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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第2章 学園〜小等部〜
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第四十話 決着

目の前の光景は恐らくほんの1分程度であろう。


しかしその何倍にも長く感じたられた。


すでにフロアには無数の岩が転がり、壁も床もボロボロで足場が悪い。


(工夫しないと結構厳しいかな?)


「ほら、リザ!君のメイスがここのボスには有利だよ」


未だにアヤトの隣で座り込んでいるリザを立たせて背中を押す。


「リザのフォローを、ルナとリリー!頼んだぞ!」


『了解!』


その時、ゴーレムの両腕がリザに向かって振り下ろされる。


大きな岩で作られた拳は、一度かなりの高さまで振り上げられているので威力は申し分無いだろう。


『やらせないよ!』


檻から解き放たれた獅子を思わせるスピードで、ルナとリリーがリザの前に入り込む。


細い腕を交差させてゴーレムの振り下ろされた腕を…止めた。


人など余裕で潰してしまいそうな一撃が華奢な女の子によって制される。


止められた拳から衝撃波がフロア全体に伝わってくる。


あの細腕のどこにそんな力があるか不思議なものだ。


獣人族の中でも腕力とスピードに長けた、気高き獅子の2人。


『いくよ!』


組み合っていた2人は息を合わせてゴーレムの腕を強引に掴みにかかる。


ボスも簡単には掴ませないと、残った2本の腕で岩を投げつけてくる。


組み合った腕に飛び乗ってくる影が2つ。


腕を駆け上がり飛んでくる岩を上手く受け流し軌道をずらす。


不安定な腕を駆け上がり、飛んでくる岩の軌道をずらすのは至難の業だ。


一歩間違えれば直撃は免れないだろう。


『ありがとう!ハナビ!サーラ!』


駆け上がっていった2人はそのままゴーレムの頭部に飛び込んでいく。


そのスピードにはゴーレムは全くついていけない。


スピードだけであればもっと下層のボスでも対等に渡り合えるであろう。


「かったーい!」


「全く刃が通る気配は無し…」


刃のはじかれる音が響く。


2人の渾身の攻撃は虚しくもゴーレムの頭部が少し欠ける程度。


ロドフ程の腕前ならば、ある程度の剣であればゴーレム程度は簡単に切り倒せるだろう。


「剣じゃだめだ!リザお前の馬鹿力を叩き込んでくれ」


ゴーレムの後方からジェルマンの指示が飛ぶ。


すっかりパーティーの指示役に定着しつつある。


その指示は的確で素早いことからメンバーの指示を自然と集めていった…訳ではなく、誰も指示を出さないし、勝手に行動する。


要するにまとめ役が可能なものはジェルマンしかいなかったのだ。


「馬鹿力ってどういうことよ!」


リザはそう言いながらも自身の武器のメイスを構えてゴーレムに走っていく。


ドワーフ族の特徴は持ち前の筋力だ。


見た目にはただの活発的な女の子程度にしか見えないリザ。


しかしそのパワーは同年代の男の子と比べると、少なく見積もっても3倍はある。


その力で振り下ろされるメイスの破壊力は馬鹿力と言われてもおかしくはない。


「いっちゃえー!」


サーラのかけ声に合わせてメイスを振りかぶるリザ。


そのバックスイングは常人の目には全く見えないだろう。


目の前に構えていたメイスが頭の後ろに構えられる。


力を込めるその姿からは岩を砕くことは到底出来そうには見えない。


「うりゃぁぁあー!」


振りかぶっていたメイスはゴーレムの左足を捉える。


捉えた左足の膝にあたる岩を粉々に砕く。


バランスを崩したゴーレムは左前方に崩れていく。


「とどめだぁー!」


崩れた岩塊の頭部と思われる箇所にメイスが振るわれる。


先程はハナビとサーラの攻撃ではほぼ無傷。


強固を誇る岩塊は1人の少女によって砕かれた。


「ふー…固かったわー!」


その言葉とは裏腹にゴーレムの左足と頭部は粉々だ。


既にフロアにはいくつもの大岩や瓦礫が散乱し、当初の部屋の姿は無かった。


「なんとかなったな…」


ジェルマンがリザに近寄り瓦礫の中から引っ張りだす。


「あ・り・が・と・う」


お礼を述べながらリザの手に力が入る。


「あいててて!」


「あんた…さりげなく馬鹿力とか言ったわよね?」


岩の中から出てきたリザはジェルマンの手を離そうとはしない。


「…離してくれ」


瓦礫の上でへたり込むジェルマンに追い打ちがかかる。


「あんた、結局何もしなかったわねー」


「いや…だって俺の攻撃じゃ刃は通らないだろ?」


たしかにジェルマンのサーベルでは刃がこぼれるのが落ちであろう。


「女の子達がこんなに身体を張っているのにね…」


周りのメンバーからも非難を浴びている。


階層主の部屋に入るまでは、誰がとどめを刺すだのと血気盛んに盛り上がっていた。


そんなことは過去の話だとばかりに、女性の心は変わりやすかった。


そんな痴話話をしているときであった。


———ガラッ!



ーーーー


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