第9話「停滞とは本人の意思だけじゃどうにもならない事もある。」
二日連続遅刻しました(・・;)。
あれから一ヶ月が経った。
最初は簡単な常識や戦闘技術を叩き込まれる事となり、剣や槍、魔法の杖などを国の宝物庫から貸し出されそれぞれにあった物を使っていた。
しかしそんなものは一週間足らずで終わり、王宮近くの魔物と騎士達の護衛付きで戦う事となった。
ここで問題が発生する。
何と約半数の50名程が脱落したのだ。幟以外みな、戦闘職もしくは支援系統の天職に就いていたのだが(高梨曰くこう言う時普通は生産職の人もいるらしい)やはりただの日本の学生。いきなり武器を持って戦う事など戦争を放棄した生温い環境にいた人間に耐える事は出来なかったのだろう。約50人の生徒は戦闘を拒否し、訓練だけを受けている。
そして幟にとってはそんな事などどうでも良くなる様な問題が起きた。
「あーくそ、超いてー。」
お腹を擦りながらベッドに倒れごちる幟。
既に夕食や入浴は済ませた後だ。
「あはは~、災難だねー。」
「誰のせいだ誰の。」
結局、あれから一度も自分のベッドを使わない守は隣に座りながら気の抜けた声を上げる。ちなみに部屋には清掃に侍女達が入って来るので使った形跡を作る様にしてる
「うわ~痛そ~、青くなってるじゃん。」
守は幟の寝巻きを捲りお腹を見ると青く変色した肌が姿を現した。
「いい加減、馬場の奴飽きてくれないもんかね。」
「んー、昔ちゃんとふったんだけどね~。流石に私からアクション取ると余計にややこしくなるよ?」
「そもそもお前があんな告白をしなけりゃこんな事にはならなかったんだけどな?」
「どうかなー、『福音』で結局揉めたと思うよ?」
「ていうかお前みたいな奴に告白するとか見る目なさすぎだろ。」
「あはは~確かにあの人見る目はないけど、私に恋しちゃうのは何も変な事じゃないよ?そこの所どうゆう事かな?」
守は笑顔で、かつ圧力をかけながら詰め寄る。
「はっ、よく言うぜ。彼氏でもない奴にキスねだる奴のくせに。」
「その相手が言ってたら世話ないけどね。」
幟が詰め寄った守の頬に触れながら言うと先程とは違う種の笑みを浮かべながら頬に触れた手に自分の手を重ねる守。
「それよりまだ上がらないの?」
「あぁ、ダメだ。相変わらずレベルしか上がらねぇ。」
そう言いながら空いている手で金属板を取り出す。
名前 :羽鳥幟
天職 :なし
レベル:12
種族 :人間
HP :870/1000
MP :1000/1000
攻撃力:100
防御力:100
体力 :100
筋力 :100
敏捷力:100
精密力:100
精神力:500
知力 :100
【スキル】
剣術Lv1
水魔法Lv1
生活魔法Lv1
解析Lv1
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
【福音】
魂の絆結(巣籠守)
あれから一ヶ月も経って、訓練や魔物も倒す事によって『成長速度大幅上昇Lv1』もあり、レベルが11も上がった。
しかし、どんなに鍛え、魔物を倒してもステータス値やスキルレベルは一向に上がらないのだ。
無論、天職なしが影響している訳ではない。殆どの人間が天職を持たないこの世界でそんな事は起こった事はないという。
幸いレベルは上がらないがスキルを覚えるのは何故か出来、天職なしで剣術や魔法を覚えた時は国王達から驚かれた。
そして、ステータス値が上がらないと知られれば当然ちょっかいをかけてくる奴はいる。
当初は勇者の次に高かったステータスも今では見事にビリケツだ。当初は敵わないかもと思ってた連中もちょっかいをかけてきた。
しかし何をしても幟が特に反応せず無抵抗であった為、今では飽きてしまい馬場一人である。
「もしかして呪われてるんじゃない?」
「お前にか?」
「……だとしたら?」
「末代まで祟ってやるよ。」
「自分の子孫を祟る気?」
「何故、お前と子を作る事になってる。」
「ま、殺されそうになったら私が助けてあげるよ。」
「うわお前に借りが出来るとか死んでもごめんなんだけど。」
「はは、だろうね。って言っても私もちゃんと扱えてないからね『無限剣士』。」
守も同じ様に金属板を取り出す。
名前 :巣籠守
天職 :無限剣士
レベル:12
種族 :人間
HP :3150/3150
MP :1182/1182
攻撃力:298
防御力:182
体力 :137
筋力 :100
敏捷力:145
精密力:113
精神力:500
知力 :100
【スキル】
剣術Lv3
火魔法Lv1
念動操作Lv2
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
【福音】
魂の絆結(羽鳥幟)
幟と違い、大きく上昇している。
ここでこの一ヶ月の間に学んだステータスについて説明をすると、
HP :命の残量。0になると死ぬ。
MP :魔法やその他スキルの使用に必要な物。
攻撃力:攻撃する際、HPを削る指標。
防御力:受け身の強さ。
体力 :運動量の上限。
筋力 :力の大きさ。
敏捷力:すばやさ。
精密力:動作の調整のしやすさ。魔法やその他スキルの動き、命中率にも影響を与える。
精神力:胆力の高さ。格上との戦闘に影響を与える。
知力 :知能の高さ。魔法など使用の際、MPとの循環効率や威力、数に影響を与える。
この様になっている。そして、精密力、精神力、知力は通常のレベルアップで上がらない。
精密力なら魔法などをいかに上手く使えるかで。
精神力なら場数を踏めば。
知力は魔法などを同時展開などできれば上がるだろう。
しかし、この三つは上がりやすさが格段に違う。
精密力〉知力〉精神力といった感じだ。
知力は殆ど魔法専門の者しか上がる事はないし、精神力に至っては死ぬまで上がらない者などざらであった。
「確かに移動させるだけなら兎も角、攻撃する時明らかに威力不足だもんな。」
ちなみに、守の『無限剣士』は字の通り無限に剣を操る者の事だ。
手の他に『念動操作』で剣を念動力の様に操り、幾つ物剣で敵を倒すという強力な天職である。その為、精密力とは切っても切れない縁がある。
「そうなんだよね~。そろそろ『二刀流』スキルも覚えないといけないし。」
召喚された生徒達はそれぞれ天職にあったスキルを知られている範囲で言われており、ある程度課題を与えられている。
「いいじゃねえか、課題があるだけ。」
勿論、天職なしの幟にそんなものがあるはずもない。
「でもそれで『スキル』普通に覚えてるんだから幟は何かあるね。」
通常、天職に適正がないスキルは覚えない。というより覚えられない。この世界で天職なしの者は生活に役立つスキル以外基本持っていないのだ。
しかし例外もあり魔法は専門の魔具で調べて何か適正があれば、その魔法を鍛えれば使う事ができる。勿論、幟達もしており前衛職の者も殆ど適正があった。
なお、幟は適正なしと出たが普通に『水魔法』と『生活魔法』を覚えた。
「何かって?」
「……呪い?」
「まだ言うか。」
「明日も早いしさっさと寝るぞ。」
「今日は腕枕が良いで~す。」
「隣に同じベッドがあるだろ。」
「とか言いつつ期待してるんでしょ?」
「おやすみ。」
「ごめんー、腕枕とか言わないから抱きつかせてー!」
結局この日も一緒のベッドを使う二人。夜も更けて、今日の疲れを癒す為眠りに落ちる。
次の日、迷宮に潜る事が発表された。
前々から考えてたのですがステータスのHPとMPを現在値と最大値表記にしました。
そろそろ守さんともお別れです。