第二話 加護
「…ん。ここは?」
綾人はゆっくりと身をお越し周りを見渡した。
そこは真っ白な背景に石畳の世界。本当にそれ以外全く何もない世界。
「やっと目覚めおったか」
どこからともなく透き通った声が聞こえた。男とも女とも言えないような声。
「誰だ?」
見回しても誰もいない空間。綾人だけだ。
「ここだ」
それは綾人の影から出てきた黒い人影の物体。
「…なんだ夢か」
夢と認識できる夢。しかもなんともつまらなさそうな夢。
「夢とは何だ、ここは私の統べる空間だ」
黒い人影は単調にさらに続ける。
「お前は余計なことをしてくれたな。無駄に死におって、私の計画が狂ってしまったではないか。さてどうしたものか」
黒い人影は綾人の顔をその手で覆いかぶそうとしてくる。
「な、なんだ?いったいなんだよ?は?これなんの夢だよ?」
その黒い手に恐怖を覚えた綾人は、必死に後ろへ逃げる。
「何だ覚えていないのか?お前は事故により命を失い、冥府への途中、私が拾ってきたのだぞ?感謝しろ」
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「あ…そうか僕は奈々と風香を守る為にトラックにはじき飛ばされたんだ…てことは死んだのか?」
綾人はブツブツと記憶を遡り、自分の身体を確かめている。
「だから先程からそのように言っているだろうが。余計なことをして死んだんだ」
(余計なこと?)
「お前が余計なことをしたおかげで死人が出たんだ。何もせずに居れば、かすり傷で済んだものを」
(ん?それじゃまるで無駄死にか?嘘だろ?奈々と風香は?)
「時間が無い、これからお前に選択肢を与える。選ぶが良い」
捲し立てるように人影が綾人に選択肢を告げる。
「え?ま、待ってくれ!奈々と風香は大丈夫だったのか?」
慌てて自分の死が無駄ではなかったか確かめる綾人。
「お前は即死だったようだが、その二人については知らん」
(奈々…風香…無事で居てくれ)
綾人は願うように目頭を押さえて願っていると、人影はさらに話しを続ける。
「時間がない。まず、冥府に戻ることは許されぬ。ここで私に存在を消されるか、お前が生きていた世界とは別の世界にて転生するか。私の勧めは後者だが」
(ん?これは異世界へ転生しか選択は無いようなもんだろ)
綾人は混乱しつつ答える。
「い、異世界へ転生!異世界でお願いします。」
迫りくる黒い人影に急いで返答すると、
「よし、わかった。後は転生にあたり加護を3つ与えよう。10秒で考えろ」
(エ?エ?加護?これはスキル的なものなのか?でもなんでもいいのか?)
「…8…7…6」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
「…5…4…3…」
(おわ、やばい、なんのスキルだ?やっぱり魔法?…魔法はあるのか?)
「2…1…0、答えろ。どんなスキルが良い」
「え、えーと魔法とぶ、武術?」
強いイメージに奈々が浮かびあがった綾人は、とっさに武術と答える。
「魔法と武術の2つで良いのか?」
「いや、待ってくれ…」
「時間がない、魔法と武術の加護を与えよう」
「あ、あ、け、検索」
「…」
(あ、そんな加護は無いか)
「…しょうがない、検索の加護だな、使い方のイメージはお前が考えろ」
(お、おー大丈夫なのか)
「では、新たな人生好きに生きるが良い。」
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