第二十二話 金髪縦ロール
「なぜ、私がクラス代表では無いのかしら?」
入学式が終わり、生徒が各クラスに割り振られた。
問題が起きているのはアヤトの在籍しているSクラスだ。
「クラス代表にはそのクラスで最も成績の良い方がなるというのが決まりです」
「納得いきませんわ!そんな平民風情、新入生代表挨拶も何かの手違いですわ!」
Sクラス教員『エマ』に噛み付いているのは金髪縦ロールの貴族風のお嬢様だ。
「ブラビア様の意見がごもっともです」
金髪縦ロールに賛同するのは騎士風の女の子だ。
「学園には貴族も平民も関係ありません。実力が全てです」
エマがなんとか2人の説得を試みる。
「それであるなら、なおさらブラビア様が相応しいではないか!」
「そうよ、そんな平民風情に私の実力が劣るとでも?」
どうやらこの金髪縦ロールは『ブラビア』というらしい。
「だから、実力で劣っているからダメです」
「あら、私の聞き間違いかしら。私の実力が平民に劣っていると」
(あー早速面倒な展開だな…)
「あの…僕なら別に代表とかやりたくはないし譲っても…」
「譲るですって?聞き捨てなら無いわね!」
「お嬢様の方が下だとでも言うのですか?」
凄い剣幕で睨みつけてくる2人。
「アヤト大変ね」
隣の席ではこのやり取りをニヤニヤした顔で眺めるサーラ。
(こいつ…楽しんでやがるな)
「いいわ!私の実力を平民に思い知らせてあげますわ」
「決闘よ!」
(なに!どうしてそうなる…)
「アヤト君…面倒だし、思い知らせてあげて」
「え?先生…止めてくださいよ」
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「いつでもいいですよ」
2人の男女が大きな闘技場の中心で向かい合っている。
「なっ…私を嘗めているのかしら?」
「いや、レディーファーストってことで」
教室で宣戦布告をしてきた『ブラビア・インゴル・シュタット』
公爵家の長女で、金髪縦ロールが特徴的なクラスメイトだ。
そんな彼女に決闘を申し込まれ、向き合っているのだが、一向に攻撃してこない。
「私が平民風情に…思い知りなさい!」
「おっ…ようやくかな?」
「一撃で決着をつけてあげるわ!」
そう言うとブラビアは手にもっていた杖を掲げる。
「アイスニードル!」
呪文を唱えたブラビアの杖からは、目に見える冷気が地面に伝わって来る。
氷の槍が地面からいくつも出現し、アヤトに迫ってくる。
「焰刀!」
アヤトが虎徹を抜刀し、炎のフレイムを流し込む。
たちまち刀身から炎が現れ、迫り来るアイスニードルに向かって振るう。
すると、氷の槍は蒸発して気体へと戻ってしまった。
「えっ…よくも私の攻撃を防いだわね」
「いや…防ぐに決まってるでしょ」
この決闘場は特殊な魔法で覆われている。
なんでも、大きな怪我をしてもリングを降りるとたちまち傷が治ってしまうそうだ。
そうはいっても防げる者は防ぐのが当たり前である。
「じゃあ次は僕からいくね、気をつけてね」
「いつでも来なさい!あんたの攻撃なんか防ぐ必要もないわ」
「紫電!」
虎徹に流れる魔力が、雷のフレイムに変わる。
雷を纏った刀身を地面に突き刺すと、稲妻が地面を走る。
「きゃっ!っ…」
ブラビアがアヤトの攻撃を避けようとしたが既に遅かった。
アヤトが流した電撃がブラビアの周りを取り囲んでいた。
「これで逃げ場はありませんよ」
あっという間の決着だった。
「ブラビアさんの得意魔法は水系統みたいですし、僕とは相性が悪いですよ」
アヤトがそう思ったのはブラビアの杖にあった。
それは「氷帝のロッド」と呼ばれるAランクの水系統の魔法を支援する武器だった。
「降参してくれますか?」
「馬鹿じゃないの?私が負けるはずなんて無いわ!あなたが負けを認めなさい」
「すごいな…この状況でまだ負けを認めないなんて」
誰の目からもアヤトの勝利は揺るがない。
「そこまで!アヤト君の勝ちですね」
ようやくエマが両者の間に割って入る。
「これで、アヤト君がクラス代表ということで問題ありませんね」
「まだ負けていませんわ!」
「はぁ…何をそんなにこだわるか解りませんが、ブラビアさん!」
「何よ!早く負けを認めなさい」
「今回は僕の勝ちです…ちなみにあなたは僕以前に『サーラ』にも負けますよ」
観客席でニヤニヤ事の次第を楽しんでいたサーラに仕返しをしてやった。
「な!私まで巻き込まないでよ!」
「お前が止めもしないで、楽しんでるからだろ?」
「まぁ、楽しませてもらったけどさ」
「…聞き捨てなりませんわ。サーラさんよりも劣っていると?」
安い挑発に簡単に乗ってきた。
「あなたには負けませんよ!」
(おっ僕から話が脱線してきたぞ)
「いいわ、次いでだからあなたも相手をして差し上げますわ」
(なんだかその言い方だと、僕に勝ったみたいだな)
「やってみなさい!あんたなんかじゃ私の相手にならないことを思い知らせてあげる」
(やれ!やれ!)
思惑通りに事が進み、話は脱線し既にアヤトは蚊帳の外だ。
「私はアヤトみたいに優しくないわよ!その身体に叩き込んでやる」
「それはこっちの台詞よ!穴だらけにして差し上げますわ」
ゴングを待たずに両者の戦いが始まった。
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