第14話「もしかして女の子として見てくれてないんでしょうか?」
すみません。深夜になるかもとかぬかしておきながらお昼を過ぎてしました…。
別にエイプリルフールとかは関係ないですよ!?
あれから一時間が経過した。
辺りには血痕や千切れた布が散らばっており、魔物に襲われ人が食われたと言われれば信じてしまいそうだ。
「はぁ、はぁはぁ。」
その中心には一組の男女が、男は意識を失っており女は男を組伏せる様に覆い被さっていた。
女は、いや少女は疲れきった身体を休ませようと考えたが目が自分が乗っている男の胸元を、より正確に言うならば傷口を捉える。
いや、それはもう傷口などという生易しい物ではなかった。肌はめくれ、肉は抉られ、骨が見えてもおかしくないと思える程の怪我だ。他にもその原因とも言える指の爪も折れて中が見えてしまっている。
幸い出血は止まっており出血死はしないであろうが、このままだと菌が入って肉が腐る可能性がある。
「なん、とかしないと。」
少女は呼吸を整える間もなく、魔力を込め『付与魔法』を男にかけ続ける。
♂♀
数時間後
「ぁ。───。」
目覚めた幟がまず感じたのは身体の温かさだった。
内側から力がみなぎる様に温かみを外側からは包み込まれる様な温かみを感じた。
目を開けると雪音が抱きついていた。その身体からは淡い光が出ており、それが自分の感じている温かみの内側の正体だと分かった。
それが自分もかけて貰った事のある『付与魔法』の発動時のアクションだと気付く。
「っあ、せんぱい。起きたん、ですね。」
顔を上げた雪音の顔は憔悴しており、今にも倒れてしまいそうだ。
「ぅ──あ。」
声を掛けようとするがヒューヒューと喉から空気が漏れるだけで音を殆ど発しない。
「良かった、です。痛みはないですか?傷は塞いだんですけど。あっ、喉枯れちゃったん、ですね。」
疲れの為か所々つっかえながら話す雪音。
「すみません。喉も治して、あげたいんです、けど。安心したらね、むく─。」
そのまま寝てしまった。
(もしかしてあれからずっと『付与魔法』を?)
眠った雪音を見ながら状況を整理していく。
まず意識を失う前までの事を思い出す。自分が謎の痛みをあるいは何かよく分からない物に侵食される感覚を味わい。狂ったのを覚えている。
(無様な所を見られたな。)
自分の胸板を枕の様にしながら寝る雪音を見ると、所々引っ掻き傷が見受けられる。
(…暴れた俺を止めてくれたん、だよな。)
シミやホクロなど一切見当たらない白い柔肌にその歪な傷は酷く目立った。
(おまけに俺の傷を治す為に『付与魔法』掛け続けてくれたみたいだし。)
『付与魔法』には攻撃力が上がる『アタックアッパー』など多種多用な物がある。
その中で雪音は回復力増進と身体能力強化の『付与魔法』を掛け続け、傷を塞ぎ、命を繋げ続けたのだ。
いくら『付与魔法』が魔法の中でもMP消費が低く、雪音の精密力や知力の数値がずば抜けて高くとも何時間もの間やり続けるなど倒れてもおかしくない。
(これは態度を改めないとな。)
何となく幟は雪音の長い髪を撫でながら今後の事をぼーっと考える。
♂♀
「ん、うー。」
「おはよう、桜小路。」
「ふぇ?」
目が覚めた雪音が目にしたのは間近に迫った自分の先輩の顔だった。驚き過ぎて変な声が出てしまう。
「な、ななな何で!」
「取り合えず、上から退いて貰って良いか?」
「はっ!はいっ!!」
雪音は自分が尊敬する先輩を下敷きにしている事に気付き、急いで退く。
「あー、まず悪かった。無様な姿を見せた。」
「いっいえ、そんな。全然そんな事は」
「だが、その服や傷は俺を止めようとしてできた物だろ?」
「あっ。その、あまり見ないで頂けると…。」
「…悪かった。」
現在、雪音の姿はちらほらと見える傷よりも破けた衣服の方が酷かった。際どい所は隠れているが、肌色面積が多く艶かしい。幼い顔に見事なプロポーションである雪音のその姿は酷く背徳的で興奮を引き出す。
「…あの先輩、喋り方変えられましたか?」
少し気まずい雰囲気になったのを変えようと自分が目覚めてから変わった幟の態度の変化を指摘する。
「ああ、まあな。基本的に俺はこっちだ。桜小路に助けられといて今さら突き放すのもおかしいしな。」
「そう、ですか。」
(何だか一気に距離が近づけた様な…。)
嬉しい様な理由が微妙な様なで顔が赤く染まりながらも苦笑い気味な雪音。
「しかしある程度は治ったが喉いてぇな…。」
「そうです!喉痛めてらしたよね?それに胸の傷は痛みませんか?今すぐ『付与魔法』を…。」
現在、幟の喉は極度の行使により枯れて声が出なくなっていたが、数時間の休養と水をとった事により喋る事ができる所まで回復したがまだ好調とは言えず、胸の傷も見た目は塞がってはいるものの痛々しいその姿は大丈夫だと言い切れる物ではなかった。
「いやいいって。胸の傷は痛みもないし、それに桜小路がさっきまで寝てたのはMP切れによる昏倒だろ?」
「もう大丈夫です!ほら!」
名前 :桜小路雪音
天職 :付与士
レベル:8
種族 :人間
HP :807/807
MP :3281/3281
攻撃力:27
防御力:102
体力 :35
筋力 :18
敏捷力:85
精密力:232
精神力:70
知力 :255
【スキル】
水魔法Lv2
風魔法Lv2
付与魔法Lv7
MP自動回復上昇Lv3
状態異常回復上昇Lv1
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
そういって雪音が突き出して来たステータスプレートを見ると、確かにMPは殆ど回復していた。
「MPに精密力と知力上がってんなー。『付与魔法』のレベルなんて他の奴等でも見た事ないぞ…。」
そう言ってステータスプレートを返すと本人が一番驚いている。そのままうやむやにして話を進める。
「あれは一体何だったんだ?」
自分の胸元を見てそう言う幟はあの時の事を考える。
「あの時、胸を引っ掻いていましたけど何があったんですか?」
「ああ、あれは痛みがここの部分からこう、溢れてきたって言うか爆発したと言うべきかとにかく超痛かった。本気で狂うかと思った。」
そう言って爪の殆どない手で自分の胸元に触れる。
「凄く、辛そうでした…何か状態異常とかではないですか?ステータスプレートで確認した方が…。」
ステータスプレートは状態異常にかかっているとそれが分かる様になっている。
「それもそうだ。」
名前 :羽鳥幟
天職 :支配者
レベル:14
種族 :人間
HP :791/1000
MP :886/1000
攻撃力:100
防御力:100
体力 :100
筋力 :100
敏捷力:100
精密力:100
精神力:500
知力 :100
【スキル】
剣術Lv1
水魔法Lv1
風魔法Lv1
生活魔法Lv1
空間魔法Lv1
解析Lv1
支配
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
【福音】
魂の絆結(巣籠守)
「あーそういう事か。」
「何かあったんですか!?」
取り合えず口で言うより見せた方が早いので雪音にステータスプレートを渡す。
「良かった…特に何もないようですね…。」
心底ほっとしたという様に言葉を漏らす雪音であったが、幟のステータスの変化に気付いていない様だ。
「で、俺の天職があの痛みの理由っぽいわ。」
「へ?あっ、本当です!天職が…それにスキルも。」
「その天職には出現条件があってそれが生物への精神的屈服をさせる事で俺達をここに連れて来た魔物でそれが満たされたらしい。」
「天職に条件が…でもどうしてあそこまでの痛みがあったのでしょう?」
「あれは…そうだなコンピューターで例えると情報量が多すぎて処理しきれずに爆発したって言ったら分かるか?この『支配者』ってのはかなり強力らしくて無理矢理じゃなければ入らないらしい。最悪死んだかもな。」
「死んだかも…って。」
顔が青くなっていく雪音、軽口のつもりがやらかしてしまったらしい。
「いやこうして俺はぴんぴんしてる。桜小路のお陰でな。」
「い、いえ!そんな…。」
(青くなったり、赤くなったり大変だな…。)
「それで具体的にこの『支配者』ってのがどんな事ができるかと言うと…こんな感じかな。ほれ。」
天職 :支配者
レベル:14
種族 :人間
HP :9791/10000
MP :9886/10000
攻撃力:1000
防御力:1000
体力 :1000
筋力 :1000
敏捷力:1000
精密力:1000
精神力:500
知力 :1000
【スキル】
剣術Lv1
水魔法Lv1
風魔法Lv1
生活魔法Lv10
空間魔法Lv1
解析Lv10
支配
成長速度大幅上昇Lv1
言語翻訳
【福音】
魂の絆結(巣籠守)
雪音がおもむろに投げ渡されたステータスプレートを覗くと先程見たステータスに比べ0が大量に添付されていた。
「えっ、これって…えっ?」
どうやら余りに荒唐無稽な変化に訳が分からない様だ。
「今の俺じゃあと少ししか上がらないが、精神力以外のステータス数値とスキルレベルは自分の意思で上げれるみたいだ。俺のステータスが上がらなかったのはこのせいだな。」
「凄い!凄いです!!先輩はやっぱ凄いのです!!」
(ボキャブラリーが貧困過ぎる…。)
「まあそんな訳で…ここら辺の奴なら…。」
「えっと、あの…先輩!?ちょっと!えっ?えっ!?」
幟は急に周りにあった千切れた服を集め始めたと思いきや、その布達を雪音の服が破れ露になった肌に押しあてた。
「リペア。」
幟が詞を唱えると破れた部分が完全に繋がっており、補正された痕の様な物もみえない。
「『生活魔法』って便利だなー。身体の汚れから服の補正までできるし、レベルが高ければ痕も残らない。」
しかしそうは言っても使い物にならない物もあり、若干肌が見え隠れしているが先程より断然増しだろう。
「ああの、先輩。前もって言って欲しかったです…。」
「あー、…悪かった。」
耳まで真っ赤になった雪音を見て、自分はこういう事が無神経過ぎるな、と反省する幟であった。
やっと幟さんの天職が発現しました。
そろそろキリがよくなったら並行して?書いてる作品に移ろうかなとおもってます。