第二十話 中二病
「ステータスオープン」
「…………………」
部屋に集まる大人達3人は固まっていた。
時間の流れには逆らえず、ギルドカード更新の時が来てしまった。
(…まぁ、そうなるよね)
白いギルドカードの金色の文字は異様な加護を表していた。
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Name:アヤト・クラシキ・ツェット
Level:7
Job:ー
HP:2310(2310)
MP:4680(4680)
ST:1010(1010)
IR:刀『虎徹』Aランク
筋力:460
物理攻撃力:375
物理防御力:350
魔力:840
魔法攻撃力:1040
魔法防御力:640
敏捷:440
運:130
スキル:黒魔術師Ⅳ
(炎のフレイムⅢ、水のフレイムⅡ、雷のフレイムⅣ、土のフレイムⅡ)
赤魔術師Ⅰ
(スリープ、インビジブル)
白魔術師Ⅰ
(ヒール、バリア)
加護:武術の加護Ⅹ、魔術の加護Ⅹ、検索の加護、闇光の加護、魔眼の加護
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「わぁ…やったぁーいろんな加護が貰えたぁ!」
(…やばい、わざとらし過ぎたかな?…ん???)
棒読みの演技をしていると見覚えの無い加護がステータスに表記されている。
(闇光の加護?魔眼の加護…やばい中二病が発生した)
自身は中二病では無いと思っていたアヤト。
この加護が露見したことで恥ずかしさを隠しきれず動揺する。
「まさか…ここまでの加護を授かるとは、俺の子でも出来過ぎだろ」
「ほんとね、この加護ならどれか1つでも…」
「ここまでの子供はいくら遡っても前例は無いだろう…」
(まぁ…そうなりますよね)
周りの反応と、自分に新たな加護が追加されたことに迅速に対応しようと頭を回転させる。
「日頃の行いが良かったってことですね!」
いくら考えても良い対処など思いつかないアヤトはやけになっていた。
「お前は魔王にでもなるのか?」
ロドフがふざけた質問を真顔でしてくる。
「ま…魔王?そんな者になるわけないじゃないですか!」
すぐさま否定をするアヤトの顔を見つめて安堵の表情を浮かべるロドフ。
「そうだよな!この力を真っ当なことに使っていくんだぞ!」
しっかりと瞳を合わせてくるロドフは真剣な表情に戻っていた。
(…そうか。いっそのこと世界征服も出来るのか?)
危険な思想が頭をよぎるアヤトだったが、今のアヤトでは世界どころか、目の前の両親に瞬殺されるだろう。
「アヤト…よく聞きなさい」
今まで黙り込んでいたリーナが口を開く。
「ここまでの強力な加護は魔族レベルなの」
「え?魔族もアートラス様から加護を貰えるの?」
(魔族が神を信仰するとか変な話だな)
「いいえ、魔族の信仰する神様はまた別みたいなの」
「魔族の信仰している神は未だに明かされておらぬ存在なのじゃ」
「その神の加護は、アートラス神よりも数段強い加護を授けてくれると噂されておる」
「その加護のおかげで、絶対数の少ない魔族が危険視されているの」
「なるほど…でも僕は人族で、アートラス様の神殿で祝福を受けたんですよ?」
「それは私も保証しよう」
「そうよね…」
またしも沈黙の重い空気が流れていく。
「まっ!考えても何も変わらないだろ!俺たちの息子は強かったってことだ」
「パパったら…」
(ナイスだロドフ!)
「しかし、見たことの無い加護が2つもあるとは…これまた未知数ですな」
「どれがその加護なの?」
てっきり検索と闇光と魔眼の3つと思い込んでいたアヤトは慎重になる。
「これと、これじゃの」
ホージ司祭が指をさしている加護は「検索の加護」「魔眼の加護」
「なるほど……ん?」
ここでアヤトはギルドカードに記載されたステータスに違和感を覚えた。
「どうしたのアヤト?」
「いや…(なんだろう、いつもと何か違うような)」
その違和感の正体に気がつくのは、ギルドカードの下の方を見た時であった。
「あ!(検索の加護による検索窓が記載されていない!)」
今までステータスの一番下には、解らないことがあったら頼っていた検索窓が……無くなっているのだ。
(なに!どういうことだ?加護はそのまま残っているのに…)
「どうした?アヤト?」
考え込むアヤトを心配して声がかかる。
「あ…いやなんでもないよ。検索と魔眼ってなんだろうね、それと闇光ってのも」
「最初の2つは想像もつかないが、闇光の加護ってのは前例がありますぞ」
「珍しいけど、俺も知り合いに居るな」
「闇光の加護というのは、黒魔術師の加護を持っている方に授けられることが多いみたいですよ」
「能力的には、闇と光のフレイムが使えると言われておる」
「だけど、あんまり使えるもんじゃないぞ」
ホージ司祭とロドフが説明してくれる。
「目くらましや、暗いところの明かり程度の魔術らしいぞ」
「そっかぁ…」
中二病的な名前からその威力を期待したアヤトは肩を落とす。
「そんなに落ち込まなくても他の加護がすごいんだから」
リーナが優しく慰めてくれる。
「しかし、これほどの加護をお持ちと世間に知られると無用な騒ぎとなりそうですな」
「そうね…あまり周りに言いふらし過ぎるのはやめた方がいいわね」
「わかりました。極力内緒にしていきます」
「まぁ、身内や信用できる奴らならかまわないだろう。長く一緒に居たりすれば気づかれるだろうしな」
その後、検索と魔眼の加護について推察された。
しかし、その真相はアヤトだけが知り得ることになる。
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[ 魔眼の加護 ]検索
赤い眼を持つ者が稀に授かる加護。
その瞳に竜を封印することが可能となる。
封印された竜の属性によって性質が異なる。
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(良かった…検索窓無くなってなかったんだな)
失ってしまったかと思ったスキル。
神殿から宿に戻る際に、歩きながら「ステータス」と唱えると、そこにはきちんと検索窓が残っていた。
ギルドカードに記載されていなっかった。
そのおかげで余計な騒ぎにはならずに済んだ。
「まぁ、十分騒ぎにはなったけどな」
「しかしこれは…中二病の憧れスキルじゃないか」
魔眼のとんでもない説明内容に、右の赤眼に眼帯をかける姿を想像してしまう。
「まだ5歳だし…許されるかも」
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