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知識の宝庫〜異世界で上を目指す方法〜  作者: あやた
第2章 学園〜小等部〜
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第三十二話 知識の宝庫

先程までは緊張のあまり、碌に見れていなかった。


その耳は彼女達が喋る度にわずかに動いている。


細くて綺麗な毛がフサフサと風に揺れる。


彼女達の小さなお尻からは、耳よりもしっかりした毛に包まれる尻尾がホットパンツから突き出ている。


耳と尻尾は柔らかそうな毛が密集しているのだが、ちらりと見えるお臍の周りや腕などはつるつるだ。


そんな彼女達に見惚れていると…


「聞いているのかニャ?」


顔を覗き込んでくるリリーに我に返るアヤト。


「あっごめん、何だっけ?」


「まったく!ちゃんと聞いておくニャ!」


語尾に『ニャ』と付いてしまっているのは、気を許した相手の証だそうだ。


(さっき話したのが初めてだけどな…そんなもんなのか?)


「だから、せっかくパーティーを組むならパーティー名を決めるニャ!」


「…なるほど、何か候補はあるの?」


「アルティメ『ストップ!』」


アヤトはリリーの提案するパーティー名に中二病臭を感じ取り、すかさず止めに入る。


「パーティー名はなるべく普通のものにしよう」


理想は両親達のような『4本の弓』だ。


あまり飾らず、4人が一心同体に協力しあっているような姿が想像できる素晴らしいパーティー名だ。


それが…アルティメットなんちゃらでは中二病かバカ丸出しになってしまう。


「アヤトは具体的な案はあるのか?」


「いや…特には思いつかないね」


先程、リリーの中二病ネーミングに待ったをかけたアヤト。


しかし、思いつくパーティー名はどれも中二病臭いものばかり。


「じゃあ、まずこのパーティーは今後何を目指していくのか?」


ジェルマンは煮詰まっているアヤトの頭の中を整理していく。


「今後…?とりあえずお金を稼ぐのが目的だけど」


「じゃあお金をある程度稼げたら…どうする」


アヤトの考えていなかったことだった。


本来であれば、アヤト1人でダンジョンに挑みある程度の金額を稼げれば良かったのだから。


「その後か…考えてなかったな」


「このパーティーなら、結構いいところまで行けると思うぜ」


「そうだな…」


「…ダンジョン探索を純粋に進めて、行けるところまで行ってみるってのはどうかな」


「いいね!階層主なんか倒してみたいね!」


「私は自分の力がどれほどまでのものか試してみたい」


それぞれの思いを伝えてくるメンバー。


概ねダンジョン探索を進めていく方向で意見が固まるメンバー。


「…どうしようか」


「まだ悩んでるのか?」


「なかなか難しいんだよ…」

「じゃあやっぱりアル『リリーは大人しくしててくれ』」


またもや自分の考えたパーティー名も提案してくる。


それを先程よりも早めに止める。


「例えば…ギルドのパーティーなんかは、リーダーの加護をパーティー名にするところもあるぞ」


「加護か…」


アヤトの加護は、武術・魔術の加護、検索、闇光、魔眼の加護だ。


(闇光と魔眼はどう考えても中二病にしかならないよな…)


頭の中で中二病ワードばかりがアヤトの頭に浮かぶ。


(武術と魔術はありきたり感があるし…検索の加護をどうにか…)


少し考え込むアヤト。


「…知識の宝庫ってのはどうかな?」


検索の加護から導きだしたのは、豊富な知識量。


異世界の知識から、前世の知識まで…おそらくこの世界でここまでの知識を掴んでいるのはアヤトくらいであろう。


「へぇ…変わったネーミングだな」


「そうかな?どこらへんが?」


「そうだね…だいたいのパーティー名には戦闘に関係するような言葉が用いられることが多いんだよ」


ルナが尻尾を振りながら説明してくれる。


「例えばご両親であれば『弓』、多く用いられるのは『炎』『風』『騎士』とかみたいにね」


「確かに!そういうのって多いよね!」


「アヤトの考えたものは、あまり強くなさそうだな」


メンバーからの予想外の批判に合う『知識の宝庫』というパーティー名。


「アヤトにも考えがあるんだろ?」


すかさずフォローをしてくれるジェルマン。


「ああ…ダンジョン攻略には強さだけでなく、様々な知識が必要になるだろ?」


「知識の宝庫ってのは、ダンジョン攻略に必要不可欠な知識を積み重ねていくって言う意味」


「なるほどな…」


頷いてくれるジェルマン。


「他にも個人的な思想なんだけど…ダンジョン攻略以外でもいろんな功績を残していこうかと考えてるんだ」


「それで総合的に考えると『知識』ってのが1番、僕の考えに近いのかなって」


「俺はアヤトの意見で納得だ。パーティー名もそれでいいと思う」


賛成票が1票入った。


「私もアヤトの考えを聞いて納得させてもらった」


これで賛成票が2票。


「知識の宝庫…意味を知ると素敵ですね」


お世辞のような褒め言葉を貰えてこれで3票目。


あとはリリーの1票だが…


「私はアル『よしパーティー名は決まったな』」


今度はジェルマンがリリーを制してくれた。


「じゃあパーティー名は『知識の宝庫』で先生に探索許可と一緒に提出し直してくるね」


アヤトが申請用紙を書き直していると、横から声がかかる。


「ア・ヤ・ト…何してるの?」


アヤトの身体が一瞬硬直する。


声のした方を振り向くと…そこにはサーラの顔があった。


「いや…これはその…」


楽しそうなことからのけ者にされていた気分のサーラ。


「まさか私抜きで、その紙提出するつもりじゃないわよね?」


「ははは…まさかそんな…サーラの名前はもちろん書いてあるさ!」


声をかけられた瞬間にサーラの名前を書き加えた。


「ふーん。本当に書いてあるのね…じゃあ特別に許して上げる」


危うく死にかけるところだったアヤト。


「…アヤト相談がある。リザの名前も入れといてやってくれ」


耳元に小声で相談をしてくるジェルマン。


(うん。わかったよ)


無言で頷くアヤト。


リザの名前も書き終えるとその時だった。


「あれ?何してるの?」


声をかけてきたのはリザであった。


ジェルマンの咄嗟の判断で命を救われた。


(ふぅ…ダンジョンに行く前から命がけだな)



ーーーー


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