第3話「悪い笑顔も悪夢の前兆。」
名前 :羽鳥幟
天職 :なし
レベル:1
種族 :人間
HP :1000/1000
MP :1000/1000
攻撃力:100
防御力:100
体力 :100
筋力 :100
敏捷力:100
精密力:100
精神力:500
知力 :100
【スキル】
解析Lv1
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
【福音】
魂の絆結(巣籠守)
汗が噴き出すのが分かった。
(は?ちょ、っと待てや。…おい。)
幟は焦った。二年間隠し続けた事が水の泡になると直感したからだ。
それによりいつも意識してしない様にしてる事を無意識の内にしてしまう。
そう、巣籠守の方を向いてしまったのだ。
生徒達の合間を縫って見た先には自分と同じ様に金属板を持って同じタイミングでこちらを向いた守の姿。
こちらの目線に気付き、意外そうな目をした直後、
ニヤ~
物凄く、物凄く、それはそれは悪い笑顔を浮かべた。
それは新しく思い付いたイタズラを早く試したい悪ガキの様なそうな笑顔だった。
二人はまるで合図したかの様なタイミングで同時に視線を外した。
(クソが…あいつ、絶対何かする気だ…。)
幟は中学時代の事を思い出しながら現実逃避気味に自分のステータス確認に意識を向けた。
幟と守が見詰め合ったのは極々僅かな時間。他の生徒は自分のステータスに注目して気が付いていない。…たった一人を除いて。
「勇者様方。ステータス確認は御済みでしょうか?基準と致しましてはだいたい成人男性のHPとMPの平均が100前後、他の数値が10前後といった所です。」
(この世界に来た時点で特別な力が宿っているってのは確かみたいだな。)
幟が自分のステータスに目を向けると、なるほどと思った。この世界の一般男性(おそらく日本と違って肉体労働者ばかりだと思われる)の約10倍全てのステータスがあったからだ。
(しかし、精神力だけ異様に高いな…確かに冷静沈着と自負してはいるが。)
「そして天職と書かれている欄があると思いますが、それが勇者様達の最大の武器だと思って下さい。その天職に応じておそらくステータス数値の特徴も変わってくるでしょう、そしてスキルを覚えるのもまた天職に準じた物になるからです。お恥ずかしながらこの天職は割合と致しましては全体の約1割しか持っている者がおらず、魔王軍に劣性になる一因となっております。」
(天職…ねぇ。俺達なら持っているのが当たり前みたいに言ってるけど…周りの様子的に俺だけっぽいな無職。)
再度ステータスを見るとはっきりと『なし』と書かれていた。
(これはスキルとやらも全員持ってる一般的なスキルっぽいな。ステータスも高いと思ったが、この中じゃ最低値の可能性が高い。…これは説明のない【福音】と合わせて面倒な事になるな……はぁ。)
幟は頭痛とこれからの面倒そうな未来を感じながら心の中で溜め息をつく。
そして頭を抱えたくなる様な出来事というのは古来より連続するもので
「それでは勇者様方、今後の魔物との戦闘の参考の為にもステータスを順番に私達に見せて貰えるでしょうか。」
と閻魔の判決が下された。
自分達の能力の高さを自慢したいのか次々と国王と王女の前に行列ができる。
(こいつらこれが自分を守る意味で最も大事な個人情報って事解ってないのかね。)
しかし、学校で目立たない様に常に振る舞っていた幟に流れに逆らう様な事が出来るはずもなく、列の後ろの方に並ぶ。
「やっべぇなぁ!!おい!晴輝お前数値もヤバいけどスキルの数と勇者って何だよ!存在がもうチートじゃねぇか!」
前の方でバカでかい声が上がる。
声を上げているのは織田昌道。御上晴輝の親友でかなりのお人好しで生粋のバカ。ある意味では幟が一番信用している人間である。
(うわー、これは最大値が出たっぽいな指標にしたいし確認してみるか。)
そして幟はスキルの『解析Lv1』を使用する。何故かこのスキルという物は最初から知っていたかの様に使い方や効果が解るのである。
そしてこの『解析Lv1』はレベルが1~10の相手のステータスを見る事が出来るというものだ。
名前 :御上晴輝
天職 :勇者
レベル:1
種族 :人間
HP :1500/1500
MP :1500/1500
攻撃力:200
防御力:200
体力 :150
筋力 :150
敏捷力:150
精密力:150
精神力:100
知力 :100
【スキル】
剣術Lv1
魔武術Lv1
光魔法Lv1
HP自動回復上昇Lv1
MP自動回復上昇Lv1
状態異常回復上昇Lv1
身体回復上昇Lv1
闘気Lv1
天上天下Lv1
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
(おぉ、凄いな本物の勇者がいる。)
御上のステータスを見て、驚嘆の声を心の中で上げるが、幾つかの疑問が出てきた。
(そこまで離れてない?いや、倍差があるものもあるし、そんなこともないか?それに精神力は圧倒的に俺の方が上だし、『解析』もないな。)
前の方では御上のステータスを聞いて驚きの声が上がる中、自分のステータスについて分析する。が、答えが出る前に自分の番になった。
「次の方。」
次回、幟 (精神的に)死す
※あくまでも予告です。