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第6話「私はこの日を一生忘れる事はなかった。」

遅れますた…。

 自分の体をまさぐられる様な感覚で目が覚めていく。

「おい、何してる。」

「あれ、起こしちゃった?ごめんね。」


 目を完全に開けると目の前に守がいた。

 寝ている自分の"目の前"だ。

 つまり仰向けで寝ている幟の上に乗って同じベッドで寝ているのである。


「俺は何をしてるって聞いたんだが?隣のベッドにさっさと行け。」

「良いじゃん一緒に寝るぐらい。初めてって訳でもなし(・・・・・・・・・・)。」


「…はぁ。好きにしろ。」

「やった。」

 幟が諦めた様に言うと守は漫画なら語尾に音符でも付きそうな程上機嫌に幟の胸に頭をこすりつけながらそう言った。



「それで"あの話"は何処までが本当?」

 守は真っ直ぐと此方を見詰めながら真剣味を帯びた声で聞いてきた。


「まず、お前も分かってるだろうが王女の涙は完全に演技だ。…大根もいいとこだわ。」

「やっぱりね~。流石にアレは狙い過ぎ。で、他は?ここ以外余り確信を持てなかったんだよね。」

「最初から説明すると、此処が別の世界で神が死んで魔王軍にやられてるってのは本当。それで倒すまで帰れないってのは嘘。」

「…って言うと此処は本当にファンタジーな世界なんだ。」

 実の所、守は余り信じきれてなかった。自身が経験した事が何よりの証明ではあったが流石に荒唐無稽過ぎた。


「じゃあ魔王とか魔神をほっといて私達は帰れるって事?」

「いや、そもそも前提から違う。あいつらは一言も魔王や魔神を倒したら帰れる何て言っていない。」

「………そう言えばそうだ。」

 そう王女はこう言ったのだ『魔王と魔神を倒すまで帰る事はできない。』と。


「そもそも国王側、少なくとも王女は帰還方法を知らない様だった。」

「うわ~。もうこの世界救う気なくなりそう。」

(ここで完全に無くならない辺りお人好しだな。)

 守の腰辺りに置いていた両腕の交差を僅かに狭めながら自分なら無理だと思った。


「更に救う気を無くす要因があと二つ程あるが?」

「これ以上好感度下がると逃亡したくなるんだけどー。」

 幟の胸に顔を埋めながらそうは言っているが、続きが気になるのか片目を此方に向けて「それで?」と言う様に続きを促してくる。


「まず一つ目、国王が最初俺達に何て言ったか覚えてるか?」

「確か「この国をお救い下さい。」だったよね?」

「そう、世界の均衡が崩れ魔王軍が優勢になっている。それなら『この国』ではなく『この世界』じゃなきゃおかしい。だってそうだろ、流石に魔族以外の国が一つだけって事はないだろうしな。ましてやこの世界にはエルフや獣人何ていう人種所か身体的特徴が異なる他種族までいるんだから尚更だ。」

「つまり、国王側は自分達の安全さえ守られたらそれで良いって事?」

「もっと酷いのは魔王討伐を成功させたら他国に恩を一方的にきせてくる可能性が高い事だな。」

「えー、私達が倒したのに?」

「召喚したのはあいつらだからな。」


「んー。なら二つ目は?」

「ああ、それだがお前もだけど全員何で気にならないのか不思議なんだが。」

「ん?」

「俺達の召喚方法。はっきり言って異常だろ。」


 幟達の召喚の経緯は、突発的に起きた耳なり→六年生フロアの天井の崩壊→その場にいて大怪我をした(または記憶はないがそうだと思われる)者が召喚される。といった感じだ。


「つまり俺達はこの国の都合で呼びだされたにも関わらずあんな大怪我させられた事についてだ。王女を見る限りその事に触れない様にしてた節がある。」

「あれ?そう言えばそうだった。何で今まで思わなかったんだろ。」

「まあみんな突然の事で"そんな事"に思考を割いてる余裕がなかったんだろ。」


「以上の事から少なくともこの国は信用できない。」

 右手で守の長めの髪を撫でる様にして透きながらそう締め括った。


「ん~。取り合えずある程度の常識と戦う事になるだろうからそこら辺のノウハウ、あと衣食住の目処がたったら一緒に逃げようか。」

「…何故お前と一緒に逃げる事になってやがる。」

「まぁまぁ、それより守さんの髪を弄ってどうしたの?惚れ直した?」


 先程から毛先を重点的に透くのを止めない幟を不思議に思い訪ねる。

「そもそも惚れてねぇ。いや三つ編みも解いて完全にロングヘアーなのは初めて見るなと思ってな。」

 いつも守はロングヘアーに一部の髪を三つ編みにした髪型をしており、基本的にお風呂上がり以外はその髪型を維持している。


「そういえばそうだったかも。あの時(・・・)は時間もなかったしお風呂入ってから直ぐに乾かしてセットしちゃったんだよね~、ここはドライヤーもないから癖になっちゃうし。」


 サアァサアァ

 チュッ


 髪を透く音だけが部屋を満たしたと思えば、唐突に少し水っぽい音が出る。


 チュル


 水っぽい音は粘つく様な音へと変化していき段々と熱っぽさをはらむ様になってきた。


 チュパチュチュル


 気付けば髪を透く音は止み、官能的な音が部屋を完全に支配していた。


 チュッ


 最後に最初の水っぽい音と似た音によってその行為は終わりを告げる。

「いつも唐突だな。」

「へへへ、とか言いつつ応えてくれるじゃん、いつも。」


 チュッ


 その行為は先程と同じものであったが同質のものではない。押し付けるだけ、下手な動きは一切取り除いたある意味幼いもの。

 だが、


「うそ…。初めてそっち、から。」


 それは少年から少女へと初めての行為だった。

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