゃないかな?
真美は悪戯っぽく、笑って見せた。
あまり踏み込んだ、展開にはならなかったが、物語の秘密が紐解かれた感じにはなったかな?