第四話 検索の加護
「ーーー…♪ー…ーーー…♪……」
母親・父親・姉・僕の4人でテーブルを囲み、みんなでそろって歌っている。
その真ん中にはケーキや、鳥の丸焼き、サラダなど色とりどりの料理が並んでいる。
(これは誰かの誕生日だろうか?異世界でも祝い方は共通か)
歌が終わると、父親に抱えられケーキの前に…
(吹き消せってことなのか?…ということは僕の誕生日か!)
一躍、今日の主役となった僕は赤ちゃんでありながら見事にろうそくの火を吹き消した。
『パチパチパチ!』
3人が満面の笑みで拍手を送ってきた。
(ここで少し子供らしくしてみるか)
綾人も満面の笑みでぎこちなく両手をたたいて拍手のまねごとをしてみる。
(よし!美味しそうな料理だな。お母さんの料理の腕前は…)
目の前に並ぶ美味しそうな異世界料理に心弾ませ、自然と涎が足れる。
(…あっそうだよね。よく考えればそうだよね)
料理に期待していた僕は落胆を隠せないでいる。
(赤ちゃんにこんな鶏肉やケーキは食べさせてくれないよね。)
もちろん離乳食のような柔らかいものだ。
(離乳食…ケーキのろうそくは1本…僕は1歳くらいかなのかな?少し調べてみるか…)
「あうーうう(ステータス)」
ステータスと唱えた綾人はステータス欄の一番下の機能を使うことにした。
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[ 暦 ]検索
綾人が検索事項を念じると検索バーに打ち込まれて行く。
アインスト暦1990年
1月4日 19時28分30秒
1年間=12ヶ月
1ヶ月=30日
1日=24時間
1時間=60分
1分=60秒
(フムフム…思ったよりわかりやすくて、親切だな。僕の誕生日は1月4日なのか?)
表示された検索結果は綾人が思っていたよりも懇切丁寧な表示であった。
[ アインスト ]検索
アインスト=アインスト王国
1608年〜現在1990年
382年続く王国
国土・領民・財力で世界1を誇る
(アインスト王国か…僕もここの生れなのかな?…試してみるか)
[ 現在地 ]検索
ツヴァイン帝国
ファーラン領
アルカナ村
ツェット家
(おー、すばらしい。GPS機能もついているのか!)
表示された内容からすると、先程のアインスト王国では無く、ツヴァイン帝国というところのようだ。
[ ツェット家 ]検索
(さすがに無理かな?同じ名前があった時点でたくさん表示されるだろうし…)
ツェット家
父=ロドフ・クラシキ・ツェット
母=リーナ・クラシキ・ツェット
姉=ユリカ・クラシキ・ツェット
主=アヤト・クラシキ・ツェット
※自動検索で一番身近な項目に絞り込みました
(…うん。凄い優秀だな。僕を主として自我があるみたいだ。)
検索結果により、家族の名前も無事に知ることの出来た。
次に検索するのは…
[ ツヴァイン帝国 ]検索
ツヴァイン帝国
1711年〜現在1990年
279年続く帝国
農耕・畜産で世界一を誇る
魔の森が国土の5分の1を占める
世界一のダンジョンを有する
(あー農耕・畜産とか…検索結果を見ると田舎なのかな?)
読み進めて行くと…先程アインスト王国には無かった項目が出てくる。
(魔の森にダンジョン?…モンスターとか出てくるのかな?やば…異世界楽しそう)
魔の森にダンジョンと、異世界ならでは項目の出現に期待があふれる綾人であったがここで誕生日パーティーが終わりに近づいていていることに気づく。
あんなにたくさんあった料理がものの見事になくなっており、その原因はロドフとユリカだった。2人の前には食べ散らかした痕跡が残されている。
(ロドフはまだしも、ユリカはあの小さな華奢な身体のどこに入っていったんだ)
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