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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第2章 学園〜小等部〜
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第四十一話 幼馴染み

大きな音がフロアに響き渡る。


倒れていたはずのゴーレムの腕が素早く振り上げられる。


このまま横薙ぎに振り抜かれると、ジェルマンを責め立てていたメンバー全員がまとめて吹き飛ばされる。


完璧に油断していた。


ゴーレムは魔力によって作り上げられた躯だ。


魔力を生み出している源の胸部を破壊しないと、他をいくら破壊しても意味は無い。


だがそんな知識のないメンバーは既に武器は鞘に納め、ゴーレムを背後にしているものも多い。


フロアに入ってきたときの奇襲とは訳が違う。


全く警戒のない状態から避けることはまだ彼女達には無理であろう。


その時だった。


「———最後まで油断してはダメですよ」


ゴーレムの胸部あたりに刀を突き刺したアヤトの姿が目に映る。


刀からは雷の流れるような青白い光がチリチリと音を立てている。


アヤトの虎徹はAランクの一級品だ。


そのままでも岩などは簡単に切り落とせるだろう。


さらに刀の切れ味を上げる為に、得意の雷のフレイムで威力を増している。


さすがのゴーレムの分厚い胸部もこの攻撃には耐えられなかった。


振り上げられた大小の岩で出来た腕はバラバラになりただの岩に戻る。


「これで本当に討伐完了です」


カラカラと瓦礫の上を歩いてアヤトが皆に近寄っていく。


その姿は同じ5歳とは思えないほど頼もしい姿に映る。


実質、アヤトに命を救われたメンバーである。


大げさかもしれないが、あの攻撃を不意に食らってしまえば、かすり傷では到底済まないであろう。


「………」


数秒の沈黙。


戦闘の余韻で部屋の中は砂煙や、壁から小さな瓦礫が床に落ち、音を立てている。


「…アヤトの癖に」


小さな声で呟くサーラ。


いつもの展開であればこの後、必ずと言っていいほど鳩尾に鋭い一発がお見舞いされる。


「————あれ?」


目を瞑って衝撃に耐えるため、腹に力を入れていたアヤト。


避けるとさらに怒りが増す為に、避けるという選択肢は無い。


だが、一向に鋭い一発が来ない。


いつもと違うその状況に違和感を覚える。


「…ん?」


ゆっくりと目を開けるアヤト。


「おわっ!」


目の前にサーラが迫っていた。


今度こそいつもの一発が来ると確信を持ったアヤト。


再び瞑る目にはより一層の力が込められている。


「————…?」


数秒感だった。


先程より少し長い間、目を瞑っていただろうか。


今度こそ強烈な一発が来ると、変な期待をしてしまっているアヤトは目を開ける。


そこには俯いたサーラが目の前に居た。


恐る恐る俯き加減の顔を覗き込む。


「…大丈夫?怪我でもした?」


いつもと違う調子に心配になったアヤト。


だがサーラの顔は少し赤くなっているだけで怪我などは無さそうだ。


『……ありがとう』


それはアヤトしか聞こえないほどの小さな、小さな声だった。


予想外の言葉。


いつも強気のサーラにお礼を言われたことなど殆ど無い。


「どういたしまして」


咄嗟に出た言葉である。


その言葉を口にしながらサーラの頭を軽く撫でる。


サーラの顔は一層赤く染まっていく。


「…あんまり調子に乗るんじゃないわよ」


ぷるぷると震えながら声を出すサーラ。


「すまない、助かったよアヤト。」


ジェルマンやパーティーメンバー近寄ってくる。


「本当にありがとう!」


口々にお礼の言葉をかけて、初の階層主討伐を喜んでいる。


これでようやく、『知識の宝庫』の階層主討伐が完了した。



ーーーー


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